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2010-11-07

『私の優しくない先輩』は、山本監督に優しい映画

 『私の優しくない先輩』を観た。アニメ演出家である山本寛さんの初長編映画監督作かつ初実写映画監督作だ。
 山本監督は、『涼宮ハルヒの憂鬱』と『らき☆すた』で一躍有名になった演出家であることは知ってる。しかし、大ヒット作品を作ったとはいえ、初実写映画の監督作でいきなり全国公開される規模の長編作を任される程の実力があるとは思えない。だって『涼宮ハルヒの憂鬱』、そんなに面白くないんだもの。

 物語は単純。主人公:西表耶麻子は、想像力逞しく恋に恋する病弱な女子高校生。その先輩の不破風和は、耶麻子を好きだった。しかし耶麻子は不破先輩が大っ嫌いで、好きな男子は同級生の南愛治くんだった。不破先輩は、自分の恋心を隠し、耶麻子の恋の成就を叶えようと奮闘する……
 よくある物語だ。少女漫画の新人賞を獲ったような物語だ。目新しい点が全くなく、何でこの程度の物語が映画にまでなるのかさっぱりわからない。山本監督の手腕以前に面白い作品になろう筈がない。しかも、その上に。
 まず主人公の耶麻子が可愛くない。つーか、ただのメンヘル馬鹿だ。そもそも「妄想ばかりして、病弱で、恋に憧れる女子高生」という主人公設定は、ギャグにしか思えん。ギャグでないとしたら、どう考えても病的で魅力的ではない。
 次に、不破先輩がウザキモく見えん。台詞でウザいキモいと一生懸命説明しているけど、ちぃーっともそう見えない。不破先輩を演じる金田哲さんがウザくてキモく見えないのが致命的に駄目なんだけど、それは金田さんのせいでなく、金田さんを起用したのがそもそも失敗なんだろう。確かに金田さんは懸命にウザくてキモい存在感を出そうとしているけど、TVのバラエティー番組で見る金田さんでしかなく、つまり劇映画としての嘘っぽさが希薄なのだ。
 原作は読んだことないので映画版との差異はわからないけど、原作が映画版と何も変わらないのだとしたら、バズ・ラーマン監督作並みの大袈裟で絢爛豪華なアレンジを施さないと面白くない(たとえば『ムーラン・ルージュ』とか)。
 とにかく物語が面白くないのだから最初から大変だ。
 
 山本監督の演出は、巧い部分と駄目な部分が明確に分かれている。というか、9割は駄目。方向性は間違ってないと思うのだけれど、技術力が足りな過ぎで巧く実現できていない感じ。ローテクにて味わいを出そうとしているようだけど、たとえばミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』や『僕らのミライへ逆回転』に比べれば徹底してない(ゴンドリー監督作は嫌いだけど)。妄想炸裂をそのままアニメちっくに映像化してみせる演出も、たとえば中島哲也監督の『下妻物語』や『嫌われ松子の一生』と比較すると徹底されていない。つまり、山本監督ならではの個性は画面からとっても希薄。
 巧いと思った残り1割は、きっちり画面を作り上げている場面。つまり、最後の「MajiでKoi恋する5秒前」をフルコーラスで使ったワンカットの長回しミュージカル。が、それも駄目な9割の部分と比較しての話。もっともっと巧いミュージカル演出は世にたくさんある。やはり終わりに登場人物が総出でミュージカルをする、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『八日目』とか。当然ながら山本監督はドルマル監督より圧倒的に下手糞。比較するのが可哀相ではあるけど。

 何で駄目なのかというと、画面に密度が足りないから。
 アニメと実写の違いは、簡単には「描こうとする」ことと「撮れてしまう」ことの違いだと思う。アニメや漫画では描かなければならないことも、実写なら撮影するだけで事足りることが多い。しかし、画面の密度を濃くしようとすると、実写はアニメ以上に大変だ。
 実写は、テキトーに演出すると何でも「撮れてしまう」ので、「撮らない」ことの方が難しい。アニメなら映したくないものは描かなければいいが、実写だと物理的に排除したりCGで修正しなければならない。山本監督は、色んなものを余りにも簡単に撮っている。不用意な画面だらけ。
 不用意な画面が多いのは、演出に配慮が足りないからだ。
 たとえば不破先輩がキモいというわりに、あまりキモくない。汗臭いといっても、スポーツによる汗なので、そんなに汚いと思えない。キモオタでデブだっつーんならわかるけど、それだと最後の「大好き」には繋がらない。台詞でいかに不破先輩が駄目か説明するだけで、肝心の演出に反映されていない。簡単に考えても、耶麻子以外に不破先輩を毛嫌いしている人々が描かれていないのは不自然
 耶麻子があれだけ馬鹿な妄想家であれば、周囲から力一杯浮きまくるだろうに、イジメられている描写がないのも不自然。校庭でピヨピヨと小さく羽ばたいている場面とか、どう見ても頭が可哀相な娘じゃん。描写が大袈裟であればそうも思わないんだけど。
 体操している場面だって、余りにもテキトーに描写している。前転できることが何で人生を揺さぶる程に重要なのか、さっぱりわからないし。そして、耶麻子が前転できるとなるといきなり大回転しちゃうのはギャグにもならない。まあ、それは原作が悪いんだろうけど。
 祭りの最中に不破先輩と大声で喧嘩している場面だって、普通なら周囲の人々が祭りに興じるのを放置してでも、何だ何だとざわつくだろうに、誰も主人公らに興味を示さない。
 世界が美しいと台詞にあっても、映っているのは普通の港町風景。ちっとも美しくない。しかしその脇では人々が地面から少し浮いて歩いている。現実感と空想感が巧く混ぜ合わされていない。
 現実と空想に大きな差異が生まれていない。つまり、密度が足りない。
 山本監督の理想とする映像がもしもアニメのように幻想的であるなら、『私の優しくない先輩』を山本監督で実写化したのは大間違いだった。山本監督なら、アニメで映画化すべきだった。

 最後のミュージカル場面は、楽しかった。が、不必要に感じた。
 まず、華やかさが圧倒的に足りなかった。もっと楽しく派手に踊ってもらいたかった。浮いたり飛んだり、夜になったり昼になったり、祭りの場面に突入したり、病院内で踊ったり。最後の締めとしてのミュージカル場面なんだから、登場した場所や状況を全部使って演出するべきだった。あと、踊りが統制とれてないのもいかん。金田さんがウロチョロしているのが気になって気になって。そーゆーキャラだからってのはわかるんだけど、最後くらいはキレイに締めてもらいたいよ。
 途中に何度かミュージカルな場面がないのも悪い。そうだ、絶対にそうだ。『私の優しくない先輩』は、ミュージカル要素が足りないから駄目なんだ。救いのない話でもミュージカル場面があるだけで楽しくなったりするもんだ(『八日目』が正にそう)。
 ワンカットで撮る計画が最初からあったのだろうか? そうであれば、それが足かせになったのかも。あと、やっぱ、山本監督だから「最後は一つ、ミュージカルで」という注文があったのだろうか? そうであれば、それを逆手に取って、アニメでは技術的に難しい、激しい動きの絢爛豪華なミュージカルを演出してほしかったなぁ。

 耶麻子と不破先輩を撮る際は、世界には2人だけ、その背景には誰もいない、そんな風に撮れば良かった。しかし実際は色々と撮ってしまっている。主人公2人以外にも世界には他者がいるのに、その他者は書き割りのような他者で、存在価値が全くない。他者をちゃんと描きくだけで説明できる場面でも、他者は何も語らない意味を成さない存在なのだ。ゆえに台詞がうるさくなる。ナレーションだらけなのは別に問題にならない。そーゆー作品なんだから。しかし、画面がナレーションに合ってないのが駄目なんだ。意味を成さない他者がたくさん描かれている場面は、画面がスカスカになるのを恐れるかのように、ただ描かれているだけ。『私の優しくない先輩』が面白くないのは、他者が全く機能していないからだ。それに尽きる。役として価値がないような他者であっても、画面に映る以上、意味がある。意味がないのなら、撮らなければいい。それだけ。
 何度考えても、アニメで作れば良かったのに、と思えてしまう。なぜ実写だったのか。庵野秀明監督が初実写映画『ラブ&ポップ』を作った時は、「エヴァ」で疲れ果てたのか……と思ったが、山本監督はまだそんなに疲れていない筈だ。庵野監督はその後なかなか浮上できず、「ヱヴァ」に戻ってしまった(その時の気分に合っていたのか、「あの素晴らしい愛をもう一度」が流れる最後には感動しそうになった)。アニメ作家なら、アニメで勝負してほしいと勝手ながら思ってしまう。『ラブ&ポップ』だってそう思った。不思議と押井守監督はアニメでも実写でもいいと思うけど。
 山本監督は、『私の優しくない先輩』で自分を表現できなかった。だって、『私の優しくない先輩』を中島監督が作っていればもっと凄くなった、と確信できるし。ラーマン監督ならさらに凄くなったと断言できるし。いくら予算を上積みしても山本監督に中島監督やラーマン監督より凄いものを作れるとは思えない。しかし、アニメならその2人に負けないだろう。最も自分に適した環境で表現すべきだ。アニメでなら、もっと画面の隅々にまで注意して作れたのではないだろうか。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : 私の優しくない先輩

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中国のアジア侵略・人権弾圧を阻止する抗議デモin横浜
日時・内容:
平成22年11月13日(土)
12時00分 集合
12時30分 集会
14時00分 デモ出発(~到着「横浜駅西口」)

10月2日 渋谷 2600名参加
AFPなど海外のマスコミは報じたが、日本のマスコミは報じず。
10月16日 青山 3200名参加
産経新聞は報じた。NHKは右翼団体と捏造報道し印象操作。
11月6日 日比谷

注意事項:
※プラカード持参可(ただし、民族差別的なものは禁止)
※国旗以外の旗類・拡声器の持込はご遠慮下さい

場所:
横浜・反町公園
(横浜市神奈川区反町1丁目)
JR東神奈川駅、東急反町駅、京急仲木戸駅付近

主催:
中国民族問題研究会
頑張れ日本!全国行動委員会

ご連絡先:
頑張れ日本!全国行動委員会
TEL 03-5468-9222
http://www.ganbare-nippon.net/

◆チャンネル桜公式サイト
http://www.ch-sakura.jp/
http://www.youtube.com/user/SakuraSoTV?gl=JP&hl=ja#g/u
プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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