--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2010-12-30

『SR サイタマノラッパー2』は、「けいおん」集団の成れの果て

 『SR サイタマノラッパー2 ~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』を観た。
 前作の『SR サイタマノラッパー』がボンクラ男のグチグチした作品だったのが、今作の主人公はボンクラ女! ボンクラ女ラッパーの物語って珍しい! しかも、舞台は群馬! 2作目にして既に「サイタマノラッパー」じゃないし! 題名に偽りあり!!

 物語は簡単。というか、舞台と主人公を変更しただけ。20代後半になっても高校生の頃に組んだラップ・グループの楽しさを忘れられない女ラッパーがラップを取り戻すまでの日々を描く。
 主軸となる登場人物が5人に増え、続編ゆえにラップを描く技術も上がり、身につまされる痛い人物描写や状況描写も強力になっており、続編として期待値はクリアしている。前作と今作どっちが面白いかといったら今作の方だ。
 前作の主人公2人組が冒頭から登場し、聖地巡礼(伝説の先輩ラッパーがライヴをした場所)のために群馬に訪れ、それが物語の導入部となる。前作を観た人なら、あの最後の後、2人がヒップホップに戻ったことが冒頭で示されるので、嬉しくなる。
 前作の主人公2人、そして今作の主人公3人(主要人物は5人だけど、主人公は3人)にてヒップホップに人生を捧げる生き様が描かれる。みーんな痛くて、みーんな等身大で、主人公がラップを取り戻す最後の法事場面にはボロ泣きさせられる。何かに憧れて、挫折して、忘れようとして、しかしそれができない――まだ心の中でくすぶっている――人にとっては、涙が止まらないかもしれない。
 しかし、だから傑作かというとそうじゃなく、むしろ失敗作だと思う。

 まず、致命的に駄目なのが、前作での欠点である「現実感のなさ」を解消できていない点。現実離れしている部分まで継承し、かつ強力になっているんだもの。前作同様に長回しワンカットの場面があるんだけど、これが全く効果的でない。最後の法事で次々とラップする場面なんか、感動するんだけど途中で冷め、飽きてしまう。「え、まだ続くの?」と思ってしまう。法事という神妙にしなければならない場でのラップという設定は面白いけど、その面白さは全く活かせていない。
 また同様に中盤のプールでのライヴ場面も駄目。フルコーラスいらない。途中でカットし、控え室で意気消沈している場面に繋げればそれで済むのに、無駄にワンカット長回しをしている。
 ワンカット長回しは、映画にとって魅力的な演出だけど、効果的に使わないと逆効果でしかない。その一番の理由は、画面に映っている周囲の人物をちゃんと演出していないから。ざわついているだけで、誰も止めやしない。最後の法事のラップ場面で前作の主人公2人組が割り込んでくるのなんか、完全にコントでしかない。普通、全力で止める、または呆然とするだろうに、ざわつくだけ。プールの場面も、遠景で撮り、客の動きや空の色などを画面に収めているけど、客の反応の演出がイマイチなので意味がない。
 次に駄目なのが、主人公。いや、いますよあんな人。いますけど、ちょっと馬鹿すぎるだろ。ダサいファッションセンスで、ヒップホップ気取りなのが、痛い。いや、痛い描写が重要なのだから、というのはわかるんだけど、酷すぎる。あれじゃあ単なるメンヘラーじゃん。ラップを取り戻すことが、結局は高校生の頃の楽しさをもう一度ってだけで、前進したとはいえない。そもそもなぜ人生にラップが必要なのか前作同様描かれないので、これまた致命的に駄目。ヒップホップに憧れてるのにファッションに全く反映されていないし、別にみんなでラップをしなくても日常生活にラップを入れることは可能なのにそうでもないし。それでラップが必要なのだろうか? ラップでなければならない理由が描かれない以上、「SRサイタマノラッパー」は2作続けて失敗作といえる。

 貶しているけど、良い場面はもちろんある。
 前作以上にラップっぽさがちゃんと演出されていて良かった。川原や法事でのフリースタイルは楽しめた(もうちょいビートがしっかりしていれば良かったし、無駄なカメラワークもいらなかったけど)。
 最後、主人公と父親との会話がラップっぽくなっていて、主人公に「今、ラップっぽかった」と指摘され、「あ、本当だ」と思った瞬間に終わるのは素晴らしい。あのラストショットだけで前作を超えた。あのタイミングが全編に活きていれば傑作になったのにねぇ。
 そして、エンド・クレジット。シネスコサイズに画面が切り替わり、主人公が自分たちの歌を口ずさみながら川べりを気持ち良さそうに歩く姿は、最後の最後でヒップホップが生活の中に入っていることが示され、微笑ましくなる。あの画面サイズで全編撮り、画面に収まる色んなものを細かく演出できていれば、大傑作になったかもしれないのに。次は最初からシネスコで頑張ってほしいな。

 エンド・クレジットの後、どうやら全国を移動しながらシリーズを作り続ける気らしいことがわかる。次は、「ホームレス・ラッパー」とか出しそうだな。伝説のラッパーが今じゃ落ちぶれてホームレス、という設定の。でも、続編を作る気があるなら、演出を根本的に見つめ直すべき。何にしろ、ラップである必然性をちゃんと描けないとどうにもならないんだけど。
 あと最後に、アニメの『けいおん!』が大ヒットしたけど、『けいおん!』ファンこそ今作を観るべきだ。物語も成長も描かれていないと揶揄されたことのある『けいおん!』だけど、その揶揄は必ずしも間違っているとは思えない。楽しいだけの高校生時代をいつまでも忘れられない今作の主人公たちは、『けいおん!』主人公5人の成れの果てに見えてしまう。無垢であることと憧れ、または持続するための自覚――物語と成長は、そーゆー対比でしか描けないと思うのだ。もしも『けいおん!』を実写化するとして、その思索に今作を観ると、かなり面白いと思う。逆にいえば、そうでもしないと今作は楽しめないかもしれないんだよね。
スポンサーサイト

テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : サイタマノラッパー

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

最近の記事
プルダウンリスト
プルダウンタグリスト
ブログ内検索
ブログ全記事表示

全ての記事を表示する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。