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2010-11-14

『フローズン』は、自己言及に終わっている

 『フローズン』を観た。残酷映画の佳作『ハチェット』を撮ったアダム・グリーン監督の新作だ。
 『ハチェット』は、80年代そのままの残酷映画で、特に新鮮さもなく、イーライ・ロス監督の『ホステル』大ヒットありきの作品だったけど、過剰な残酷描写は楽しく、ついつい笑顔になってしまう作品だった。もっと面白くない映画がたくさん公開されている中、『ハチェット』は劇場公開されるに十分の魅力を備えていたと思う。だからグリーン監督の名前は要注目として覚えた。ロス監督のように『キャビン・フィーバー』から『ホステル』へとステップ・アップするか、地味に消えていくか、その動向を見てみよう、と。
 で、『フローズン』だ。

 物語は物凄い単純。スキー場のリフトに男女3人が吹雪の中放置されて、さあ大変。そんだけ。
 誰しも一度は「こんな状況は嫌だ」を考えたことあるだろう。ジェットコースターの回転中に停止しちゃったらどうしよう。理髪店の店員が殺人鬼だったらどうしよう。歯科医の医者が殺人鬼だったらどうしよう。他にも色々あるけど、その大半はもう映像化されているんだよね。特に『ファイナル・デスティネーション』シリーズは「こんな状況は嫌だ」の宝庫だ。実際、前述した3つの状況と似たような状況を描いている。『フローズン』も同じ。
 地上15メートルにあるリフトに取り残されるのは、一晩でなく、1週間。食べ物も飲み物もない。排泄も困難。下手に寝ると落下する恐れもある。吹雪をしのぐ場所もない。飛び降りるには地上15メートルは高すぎる。無事に飛び降りられたとしても、下には空腹の野生オオカミが目を光らせて待ち構えている。携帯電話はロッカーに置きっ放しだから救援も頼めない。凍死するか、空腹で死ぬか、落下して大怪我した上にオオカミに喰われて死ぬか……より良い死に方を選ぶしかない、まさに絶体絶命の大ピンチ。
 主人公らが追い詰められる姿を楽しむ作品なので、いかに面白い状況を作り出すかが重要。なんだけど、「リフト上に遭難」というアイデアを超えるものは最後までなかった。

 この手の作品は、登場人物の頭が良くないといけない。ダウンタウンの松本人志さんが監督した『しんぼる』みたいに、状況を改善するための行動がアホだと一気に興醒めしてしまう。「他にもっと良案があるだろうに、何でそんなことするかなぁ?」と。『フローズン』も同じ。とにかく脚本が練られていない。状況に対して最善策を採った上で窮地に陥れなきゃ駄目なのに、全くそうなっていない。
 前半に、「『ジョーズ』みたいに襲われるのがわかる死に方は嫌だ」とか「9.11テロの、WTCから飛び降りなければならなかった状況は嫌だ」など、暇潰しに「嫌な死に方」を話し合う場面があるんだけど、それがそのまま『フローズン』の展開に反映されているので、ウェス・クレイヴン監督の『スクリーム』シリーズみたいな自己言及映画でもある。が、『スクリーム』程には自己言及的でもない。無駄話の中に解決策を織り交ぜ(「あの映画ではこうやって助かっていた」とか)、それが行動に伴うならわかるんだけど、無駄話が本当に無駄なので驚いた。全てが中途半端。
 サスペンスのくせに、行動によって展開しないし。リフトから飛び降りたら、大骨折し、オオカミに喰われて終わり。ケーブルを伝って無事に地上に降りても、オオカミに喰われて終わり。結局、何も行動していない者が生き残る。皮肉的な展開を狙ったんだろうけど、全く成功していない。
 前半に、ロッジの壁に行方不明者のチラシが貼られているのを映すんだけど、それが伏線として効果的に活きることはない。リフト係が状況改善に役立つような展開もない。小便を漏らしても、凍り付いて困るようなこともない。少ない登場人物と状況が効果的に動かない。
 基本的に投げっ放しジャーマンな作品だ。

 また画面も酷い。
 凄く頑張って撮影したようだけど、照明が頑張ってない。スキー場の照明が全て落ち、月明かりしかない闇夜だってのに、しかも吹雪いているってのに、何であんなにちゃんと見えるの? もうね、その時点で駄目。サスペンスとして盛り上がらない。
 CGを嫌って現場主義で撮影するのは良し悪しだよ。便利な技術は積極的に使えばいいのに。

 とはいえ、面白い場面もあった。
 飛び降りた彼氏が着地に見事すぎる大失敗をし、「ボキグシャッ!」という盛大な効果音で骨が飛び出す大骨折するのは面白かった。最初はなぜか大して痛がらないんだけど、前屈しようとして「いってーっ!」と叫ぶのも面白かった。そして、オオカミに襲撃される場面は完全にギャグ演出で、涙が出る程に爆笑した。もっと容赦なく演出してほしかった。
 結局、何もしなかった彼女が運良くリフトから降りられ、急いでスキー場を滑り降りている最中、またもやオオカミと遭遇するんだけど、先に逃げた筈の友人を食べるのに夢中だったから襲われずに済むのが面白かった。
 面白かったのは、その2つのシークエンスと「リフト上で遭難」というアイデアだけ。
 上映時間は93分と短いんだけど、無駄話が無駄なため、長く感じた。登場人物の行動によって性格設定も説明できていれば、80分くらいで作れるような作品だ。それだったら物凄く面白かったろうな。

 ところで、公式サイトから見られるコメント五月女ケイ子さんによる「バカドリル」みたいなイラストは、余計極まりない。
 特にデーブ・スペクターさんとルー大柴さん、竹中直人さんのコメントが酷い。『フローズン』に全く貢献していない。観た後に読むと、盛り上げてくれるどころか盛り下げてくれる。
 イラストはとっても面白いけど、これまた『フローズン』には貢献しない。
 作品に貢献する気が配給会社にないとしか思えない……
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : フローズン

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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