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2010-11-09

ポルトガル映画祭2010で大発見

 11月5~7日まで21世紀美術館シアター21で開催されていた<ポルトガル映画祭2010>を観た。仕事の都合上、6日のペドロ・コスタ監督の『』、アントニオ・レイスマルガリーダ・コルデイロ監督の『トラス・オス・モンテス』、7日のマノエル・ド・オリヴェイラ監督の『神曲』、計3本しか観られなかったけど、それでも充実した時間を過ごせた。

 まず、私はコスタ監督の『ヴェンダの部屋』が大好きなので(DVDを買って観た)、まだ観たことない『骨』が観たかった。そのコスタ監督に多大なる影響を与えたという『トラス・オス・モンテス』も興味津々だった。

 『トラス・オス・モンテス』は、ノンフィクションとフィクションの境目にいる作品だ。
 ポルトガルの山岳地帯にある村を舞台に、美しい風景、純朴な人々、その想い出が時系列をごっちゃにしながら特に何の説明もなく描かれる。シネコンで上映される多くの説明過多な映画を観慣れていると、呆気にとられたまま気付いたら終わっているような作品だ。つまり、何を語っており、何が描かれているのか理解し難い作品ってこと。無駄な説明を省略しているだけで、説明は十分に成されている。何を描こうとし、何を語ろうとしているのか、それは画面を見るしかない。
 画面を凝視する。ただそれだけが楽しいと感じる映画もある。『トラス・オス・モンテス』はそれに近い。近いが、何かもう一歩足りない。おおっ、と感嘆するショットもたくさんあるんだけど、その「おおっ」が持続しない。美しい風景を存分に楽しめるし(とはいえ殆どが山岳地帯なので荒涼としているけど)、純朴な子供たちの姿を楽しめるし(とはいえ純朴すぎて何が楽しいのか理解できないけど)、過去と現在の歴史の流れや近代化への警鐘みたいなものも楽しめるし(とはいえ、それはちょいと無理がある。さすが詩人だけはあり、何考えてんだ、と思わなくもなかった)、本当にところどころで「おおっ」なんだけど、全体を通して考えると、この作品の何が「おおっ」なのかわからなくなる。
 コスタ監督に影響を与えたというのは、納得できた。前半、ある少年の姉が嫁ぐことになった際のことを回想する場面なんか、コスタ監督作に近いものを感じた。でもコスタ監督作は、『トラス・オス・モンテス』の影響を受けた以上の化学変化を見せている。本当に基本的な部分で影響を受けただけなんじゃないだろうか? 『トラス・オス・モンテス』は『骨』よりも20年も古い作品だけど、それを考慮しても『トラス・オス・モンテス』から『骨』への飛躍は凄まじい変化だと思う。
 ま、観るだけの価値はある作品だった(と偉そうに語れる程に私が『トラス・オス・モンテス』の価値を理解しているとは思えないけど)。

 『骨』は……凄かった。これまたノンフィクションとフィクションの境目にいるような作品なんだけど、圧倒的に面白い。スリル満点で、終始ドキドキしながら観た。
 何よりも自信あり気なショットの数々が素晴らしい。そしてその素晴らしさが最初から最後まで片時も途切れない。サスペンスでもないのに、異様な緊張感がある。
 特に驚いたのは、ロクデナシの青年が、生まれたての赤ちゃんを黒いゴミ袋に入れて街へとズンズン歩く場面だ。その場面まで殆どのショットは動きがないのに、ロクデナシ青年に合わせて横移動する。しかも、長回し。開放感があると同時に、長回しなのもあり、ロクデナシ青年がどこへ向かっているのか、何の目的があって急いでいるのか、それが緊張感を持って描かれる。これは私の勝手な思い込みなんだけど、今、日本でこれをやろうと思って巧くできる可能性があるのは北野武監督かもしれない、なんて思いながら観ていた。が、どうも北野監督はあと一歩思い切りが足りないようで、いつも躊躇するんだよなぁ。
 見事なまでに色々と映さない。その代わり、音はガヤガヤと豊富だ。これだよこれこれ。予算が少なくても、ちゃんと工夫して面白く、スリル満点に演出できるんだよ。『SRサイタマノラッパー』シリーズなんかが失敗しているのは、ここなんだよ。

 今回の<ポルトガル映画祭2010>のメインは、オリヴェイラ監督作だ。百歳を越えて未だ現役のオリヴェイラ監督、「生きる映画史」と読んでも文句いわれないだろう。そんなオリヴェイラ監督作で観られたのが『神曲』だけなのは悲しい。『カニバイシュ』も『春の劇』も『過去と現在 昔の恋、今の恋』も『アニキ・ボボ』も観たかった……
 『神曲』しか観られなかったけど、この1本だけでもオリヴェイラ監督が意地悪でユーモアに溢れた作家であることがよーくわかった。下手すると「アート」という枠組みに入れられ、同時にそれは「難解」という枠組みに入るわけだけど、そんなことは全くなく、メチャクチャわかり易く、面白い作品だった。
 まず、物語が面白い(難解ではないけど、物語を面白いと思うための知識レベルは少し高いかもしれない)。ラスコリーニコフが後悔してて、カラマーゾフの兄が大審問官の物語を嬉々として語り、ニーチェは信仰を鼻で笑い、イエスはお告げを延べ、アダムとイヴは全裸を恥ずかしがって服を着る。歴史上の偉大な人々が己の思想を黙々と語り合う。ただし、その舞台は精神病院なのだ。
 物凄い意地悪な設定。登場人物たちの会話は哲学的で、少々難しい。だから観客は、その内容を理解しようと努め、「うーん、奥深いなぁ」なんて思うかもしれない。でもそのすぐ後に気付く。そういえば、こいつらみんな精神病患者なんだな、と。意地悪なユーモア。最後には病院長がクビを吊って自殺する。
 オリヴェイラが偉大な芸術家であることは間違いないけど、同時にとっても面白い作家でもある。他の作品は違うのかもしれないけど、『過去と現在 昔の恋、今の恋』のあらすじを読むだけで、やはり面白い作家であることは間違いない。嗚呼、観られなかったことが悔やまれる。
 画面は終始揺るぎない。意外とわかり易い長回しなんてせず、カットを積み重ねている。切り替えし、切り替えし。事実を描いているようで、嘘みたい。大きく動く画面は、イワン・カラマーゾフがバイクで病院に来る場面だけ。外から内へ。

 『骨』と『神曲』を観ていて、なぜか北野監督の『アウトレイジ』を想い出した。北野監督のアート指向と娯楽指向が全作品中で最も良いバランスで表現されていると思うんだけど、物語がヤクザで殺し合いという低級な感じなため、作品まで低級に見られている。たぶん北野監督はオリヴェイラ監督もコスタ監督も知らないと思うけど、もしかしたら……とポルトガル映画と全く関係ないところで大興奮してしまった。
 オリヴェイラ監督作とコスタ監督作のDVDをこの際だから買い漁ろうかと思ったら、当然のようにレア価格商品となっていた……再販してくれないかなぁ。仕事を休んででも全上映作を観るべきだった。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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