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2012-09-12

『踊るダークナイト捜査線 新たなるライジング』

 今さらながら『ダークナイト ライジング』をようやく観て、続けて『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』も観ました。そしたら意外なことに、両者が似ている! 驚きです。
 何が似ているって、内容でなく、出来の悪さが。いや、内容も表層的に似ています。

 『ダークナイト ライジング』は、警察組織に疲弊した者が勝手に奮闘する話で、敵は身勝手な被害妄想で世間を大混乱に陥れてやろうとします。
 『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』も、警察組織に疲弊した者が勝手に奮闘する話で、敵は身勝手な正義感で世間を大混乱に陥れてやろうとします。
 両者に共通しているのが、機能しない組織に対する不満と、意味不明ではた迷惑な義務感です。製作費に凄い差があり、表現方法にも物凄い差がありますが、その要素を作品の良さとして巧く昇華できていない点は同じです。要素だけを取り出せば似ている作品なんて無数にありますが、まさか『ダークナイト ライジング』と『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』が似ていると思わされるとは。両作品とも、予告編から「これは面白くなさそうだなぁ」と思いましたし、出だしから「これは駄目かも……」と思いましたし。

 『ダークナイト ライジング』は、出だしの一瞬は物凄く興奮させられるのですが、スポーンと落ちて行く飛行機が地上に激突する様を映さないので、「ああ、これはそーゆー作品なのね……」と思わされます。『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』も、出だしからふざけていて、まあそれはいつものことだからいいとしても、逃走劇が始まっても躍動感が全くないため、「いつも通りに映画化失敗作のままか」と思わされます。これまた共通しているのが、躍動感のなさ。走ったり跳んだりと運動しているのに、画面に躍動感が全くない。
 たぶん、映画としてのちゃんとしたコンセプトが共にないのではないかと思います。『ダークナイト ライジング』なら、縦の構図といいますか上下の対立姿勢が随所に現れるのに、上昇と下降の運動が全く活きていません。『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』なら、出だしから走っていますし、クライマックスでも走っていますし、バスだって走っていますから、走る運動が物語にも効果的に活きないと意味がないのに、すぐに停滞してしまいます。作っている側はそのようなことを気にしていないのかもしれません。でなければ『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』で佳境に大ズッコケさせたりしません。
 そうそう、「ダークナイト」シリーズは「海猿」シリーズとも似ているな、と思いました。いざって時に何をのんびり話してんだ、って点で。

 両作品とも、面白くなる要素がたくさんあるのに、大好きな作品だけに、とても勿体ない。映画でなく、TVドラマで作っていればとても面白いものになったでしょう。

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2012-09-06

今年の<カナザワ映画祭>は、身が引き締まる

 今年の<カナザワ映画祭>は、もしかしたら今までで最もヤバい映画祭となるような気がします。毎年同じこと思っていますが。

 まず、ポスター。これは間違いなく最もポップです。貼ってあったら即剥がしてお持ち帰りされそうな出来。フージコちゃ~ん、の威力は大きいです。実際、毎年貼られていた場所に貼られていません。単に肌色率が高いから貼ろうにも貼れないだけかもしれませんが。いや、でも、今年はポスターを欲しがる方大勢いるでしょう。
 次に、爆音。何といっても、「SEX爆音」です。何だそりゃ。「SEX爆音」と聴いて即座に「ああ、あれね」とか思い浮かべられる方はいないでしょう。往年の東和魂をビシビシと感じさせます。簡単に考えて、喘ぎ声が爆音で聞けるわけですよね。古い作品の多い映画祭ですから、たぶん高音域がキンキンして聞こえるのではないかと思います。そうだとすると、「SEX爆音」は言葉から受ける甘美なイメージに反し、攻撃的なものになっているでしょう。毎年そうですけど。
 最後に、作品の選定。相変わらず絶妙だなぁ、と。

 『ショーガール』、『スペースバンパイア』、『にっぽんセックス旅行』、『瓶詰め地獄』なんかは、いかにも<カナザワ映画祭>、という感じでほのぼのとしますが、そこに『』、『ルパン三世 死の翼アルバトロス』、『地下幻燈劇画・少女椿』が加わると、観客の予想を超えることが宿命となった<カナザワ映画祭>であることが想起され、身が引き締まります。

 個人的に要注目は、『河』です。ツァイ・ミンリャン監督の名を一躍有名にし、台湾映画の名をさらに広めた傑作。
 台湾映画といえば近年では、エドワード・ヤン監督、ホウ・シャオシェン監督、アン・リー監督が即座に想起されます。それぞれが独特の作品世界を持ちますが(アン・リー監督は最も普通ですけど)、ツァイ・ミンリャン監督はその中でも一風変わった作風です。『ふたつの時、ふたりの時間』のような固定画面の長回し演出を見ると、下手すると「アート系志向の監督」と見下される可能性がありますが、何か日本のAVが好きなのか、AVをコピーしている業者の場面があったり、やたらとリズム感の悪いミュージカル場面があったり、凄くポップな作品を作る監督でもあります。
 『河』は、安部公房さんの作品のようです。幻想的であり、現実感があり。見終えて、何かわけわからんかったけど凄いものを観た、という気にさせます。次作の『Hole』は、『河』のミニマルさと真逆のにぎやかさで、しかし水が作品全体を重く包んでいる点は『河』と同じです。私は『Hole』をSF映画だと思っています。ハッピーエンドといえますし、とても愛すべき作品です。
 爆音上映するなら『Hole』か『西瓜』がポップであるため最適だと思うのですが、ミニマルかつノイズな『河』を選定する<カナザワ映画祭>は凄いとしか言い様がありません。実際に観てみるまでわかりませんが、必見であることは間違いありません。

 あと、個人的な希望として、いつか<カナザワ映画祭>でエドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』を上映してもらえないものですかね。随分前に衛星放送で放送されたものを録画したVHSを持ってはいるのですが、ビデオデッキが何年も前に壊れたので観られません。あれだけの傑作が未だにDVDにもBlu-Rayにもならないのは不思議でなりません。権利問題でもあるのでしょうか?

 なかなか観られない作品として、最終日に用意された『地下幻燈劇画・少女椿』も凄そうです。映像だけなら実はYouTubeでも一部観られますが、謎の「特別仕掛け上映」とな。同日には『ルパン三世 死の翼アルバトロス』が無料上映されますし、これは県外客も帰るに帰れません。対策でしょうか?
 最終日は、行列を覚悟しなければなりませんね。大変です。

 大変といえば、お金がありません。
 先月は、<FREEDOMMUNE>と<WIRE>があり、旅費にチケット代にと出費が多く、かつレコードだCDだ本だ新作映画鑑賞だと出費が多く、今現在、<カナザワ映画祭>のチケットを1枚も買えていません。サポーター賛同金なんて夢のような金額です。
 支払いにクレジットカードが使えればすぐにでも買えるのですが、使えないようなので、給料が入り次第、速攻でチケットを買い(2万円はかかる……)、サポーター賛同金を受け取っていただきたく思います。節約しなければ……

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tag : カナザワ映画祭

2012-07-25

エロす!

 今月号の『映画秘宝』を観ましたら、今年の<カナザワ映画祭>の最新情報が載っていました。今年のテーマがエロだとは知っていましたが……本気でエロだったのですねぇ……

 何よりも驚いたのは、あのポール・ヴァーホーヴェン監督の不屈の名作『ショー・ガール』が野外上映だったこと! あれを、野外で!? 何という誕生日プレゼントでございましょうか(野外上映日が私の誕生日)。いまからハアハアしてしまいます。
 それにしても、どうせならヴァーホーヴェン特集なんてしてもらえたら良かったなぁ、なんて思ったりもしました。『氷の微笑』は候補になかったのでしょうか。『ブラックブック』も広義にエロでしょうし、『インビジブル』も男子エロ妄想炸裂映画ですし。ホントに欲望に忠実な監督です。

 爆音上映作品で驚いたのは、『スペースバンパイア』です。なるほどぉ~、と深く納得してしまいました。浅いようで深い<カナザワ映画祭>です。
 しかし、『バタリアン』が爆音上映なのは、何ででしょうか? ダン・オバノンさん繋がり?
 個人的なわがままとしては、『ZOMBIO/死霊のしたたり』を爆音上映してもらえたら嬉しかったなぁ、と。エロ要素もちゃんとありますし、<カナザワ映画祭>向けですし。ジャン・ローラン監督の名作『猟奇殺人の夜』とかも良いのに。ファンが少なそうですけど、あれ名作ですよね!
 それにしても、爆音上映とエロの相性が良いのか悪いのか、全く想像つきません。今年のテーマがエロと聞いて少し興味が薄れた感はあったのですが、ラインナップを眺めていると、ムクムクと興味が湧いてきましたね。さすがエロ。ムクムクです。客数が今までに比べて増えるのか減るのか、とても興味あります。

 上映館である元ロキシーは、昔からの金沢市民ならとてもお世話になった映画館でした。
 が、エロという点でなら、ロキシーよりも先に潰れてしまった、ロキシー横の文化劇場でしょうか。エロやエロ、時折ホラーという映画館だったと記憶しています(健在の頃、私は子供だったので曖昧)。確か、『人喰族』と『人間解剖島/ドクター・ブッチャー』を二本立てで観ました。男子小学生の私にとって夢のような映画館でしたね。そのくせ『ショート・サーキット』なんかも普通に上映してましたし。あれは何の同時上映でしたか……ま、金沢市民以外には全く意味不明のことです。ただただ懐かしいなぁ、と。
 それにしても、ロキシー跡はホールとして場所が残っていたのですねぇ。知りませんでした。エロをテーマに上映会をするには、上映場所の確保に苦労したのでしょう……その上、爆音上映ですから。駅前シネマは……無理でしょうし。

 何にしろ楽しみです。かなざわ映画の会の皆様、頑張って下さい。

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tag : カナザワ映画祭

2012-07-16

特に主張なし

 気付いたら、1つは公開終了しており、1つは北陸では今のところ公開予定なしでした。で、ふとネットで検索したら、ポスターデザインがそっくりで驚きました。『ストライクウィッチーズ劇場版』と、『ネイビー・シールズ』のことです。
 これと↓
strikewichis
 これです↓
navy
 似てますが、似ているデザインは他にもありますから偶然に違いありません。空に、シルエット。映えますからね。パッと想起できるものでは、『プライベート・ライアン』と『父親たちの星条旗』ですかね。
 これと↓
privat
 これです↓
iwojima
 似てます。スティーヴン・スピルバーグ監督作品と、製作作品です。ついでに『硫黄島からの手紙』も当然のように似ています。
lettersfromiwojima
 何となくロマン主義っぽい感じがします。みんな尊厳をかけた戦いの物語だったりしますし、ぴったりなデザインです。空に、シルエット。主張するけど、何も主張しない。個人が個人のために主張しませんが、みんながみんなのために主張します。空とシルエットのデザインには、尊厳のための幸福と、尊厳のための不幸が同居しています。見ているだけで涙腺を刺激するものがあります。

 ところで、スピルバーグ監督作品にはシルエットを使うデザインがよくありますね。
『E.T.』
et
『カラー・パープル』
colorpurple
『太陽の帝国』
empiresun
『オールウェイズ』
always
『A.I.』
ai
 スピルバーグ監督の演出をよく表現していると思います。

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2012-06-18

『幸せへのキセキ』(Erasure Remix)があったら幸せに心が爆発するかも

 『幸せへのキセキ』を観ましたら、開始直後に驚いてしまって、思わず「えっ!?」と声を上げてしまい、周囲の他の観客をも驚かせてしまいました。というのも音楽担当がヨンシーさんだったからです。

 ヨンシーさんの『Go』が超大好きな私は、「Go Do」が使われている予告編からもう楽しくて楽しくて、キャメロン・クロウ監督の作品である以上、音楽にこだわっていることはわかっていましたが、「Go Do」はどうせ予告編に流れているだけで本編には全く使われないに決まっていると思っていたので(そーゆー予告編が多いから)、まさか音楽担当がヨンシーさんであるとは全く想像もしておらず、「音楽担当ヨンシー」のクレジットを見た瞬間、「えっ!?」と声を上げてしまったのです。
 ヨンシーさんの映画音楽といえば、『ヒックとドラゴン』の「Sticks and Stones」です。聴くだけで――いや、想い出すだけで空を飛べそうになる作品は、映画音楽と相性が抜群に良いのはわかっていますが、いやまさか音楽担当そのものを担うとは。嬉しい、本当に嬉しい驚きです。

 ヨンシーさん以外にもトム・ペティさんやボブ・ディランさん、ウィルコとかとか、クロウ監督らしい選曲で場面を盛り上げます。中でも最高なのは、やはりまあ、当然の如く「Go Do」なのです。飛翔感を感じる曲に、前へ前へと突き進もうとする詩に後押しされ、とにかくボロ泣き。自然光を煌びやかに使った場面に「Go Do」は反則ですよぉ。作品の邦題ではありませんが、本当に幸せな気分になる作品でした。
 あまりにもヨンシーさんが良かったので、再び――今回は吹き替え版で観たので――字幕版で観たいと思います。

 ところで、『幸せへのキセキ』の音楽担当を七尾旅人さんにしても面白いものができるのではないか、と想像しました。ヨンシーさんに負けませんよ。
 私のご贔屓である、イレイジャーも良いのでは。私のオールタイムベストなアルバム『I Say I Say I Say』にも収録されている「Always」や「Run To The Sun」、後半の盛り上がりに涙が溢れるアルバム『Nightbird』から「I'll Be There」、「Because Our Lovese Is Real」、「Don't Say You Love Me」、「Sweet Surrender」などを使って――というか、全曲書き下ろしで超ポップな映画に仕立ててほしいです(あ、昨年の『Tomorrow's World』ももちろん好き)。音楽をイレイジャーにした、『幸せへのキセキ』(Erasure Remix)を作ってもらえたらどれだけ幸せになれるか――私を幸せで殺す気か思うくらいです。と夢想している今、その夢想だけで感動して泣けてきました。

 最近で他にも幸せな気分になれた映画は、『ファミリー・ツリー』ですね。これまた音楽がとても良く、作品全体を包むハワイアンのゆったりとした優しい響きがとても心地良い、全身に感動が染み込む作品でした。「家族の再生」というありきたりな物語をハワイを舞台にしてハワイアンで彩る、その発想が見事。
 『幸せへのキセキ』も『ファミリー・ツリー』も、最後の場面に全てが集約されるように作ってあります。「この最後の場面を撮る」ために全編がある、そういっても過言でないと思います。

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2012-06-05

カナザワ映画祭、今年も開催で良かった

 何となく覗いたら、かなざわ映画の会の公式サイトが更新されていました。

かなざわ映画の会→カナザワ映画祭2012

 <カナザワ映画祭>は、今年もいつも通りシルバーウィークに開催です。4月頃からカナザワ映画祭用に9月の休暇指定は取ってあるので、どんと来いです。
 今年の私の大イベントは、<METAMORPHOSE>→<WIRE>→<カナザワ映画祭>という予定。<METAMORPHOSE>は先月に終了していますから、残りは<WIRE>と<カナザワ映画祭>です。
 しかも今年の<カナザワ映画祭>の初日――野外上映の日は、私の誕生日! どんな作品を見せていただけるのか、もう誕生日プレゼントな感じで楽しすぎます。愕然とするような作品が上映されるといいですね!

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2012-04-19

人生を幸福にする映画?

 『ファイナル・ジャッジメント』!
 

 この世界が「自由」を取り戻すために、この命を捧げたいと思った。
 ぼくらは戦う、心のチカラで。
 ファイナル・ジャッジメント
 がんばれ! ふくしま!


 来ました! 幸福の科学映画! 
 本日、劇場で、幸福の科学映画の最新作のチラシを劇場で見つけました。幸福の科学映画のファンである私としては、喜んでチラシを持ち帰り、公式サイトで予告編を見、既に期待満々となりました。『ノストラダムス 戦慄の啓示』以来の久しぶりの実写! 幸福の科学の本気を感じます! ますがぁ、予告編を観る限りでは……押井守監督の実写映画みたいな感じです。

 「幸福の科学の信者」でなく、「幸福の科学映画のファン」である私は、幸福の科学映画は偉大なる幸福映画であると断言します。描かれている物事や思想を他人事と爆笑できてしまえば幸せな気持ちになれる映画――正に「幸福の映画」です。大きなスクリーンで、他の観客全てが信者なのかと疑心暗鬼になりながら幸福の科学映画を観るという体験は、自宅などで一人で鑑賞するのとはかけ離れた楽しさがあります。だって、下手すると怒られてしまのですよ(内容に笑って信者な観客に怒られた経験あり)!
 チラシに「がんばれ! ふくしま!」と記載されているのは、いわき市で3ヶ月間に及ぶロケ撮影をしたからだそうです。あれですかね……日本が戦場となった場面を撮るには今の東北は最適だった、とかでしょうか? とりあえず、園子温監督の『ヒミズ』よりマシな画面になっていると良いのですが。
 いやぁ、本当に楽しみ! もしかしたら他のどんな作品よりも楽しみかもしれません。

 そして何と秋頃にはアニメ映画『神秘の法』とやらも公開するそうではありませんか! 1年間に2本も! 何か意気込みを感じます。全国で映画を公開し、幸福の科学の思想を広げ、本格的に政治参加を考えているのでしょうか。

 ワクワクしてきたので、もう4月ですけど……今ようやく新年を迎えた気がしました。あけましておめでとうございます!

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2012-03-11

いい日が続けばいい

 いつも選り好みして映画を観ているとはいえ、連発でハズレなしの状態が続くのは珍しいものです。が、こないだから今のところ、連続して面白いものばかり観ています。

 『ロボジー』
 『ペントハウス』
 『顔のないスパイ』
 『リミットレス』
 『POV ~呪われたフィルム~』
 『TIME』
 『ヒミズ』
 『戦火の馬』

 どれも見事な作品ばかりでした。特に凄いなぁ~、と感心したのが、『TIME』と『戦火の馬』。展開の方法がそっくり。キャラクターを動かすために何をしておけば良いか、そんなことを考えてばかりの作りになっていました。
 『TIME』は、細かくツッコミを入れるとボロがたくさん出ますが、それは物語の問題で、映画としては何ら欠点になりません。そしてそれは、宮崎駿監督の関連作品にもいえることです。私だけかもしれませんが、『TIME』を観て、子供の頃に『ルパン三世 カリオストロの城』を観た興奮を思い出しました。
 私は、『ルパン三世 カリオストロの城』で初めて映画的興奮を覚えました。大きなスクリーンに映っているアニメ映画はたくさんあったのに、なぜか宮崎監督作品だけは常に別格に見えました。それはTV画面に移っても同じ。なぜか子供の私は、宮崎監督作品だけ、他のアニメ映画と全く異質な存在に見えたのです。『ルパン三世 カリオストロの城』を観て以降、他のアニメ映画を観て興奮する機会が激減しました。そしてそれは実写映画にも当てはまりました。
 「よくわからないけど、宮崎監督はちゃんと映画を作る術を心得ているんだ」
 それが子供の頃からの私の感想です。「よくわからないけど」という部分は今でもちゃんと解明できてませんが、宮崎監督は物語よりも画面を動かすことを優先している、というのが私の理解の1つです。で、『TIME』も『戦火の馬』もそのような発想で作られていると思うのです。

 『ロボジー』は3回も観に行ったくらい好きな作品ですし、『ペントハウス』と『リミットレス』の終わりのカッコ良さには拍手したくなりましたし、『POV ~呪われたフィルム~』の頑張りには感動しました。
 『POV ~呪われたフィルム~』は凄い! 学校での女性ADの扱いの巧さには感心しました。さり気ない恐怖演出をローテクで行っていて、本当に見事。「さり気ない」という部分が重要で、つまり後で気付かされるような演出なのです。「あれ? そーいやあの場面、何かおかしくね?」と思い出してみれば異常な場面だった……というような演出になっており、そこに鶴田法男監督の本気を見ました。
 ただし、物語というか脚本の中身のなさっぷりも凄いっちゃ凄いのですが……そこは見て見ぬフリ。いや、頑張った! 頑張ってる!!
 話題になってないと思いきや、意外と観客数が多く、その殆どが高校生っぽかったのも良かったです。そう、ホラー映画は若者の文化! キャーキャーいいながらホラー映画を楽しまなきゃ!

 が、その後、『ザ・トーナメント』で失敗して、『王様ゲーム』にはガッカリさせられました……鶴田監督も『王様ゲーム』はどうにもできなかったようで……大変ですねぇ。

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2012-02-27

ヴィンセントを主人公しても良かった

 大好きな筈の『フライトナイト/恐怖の夜』は、はっきりいって失敗作でした。普通に作っていれば普通に楽しい娯楽作品に仕上がったものを、なぜ失敗したのか……今になって気になってきました。

 「怪物もの」は、性衝動の隠喩であったりします。ゆえに昔はデートムービーとして有効でしたが、今では「怪物もの」のデートムービーは『トワイライト』だったりしますので、同路線で売るのは難しい。『トワイライト』シリーズには抑圧された性衝動も何もありません。
 リメイク元の『フライトナイト』には、公開当時は「不真面目」な「殺人鬼もの」が主流だったからこそ、ふざけているようで真剣な「怪物もの」を作る意義や余地がありました。流行が「殺人鬼もの」であればこそ、時代遅れな「怪物もの」は自動的にふざけたものとなり、しかしそこには、真剣な「怪物もの」を叩き込んで驚かせてやろう、というホラー作家の意気込みもありました。
 黙って襲ってくる殺人鬼と違い、怪物は雄弁です。雄弁である以上、それはギャグになります。存在感があればある程、場の雰囲気をぶち壊しにすることもあるからです。雰囲気がちゃんと作られていない場所に雄弁な怪物が登場すると、ギャグにしかなりません。恐怖の正体は不明であればある程、恐い。正体が判明してしまえば、後はどのように対処するか、それだけです。もちろん著名な殺人鬼(ジェイソンやフレディ等)は既に「怪物」であり、様式美もありますから、今ではギャグに使われています(それを巧く使ったのが『スクリーム』シリーズ)。ゾンビが恐怖の対象へと復活させたのは、ザック・スナイダー監督版(というよりはジェームズ・ガン脚本版というべきか)『ドーン・オブ・ザ・デッド』でした。作品の評価は賛否ありますが、重要な作品です。あと『ショーン・オブ・ザ・デッド』の影響力も無視できません。日本の幽霊の恐怖が日本中に蘇るのは『リング』まで待たなければなりませんでした(貞子は幽霊でないし、その後しっかりギャグ対象になったけど)。みんな放っとくとギャグになっていた分野です。
 しかし『~恐怖の夜』は、『フライトナイト』のリメイクなのに、コメディ色が薄くなっています。

 『~恐怖の夜』の吸血鬼は、いわゆる「レッドネック」(日本でいうなら「ドカチン」)です。一流の味わい(処女の生血でなきゃ嫌だ、とか)にこだわるような感じには見えません。雑でアメリカンな感じ。リメイクする際の最大のアイデアはやはり、この「吸血鬼を様式的にしない」という点だったのでしょう。
 お約束の「招かれざる者は入れない」という展開は、「レッドネック」ならではの強引すぎる力技で進行します。「ごちゃごちゃうっせーんだよ!」という頭の悪い感じ。だのにそこがギャグになっていません。少なくとも爆笑へと繋がっていません。「なるほど、その手があったか」という納得になってしまっているからです。『~恐怖の夜』で最も巧い展開でありながら、最も失敗している展開でもあります。
 しかし、吸血鬼を雑な「レッドネック」にしたのは正解だと思います。親友を裏切ってまで得ることができた彼女(学園のアイドル)を身体だけが自慢のバカに横取りされてしまう恐怖、それが『~恐怖の夜』の描く恐怖の1つだからです。主人公が「何の取り得もない普通の男子」になってしまっているのも納得できます。そう考えて『~恐怖の夜』を観れば、とても納得できる作品に仕上がっていると思えます。何の取り得もない普通の男子が抱く抑圧された性衝動(恐怖)が描かれているからです。
 しかし、だとすると、なぜそれで巧く「学園もの」に仕上がっていないのでしょうか。そこにもう1つ当てはまる新たな要素として、ピーター・ヴィンセントの存在があります。『フライトナイト』では落ち目のタレントとして、『~恐怖の夜』ではトラウマ設定のある売れっ子タレントとして異なる描かれ方をされている人物。その差。
 『フライトナイト』のヴィンセントは、いうなれば『ロッキー』のような復活劇の人物です。それをそのまま『~恐怖の夜』に当てはめてしまうと、不具合が生じます。主人公をオタクから退いた設定にしてある以上、ヴィンセントの復活劇はどうでも良いことです。主人公が普通である以上、ヴィンセントに与えられるのはトラウマでなければなりません。それもまた抑圧された衝動的感情だからです。
 『~恐怖の夜』のヴィンセントが抱えるトラウマは、形を変えれば、イジメられた記憶にも似ています。辛い学生生活を卒業し、大人になって、久々に出会ったいじめっ子――それを『~恐怖の夜』のジェリー(吸血鬼)だとすれば、ヴィンセントのトラウマは、一応は「学園もの」の要素を持つ物語にピッタリです。
 『~恐怖の夜』は、そのような「学園もの」にありがちな抑圧された衝動的感情による恐怖、それを隠れたテーマにしているように思います。

 そのような物語を単純な娯楽作品に仕上げるには、物語を強く牽引する要素が必要です。『~恐怖の夜』を強く牽引する要素は何でしょうか? うーん……特に思い付きません。たぶん設定を変更した時点で作品の雰囲気も大きく変える必要があったのだと思います。それなのに間違えて3D作品にしてしまった。アトラクション的な娯楽作品に仕上げることが3D作品には求められます。『~恐怖の夜』にも本来はそのような娯楽要素が求められる筈です。しかし、物語の設定を変更してしまったため、“その方向”に巧く流れませんでした。『~恐怖の夜』の失敗の要因は、3D作品であることにあると思います。
 もう1つ、思い切って主人公をヴィンセントにするくらいの大胆な変更があっても良かったのではないでしょうか。落ち目のヴィンセントが吸血鬼退治によって復活する――それはたとえば『エクソシスト』のように信仰心を試すようなものでもありますから、従ってそれをそのまま描くと真面目な信仰戦争になってしまうので、『フライトナイト』と『~恐怖の夜』の設定を合わせ、マスメディアを利用するような物語にしてみる――って、それは『ラスト・エクソシズム』じゃん。ま、何にしろ、ヴィンセントを主人公にしたリメイクなら、『フライトナイト』からのファンもとても楽しみな作品になったような気がします。でも、たぶんそれだと監督や脚本家の思うところではないのでしょう。
 やるなら、ジョン・ヒューズ監督が「怪物もの」を作ったような、そのような感じの作品を目指すべきでした。

 あとついでに、日本の配給会社は宣伝が下手です。予告編で見せ過ぎ。米国の予告編を見る限り、ギリギリのところでお隣さんが吸血鬼であることが明確になる部分は伏せていますが、日本の予告編では明確になっています。それがサービスだと思っているのでしょうか?

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2012-02-01

そこに絶叫はない

 今年もやって参りました、ホラー映画ファン待望の<絶叫王座決定戦Z-1グランプリ>!

 という書き出しですが、そんなイベントがあることをニュース記事で本日初めて知りました。
MSN japan → 鳥居みゆき、母性目覚めるも夫から説教
 上記リンク先から抜粋。

 お笑い芸人の鳥居みゆきが1月30日、都内で行われた絶叫王座決定戦“Z-1グランプリ2012”の映画マニア芸人応援団記者発表に、「インスタントジョンソン」のすぎ。、「飛石連休」の藤井ペイジ、「エネルギー」の森一弥とともに出席した。
 絶叫王座決定戦“Z-1グランプリ2012”は、ホラー、サスペンス、スリラーなど“絶叫映画”の魅力を伝えることを目的として、DVD、ブルーレイソフトの販売メーカーが共同で実施するキャンペーン。第3回を迎える今回は、「モールス」「トライアングル」「赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター」「インシディアス」「ファイナル・デッドブリッジ」「ザ・ウォード 監禁病棟」「ラスト・エクソシズム」が参加し、ファンの投票によって“最恐の絶叫映画”を決定する。3月19日まで実施。

要するにお笑い芸人を使った宣伝ですね。何でもかんでもお笑い芸人を使うのは安易すぎ。こうしてニュース記事にもなり、私もそれで知ったことから、宣伝効果があるのは間違いないのでしょうが。
 候補となった作品に「絶叫」作品がないのが困ったものです。恐怖映画を多く観ない方々からすれば、候補7作品は「絶叫」した作品なのでしょうか?

 『モーリス』は――じゃなかった、『モールス』は、「絶叫」というより、「切ないホラー・ファンタジー」とでもいうべき作品で、「絶叫」という括りは邪魔なだけでしょう。ま、『ぼくのエリ 200歳の少女』に比べて遥かに出来の悪い作品になってるのでどうでもいいですが。
 あ、でも、『モールス』の音楽は素晴らしかった! 音楽担当のマイケル・ジアッキノさんの最近の仕事にハズレなし! 『SUPER8』の音楽も素晴らしかったです。
 ところで、『ぼくの~』で撮影を担当したホイテ・ヴァン・ホイテマさんは、同作品のトーマス・アルフレッドソン監督と再び組み、ジョン・ル・カレさん原作の『裏切りのサーカス』が新作です。『ぼくの~』の素晴らしい画面は、『裏切りのサーカス』でも健在。予告編を観るだけで大興奮します。

 『トライアングル』、『インシディアス』、『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター』は、「絶叫」というよりは「失笑」という感じだし、『ファイナル・デッドブリッジ』と『ラスト・エクソシズム』は「爆笑」だし、『ザ・ウォード 監禁病棟』は……ジョン・カーペンター監督の素晴らしい作品ですが「絶叫」ではないし。どれも「絶叫」という単純な括りで売るのは「余計なお世話」なだけのような気がします。
 予算もアイデアもかけない安易な宣伝は、作品の「売り」を阻害するだけなので止めていただきたいものです。

 あと、どうでもいいことですが、「Z-1グランプリ」で検索かけると「雑巾がけレース」の「Z-1グランプリ」がトップに表示されます。「雑巾がけレース」の方が「絶叫映画」より上なのですから、「絶叫王座決定戦」は大した宣伝効果がないような。「こんな雑貨があったらいいな」を募集する「Z-1グランプリ」もあり、皆様「○-1グランプリ」という名称を使うの好きですね。

『裏切りのサーカス』予告編1&2


 興奮して鼻血が出そうになりますよ。

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2012-01-19

金沢市民として『黒い家』をオススメしたい

 先月20日に亡くなった森田芳光監督を追悼する動きが石川県内で広がっているそうです。北國新聞にて、「森田監督しのぶ」という記事が掲載されており、そこに書かれていました。レンタル店では特別コーナーが設けられ、映画館では『武士の家計簿』が再上映されるそうです。
 なぜ石川県でそんなに森田監督が評価されるのかというと、『武士の家計簿』というご当地映画を撮ってくれたからにすぎません。はっきりいって全く大したことのない『武士の家計簿』ですが、東京都のお役所には「青少年を健全に育成する上で有益であると認める」と評価されています。毎度のことではありますが、東京都青少年健全育成審議会というのは全く健全ではありませんね。青少年を健全に育成するためにも森田監督のピンク作品もオススメしたいところです。

 金沢市としては、『武士の家計簿』よりも『黒い家』を評価してほしいところです。大竹しのぶさんの「乳吸え~」というギャグ演技が強い印象を残す(というか、それしか残らん)、怪作。これも決して良い作品ではありませんが、町興し映画として考えれば、最強。<百万石祭り>という金沢市最大のイベントを背景に殺人場面が描かれるのですから。「いいね金沢~」という歌が流れるのです。金沢市に喧嘩売ってんのかという演出。あれ見ると金沢市へ観光に行こうとは思えません。逆町興し!
 森田監督を偲ぶ割に『黒い家』には全く言及がないところを見ると、あれはなかったことにしたいのでしょう。なーんか、お行儀の良さが気に入りません。

 それにしても、『武士の家計簿』の再上映は特別料金として千円らしいのですが、高くないでしょうか? 500円でいいでしょうに……『黒い家』も500円で再上映すれば、意外と『武士の家計簿』より集客を望めるかもしれません。今こそ「乳吸え~」を流行語に!

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2011-11-11

<ヒューマン・シネマ・フェスティバル>に関して

 もう3週間近く前のことですが――先の記事で紹介した映画『君を想って海をゆく』と『ジェニンの心』は、イオンが協賛となっている<ヒューマン・シネマ・フェスティバル>にて観ました。
 <ヒューマン・シネマ・フェスティバル>は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が主催となって行われた上映会です。映画を通して少しでも多くの方々に世界の難民問題に関心を抱いてもらいたいから、入場料は無料でした。
 日本では殆ど問題にならない難民問題も、東日本大震災以降、他人事ではなくなったと思います。被災難民というのもありますから。海外の、しかも特殊な歴史を持つ特殊な国の特殊な時期の出来事、と日本では考えがちですが、それは違うのです。確かに日本に世界でいうような「難民」はいません。しかし、「難民」的な存在はいます。非常に困っており、救済を必要としているような方々です。そんな方々に対し、何をして上げられるのか、何を考えれば良いのか、それは他人事ではありません。
 東日本大震災で多くの方々が亡くなりましたが、日本は毎年同じかそれ以上の人数が自殺しています。この事実は恐ろしい。毎年毎年、人知れず大災害が起きているのかと恐くなります。

 『君を想って海をゆく』を観て、韓国の『クロッシング』を想い出しました。北朝鮮の圧政から命がけで逃げ延びようとする貧しい一家――息子1人とその両親の3人家族――の物語です。
 父親は、北朝鮮に妻と息子を残し、脱北する。結核に臥せる妻の薬が北朝鮮では入手できないから、命がけで脱北するしかなかった。何とか脱北し、薬を入手するも、既にその頃、北朝鮮に残された妻は病死。1人残された息子は孤児となるも、父親との再会を目指し、国境を目指すが、力尽きて死んでしまう。
 とても悲惨な物語です。北朝鮮では富裕層でなければ入手できない薬が、国境を越えるとタダで貰える。あの場面の父親の顔。あの無常。それが『クロッシング』を作り上げています。父親が呟く、神様は裕福な国にしかいない、という悲惨な批判。
 『クロッシング』の無常感と、『君を想って海をゆく』の最後のカフェの場面、その後に現れる『Welcome』という原題の無常感は似ています。似ていますが、映画としては『君を想って海をゆく』の方が上だと思います。

 『ジェニンの心』を観て、全く関係のない、『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』でも有名なバンクシーさんを想い出しました。
 パレスチナ人を閉じ込めるための巨大な壁。そこに自由を描いたバンクシーさん。無関心は罪だという怒りの芸術。

 難民問題とは少しズレますが、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『ビューティフル』も想い出しました。移民や不法滞在者の政治社会的な問題、ハビエル・バルデムさん演じる主人公の周りの社会、それらの悲惨さの中にある無常と希望を描く作品。題名からは美しく感動的な印象を受けますが、実際はとても激しい作品です。
 黒澤明監督の『生きる』を題材としているようですが、かけ離れすぎています。主人公の、死期を目前に人助けをしようとして悪化させてしまう様は、滑稽と恐怖がない交ぜになった「因果鉄道な旅」で、壮絶。下手に関心を抱いて下手な手助けをすると超大変、という内容でもあり、間違いなく感動作ですが……一般的な感動作を想像して観ると大ダメージを受けます。

 今の日本は、高齢化社会になり、不況が長引き、じわりじわりと様々な悪影響が現れています。大災害もあり、大事故もあり、それらに伴い日本人の心が弱くなっているかもしれません。世の中が大変な時期だからこそ頑張ることを頑張る余り、無理がたたってストレス障害に陥り、死を選ぶ方もいるでしょう。阪神・淡路大震災の翌年、神戸市助役が焼身自殺を遂げました。海岸で灯油を被り、点火したのです。もっと楽な死に方があったのに、なぜ強烈な苦痛を伴う死に方を選んだのでしょうか。
 今年の9月、<カナザワ映画祭2011>の開催期間中、「午前十時の映画祭」にて『ショーシャンクの空』を久しぶりに観、思わず泣いてしまう場面がありました。今までそこで泣いたことはなかった場面です。刑務所で50年間も凄し、高齢者となったブルックスが仮釈放されるのですが、“外”に居場所はなく、自殺してしまう場面。自分はここにいた、と人知れずささやかな反抗をして。
 難民の問題の1つは、世界からの無関心と可能性のなさです。そこに一石を投じようとする<ヒューマン・シネマ・フェスティバル>は、素晴らしい試みだと思います。

 今回、<ヒューマン・シネマ・フェスティバル>で上映された作品は、『ジェニンの心』、『君を想って海をゆく』、『ウォー・チャイルド』、『ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動』の4本。この4本が全て観られるわけでなく、なぜか上映地域毎に2本しか観られません。イオンシネマ金沢店では、『ジェニンの心』と『君を想って海をゆく』。
 21(金)、22(土)日の2日間に渡って開催される中、私は21日に観ました。2作品とも上映前に国連UNHCR協会職員による挨拶と作品紹介があり(公式サイトには「質疑応答あり」と記載されていたけど、実際はなかった)、問題意識を高めます。「今回の映画のこと、難民問題のことを色んな人と話し合い、広げて下さい」と仰ってましたので、今こうして文章を作っている次第です(随分と日にちが経ってる上に横道に逸れた内容だけど)。
 楽しみながら政治社会問題も考えられる機会をタダで提供する、そんなイベントはもっと続けてほしいと思います。入場料金はタダでしたが、会場前に募金箱があったので、2千円入れました(いつも千円で映画を観てるから、1作品千円として)。
 たーだーし、素直に「素晴らしい上映会だった」とは絶賛できません。
 まず、190人も入る会場に、観客はパッと見20人未満。観たのが平日だったからかもしれませんが、少な過ぎ! 公式サイトでは「当日劇場窓口受付先着25名様にポストカードをプレゼント」と記載ありますが(今知った)、貰えませんでした(いらないけど)。観客は25人もいなかったと思うんですよねぇ。『君を想って海をゆく』は観客が30人近くはいたかもしれませんが、『ジェニンの心』は「十人は超えていたかも?」という程度。
 予算が少ないのか知りませんが、もっと宣伝しないと! 上映会当日は劇場のロビーに大きなポップが設置されていましたが、以前にはありませんでした。1ヶ月以上前から設置してあればもっと観客が増えたのでは? せっかく問題提起しても少人数しか視聴しなけりゃ意味ないです。翌日の土曜日はもっと人数が増えていたと思いますが、それでも会場の半分も埋まらなかったのではないかと……
 あと、上映がDVD上映だったようで、画質が悪かったです。しかもスクリーンサイズが合ってなく、大きなスクリーンの真ん中に一回りは小さな画面が映ってまして、とても違和感がありました。『ジェニンの心』は簡単に観られないでしょうが、『君を想って海をゆく』はレンタルで簡単に安く観られるわけですから、「劇場で観る良さ」をもっと味わえるようにするべきだったと思います。イオンシネマ金沢店だけのことなのかもしれませんが。
 4作品のうち2作品しか観られないのも意味がわかりません。
 作品は良かっただけに、もったいないな、と思いました。また上映会を行うようなことを仰っておりましたので、次回は上記問題点を改善してもらいたいです。関係者の皆様、ありがとうございました。

テーマ : 映画祭
ジャンル : 映画

2011-10-04

<カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>が終わって

 <カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>が終わって、のんびりと感想文を作っていたら、もう10月です。半袖では寒くなってきました。近頃は<カナザワ映画祭>が終わると夏が終わり、という感じです。
 映画祭の期間は、あっという間の1週間であり、とても充実した1週間でした。『カランバ』で始まり、『カタストロフ 世界の大惨事』で終わる。人類滅亡を示唆して。「フィルマゲドン」て感じです。意気揚々と来た観客を意気消沈させて帰らせるというか、行きはよいよい帰りは恐い映画祭というか。そういえば、『この子の七つのお祝に』が来月ようやくDVD化されるそうです。増村保造監督による、トラウマ映画。下手なホラー映画より恐い! これもいつか<カナザワ映画祭>で観たい!

 <カナザワ映画祭>は、開幕はいつも賑やかです。初日の野外上映、続く爆音上映期間。イベントらしい熱気に包まれています。それに比べて閉幕はいつもさり気なすぎ。「え? これで終わり?」と驚く程に。県外客の殆どがおらず、観客数が少ないとはいえ、何か挨拶みたいなものがあっても良いのじゃないか、と思っていたものです。
 そしたら今年は違いました。5周年を記念して、最後にシンポジウム。柳下毅一郎さんと藤岡紫浪をお呼びし、かなざわ映画の会代表の小野寺生哉さんと3名で<カナザワ映画祭>を振り返ってもらうわけです。これは豪華!
 そんな絶対に楽しめるに違いないシンポジウムが、入場無料! シネモンドに入りきらないくらいの観客数が詰掛けるに違いない! 大丈夫なのか!? 心配になったので、前日に「明日のシンポジウムは整理券みたいなものを配るのでしょうか?」とシネモンドの方に訊いてみました。配るなら朝イチで貰いに行かねばなりません。ところが、「配らない」と返答が。え、でも、整理券がないなら、行列に並ばないと入場できないわけで、『カタストロフ』を観終えた後で行列に並ぶのでは遅すぎるような気がするから、『カタストロフ』の鑑賞を諦めなければならず、しかし鑑賞券はあと1枚残っているので『カタストロフ』は観たい……と思っていると、「行列なんて出来ないと思います。たぶん大して人は来ないと思いますから、大丈夫ですよ」とシネモンドの方が仰いました。ええー、それは甘いんじゃないのぉ? 柳下さんも出席するってのにぃ?
 いやー、実際、満席に満たない観客数でした(ほぼ満席ではあったので、通常なら大盛況といえるけど)。県外客の殆どは帰ってますし、<カナザワ映画祭>そのものが好きな県内(か北陸三県の)客くらいしか集まらなかったのでしょう。

 シンポジウムは、<カナザワ映画祭>の舞台裏を垣間見ることが出来、面白かったです。とりあえず御三方の話を要約すると、柳下さんと藤岡さんが酷い目に遭ったということのようです。小野寺さんは、不可能を可能にするのが好きな大物なのですが、それを実行するために頑張るスタッフの方々がいつも大変だ、ということらしいです。

 たとえば、クリスピン・グローヴァーさんの特殊上映。
 グローヴァーさんの「It」シリーズは、作品は自主制作で、上映は自主上映が基本。上映時にはグローヴァーさんの朗読会がセットになっています。フィルムだけの貸し出しはありません。それがたとえ字幕を付ける作業のためといっても。
 大変なのは字幕を付ける柳下さん。グローヴァーさんから映像なしの音声とスクリプトしか提供されなかったので、ちゃんとした字幕の作成が困難。しかも、グローヴァーさんの手違いで、音声が全体の半分くらいしかなかった。再要求して送られて来たら、また同じく半分。
 なぜそこまでグローヴァーさんが頑なかというと、他国の上映会で映像が流出したからだそうです。最初の頃は事前にDVDで提供していたのですが、そのDVD内容がネットに流出する事件が発生したため、流出を恐れたグローヴァーさんは音声しか提供しなくなったそうです。
 柳下さんは、何やかんやで、金沢市に向かう新幹線の中で字幕を何とか完成させました。しかし仕事はそれだけではありません。朗読会の字幕も担当しているからです。字幕を映像に合わせる作業は、柳下さんがリアルタイムで行っていました。
 グローヴァーさんはとても良い方なのですが、大変だった、と。

 たとえば、『シェラ・デ・コブレの幽霊』の野外上映。
 字幕付き野外上映は、快挙として記憶されていますが、その裏で大変だったのが、柳下さん。字幕を付けて上映することは開催の数ヶ月前に決まっていたのに、開催日の直前になっても字幕が出来上がっておらず、客として参加する予定だった柳下さんに救援依頼が出されました。また金沢市に向かう新幹線の中で字幕を完成。金沢市に到着すると今度は、完成した字幕を映像に合わせる作業があり、作業完了が上映開始の30分前
 間に合ったー、と上映開始しようとしたら映写機トラブル発生。何だかんだあってシネモンドの映写機を野外会場まで運んできて、やっと上映開始できたら今度は、フィルムが裏表逆。21世紀美術館で試写した際はちゃんと上映できたそうですが、フィルムを巻き戻す際に逆巻きしたそうです。
 ちゃんと上映されるまでに2時間くらい待たされましたが……裏話を知ると、奇跡のような野外上映だったようですね。
 
 たとえば、駅前シネマにて開催された渡辺文樹監督の特集上映。
 この件についての苦労話は、「駅前シネマニュース On Web」に該当する内容のものがあり、詳しく説明されています。シンポジウムで話された内容も同じものでした。
 駅前シネマニュース On Web→商品としての日本映画論
 ついでに当ブログ記事も参照してもらえば→「駅前シネマニュース」を読む
 この大変な苦労のために、駅前シネマは<カナザワ映画祭>と係わらないことに決めたそうです。無責任な私は、駅前シネマでのオールナイト上映や覆面上映が再び行われることを願っています。

 苦労ばかりのスタッフや関係者と異なり、小野寺さんは……あまり苦労されてない様子。というか、笑顔で酷いこというらしい。
 映画祭の思い出話も、殆どが「あまり記憶にないですねぇ」。特に一昨年の<カナザワ映画祭2009 新世界秩序サバイバルガイド>に関しては、「全く思い入れがない」。『ツァイトガイスト』シリーズなんて、「あれ、何なんですかねぇ。わけわかんなくて」と柳下さんに訊く始末。『人間革命』シリーズの上映には、某学会員の大量客を目論んでいたのに集客が悪く、「がっかりでしたよ」。野外覆面上映も、本当は『マッドマックス』を上映する筈だったのに、「ワーナーがケチだから」無理になったらしく、その代わりがなぜか『金日成のパレード』で、集まった300人近くの観客は、上映開始と共に少しずつ減り、最終的には50人くらいしか残っておらず、「もうあれで懲りた。公共の場で行う野外上映で冗談は通じないってわかった」。冗談だったの!?
 基本的に小野寺さんの作品選定は、自分が観たいものを選んでいるだけらしいですが、観たことないものを観られるのが嬉しくて選ぶこともあるそうです。子供みたいな感じです。昨年の『スクワーム』も知らずに選んでいましたね。
 こんな方が代表で大丈夫なのか、とも思いますが、実際はこんな方だから<カナザワ映画祭>は大丈夫なのでしょう。テキトーで雑多な感じ、細かいことを気にしない感じが<カナザワ映画祭>の良さです。
 小野寺さんの発言で最も記憶に残ったのは、作品間の時間について。柳下さんは、もうちょっと間隔を広げたら、と助言していました。食事もできないし、お客さんが大変だよ、と。しかし小野寺さんは違います。「いや、それだと作品本数が減るじゃないですか」
 観客を休ませることより、疲れさせてでも多くの作品を並べることを選ぶ漢、それが小野寺代表です。<カナザワ映画祭>は、小野寺さんの個性が全面に出ているから楽しいのだな、と実感しました。

 シンポジウムでは他にも良い話が聞けました。
 『シェラ・デ・コブレの幽霊』のソフト化が順調に進んでいるそうです。小野寺さんは、観られないから価値あるのにね、と台無しなこといってましたが。
 毎年思っていたことに、地元客の少なさがあります。県外客が7割くらいだそうです。だから来年からは地元に密着した映画祭を目指すそうです。今年にシンポジウムを最後に行ったのもその一環のようです。ちょっとサービスしてみた、と。飛び降り自殺する人の映像に「THE END」で映画祭を閉幕させちゃ駄目だろ、と柳下さんはツッコんでましたな。
 他にも色々と人物名や批判発言などが出ました(それをここで説明する気はなし。その場にいた者だけの楽しみだから)。1時間くらいがあっという間に過ぎました。最後に来年の映画祭に向けた抱負を小野寺さんが述べ、シンポジウムは終了。楽しかったです。

 さてさて、今年も何だかんだで本当にとても楽しかったです。
 最も良かった日のベスト3は、2日目、7日目、4日目。
 観た作品のベスト3は、『サディスト』(ムカつく顔が印象的)、『マンディンゴ』(そりゃあフライシャー監督だし)、『へんげ』(驚いた)。
 良かった音楽の作品のベスト3は、『カランバ』(サントラ出して!)、『ジェイコブス・ラダー』(サントラ持ってる)、『先生を流産させる会』(意外と!)。
 続けて観ると楽しいベスト3は、『マンディンゴ』→『夜と霧』(凹む!)、『ソドムの市』→『アンデスの聖餐』(食事!)、『マンソン悪魔の家族』→『サランドラ』→『ランボー』(田舎恐い!)。
 もちろん、どの日も楽しかったです。小野寺さんに振り回されているスタッフの方も何だかんだで楽しいから頑張っているのでしょう。お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。一応、サポーターとして1口だけですけど支援させていただきました。
 来年もまたよろしくお願いします。

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2011-09-29

<カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>8日目

9月23日――<カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>の8日目でございます!
 遂に最終日! 1週間はあっという間でした。寂しい! が、今年は今までと少し違います。最後にシンポジウムがある! 今までは、クロージング作品が上映されて、最後の挨拶もなしに寂しく終わっていたのに! やればできるじゃないですか、かなざわ映画の会
 私が観たのは、『カタストロフ』と「5周年記念シンポジウム」。

 『カタストロフ』は、日本で今、最も上映してはいけない作品かもしれません。副題が「世界の大惨事」ですから。
 題名通り、世界のあっちこっちで発生した惨事を並べただけの作品です。前半は大して面白くもないのですが、後半から大惨事度が俄然向上!
 特筆すべきは、クライマックスともいえる扱いの、高層ビル大火災。『タワーリング・インフェルノ』ばりの大火災で、逃げ遅れた方々が煙に巻かれ、窓や屋上から次々と飛び降りる! 絶対に助かるわけないのに、絶望の中に万に一つの可能性を信じ、または破れかぶれで、ダイブ! そしたら、はしご車によって助けられている人を巻き込んでしまう! はしごの上にいた人、ショックでしょうね。「ラッキー! 助かった!」と思っていたでしょうから。人生、最後まで気を抜いたら駄目です。まあ、そんな感じに人がキリモミ旋回しながら落下する様を見ている気分は、不謹慎ながら、『天空の城ラピュタ』のムスカです。見ろ! 人がゴミのようだ!
 そして最後には、人類が犯した最も大きな過ちとして、原発が登場します。世界はこんなにも大惨事で溢れているのに、原発を作ろうとは、愚の骨頂なり! 人類は、ゆっくりと滅亡の道を歩んでいるのだ……と、大々的に観客を脅します。今の日本からすると、物凄いタイムリー! <カナザワ映画祭>は社会性抜群です!
 エンドクレジットには、高層ビル大火災の場面をまた繰り返し――落下中の人の映像に、「THE END」。どれだけ尊い説教をしていても、台無しです。被害者の遺族は、どう思って本作を観るのでしょうか……
 ナレーションのウィリアム・コンラッドさんは、『黒い絨毯』以外に観たことない方ですねぇ。
 本作が最近作られていたら、間違いなくアメリカの911テロと、東日本大震災が盛り込まれていたでしょうね。

 さて、今年はクロージング上映の後におまけが1つ。「5周年記念シンポジウム」ですが……これも酷かった! 何がって、かなざわ映画の会の代表である小野寺生哉さんが! 映画愛があるのかないのかわからない、とっても冷徹な視線が絶妙の味わいでした。
 最後の一日は、この日でしか観られない『カタストロフ』と「5周年記念シンポジウム」のためか、観客数はぐっと増え、座席の殆どが埋まっていました。面白い話を聞くことが出来、いつもと違う<カナザワ映画祭>の終わりを味わえ、大満足の一日でした。

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2011-09-28

<カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>7日目

 9月22日――<カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>の7日目でございます!
 映画祭も残すところあと1日。もう寂しくなってきました。お金はありませんが、もっと続けば良いのに……
 私が観たのは、『マンディンゴ』、『夜と霧』の2本。

 『マンディンゴ』は、名匠リチャード・フライシャー監督の名作。プロデューサーであるディノ・デ・ラウレンティスさんは、本作を「自分にとっての『風と共に去りぬ』」とおっしゃっておりますが、いやいやいや! それにしてはあまりにも過激な内容すぎるでしょ!
 舞台は、黒人が奴隷であることに疑問を抱くわけもない超保守の村。北部では黒人奴隷を問題視する声が出ているのに、それは頭のオカシイ奴らがいってるだけのこと、と思っているような。“黒んぼ”が人間と同じ扱いである必要はない、と思っているような。まるで馬か牛のように“黒んぼ”を交配させて優良種を作る「黒人奴隷牧場」、それが主役。自由と愛と平等と正義を信じ、唱えているアメリカの黒歴史が舞台です。
 物語は、そんな「黒人奴隷牧場」の栄枯盛衰を描いています。といっても真面目な社会派ドラマってわけじゃなく、基本的な流れは昼ドラみたいな愛憎劇です。波乱万丈な物語でも何でもありません。物語は、“これから波乱万丈になる物語”を描いているのですから。ですから、物語は唐突に終わりを迎えます。全ての登場人物を物語の中に放置するような、突き放した描き方。
 フライシャー監督は、登場人物の誰かに寄り添うこともなく、淡々と物語を演出します。当然のような不幸の結末、見事なショットで描きます。とても衝撃的な内容ですし、考えると無理のある展開なのですが、そうは感じさせません。所々に驚くようなショットがあり、はっきりいって『風と共に去りぬ』なんかより遥かに出来の良い、そして賞味期限の長い作品です。
 たとえば“黒人奴隷”同士の格闘場面でのカメラワーク。優良種である「マンディンゴ」のミードが相手を殴り倒す瞬間の、一瞬のズーム。日本のアニメやゲームなんかではよく使われていますけど、実写映画で抜群のタイミングで行われるのは、なかなかお目にかからないと思います。そして最後のショット。殺され床に寝そべっている父親、それを見下ろしている息子、この2名を感傷的にならないよう、冷徹に突き放して見えるよう、最高のアングルで撮っています。撮影はリチャード・H・クラインさんでフライシャー監督とよく組んでいる方(『絞殺魔』の撮影もこの方)。屋内も屋外も、とても撮影が素晴らしい。画面を見ているだけでも飽きません。
 音楽も良い。最初と最後に流れるブルースが物語の悲惨さを強調しているだけでなく、全編に流れる音楽がほのぼのしていて、画面との組み合わせが最高!
 内容の衝撃さばかりが取り沙汰されている可哀相な作品ですが、とても良く出来た傑作です。DVDも今年ようやく発売されましたし、他国の黒歴史を野次馬的に楽しむためにも、広く観られるべきです。

 『夜と霧』は……30分ちょいという短い上映時間ながら、初めて観たこともあり、見終えてからの疲労が今映画祭で最高の作品でした。
 ナチスによるユダヤ人虐殺の酷さ……それが当時の記録映像で淡々と描かれます。人間石鹸とか、人毛の毛布とか……常識な話ではありますが、実録映像ならではの寒々とした容赦ない画面が、歴史が観客を打ちのめします。ブルドーザーで“ゴミ処理”されるユダヤ人の遺体、腐りかかっているユダヤ人の遺体、ところどころが“ほつれている”ユダヤ人の遺体……劇場内の空気が圧縮されていく感じ!
 音楽担当がハンス・アイスラーさんで、美しくも静謐なメロディーが画面を一層凍らせていました。アイスラーさんといえば、フリッツ・ラング監督の大傑作『死刑執行人もまた死す』の音楽担当で有名ですね。こちらも反ナチ映画。
 ナレーションがまた淡々としていて。担当はミシェル・ブーケさん。私にとってはジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『トト・ザ・ヒーロー』の方。『エスピオナージ』や『ボルサリーノ』よりも。
 残酷な行為も、役人のように「命令だから行っただけ。私に責任はない」と、日本でもよく聞くお決まりの台詞で片付けられる。それでは、どこに責任があるのか? ユダヤ人虐殺は他国の頭の狂った連中が行った過ぎ去った歴史の1行である、と片付けて良いのか、と『夜と霧』は最後に問う。ああ、これって、福島原発なんてで未だに揉めている震災復興の諸問題と同じだなぁ、と思いました。そう、扱われていることは異なっても、これは他人事ではないのです。

 7日目は、今映画祭で最も帰り道の気分が重苦しい日でした。アメリカの黒歴史とドイツの黒歴史、どちらも日本には全く関係のないことなんですが、無理解による福島県差別とかを見ると、本当に他人事ではないな、と。何十年経ってから、後の世代に馬鹿にされるのかもしれません。
 それにしても……『マンディンゴ』の後に『夜と霧』を上映するとは……この配置を考えた方は、観客を超落ち込ませてやろう、とサディスティックな喜びを感じる方なのでしょう!
 重苦しい日でしたが、そんな気分を味わうのも娯楽!
 観客数はやはり少なく、2本とも30人前後だったように思います。しかし、大満足の一日でした。

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ジャンル : 映画

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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