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2010-09-19

『シェラ・デ・コブレの幽霊』再び金沢市に出現

 9/17の20時から<カナザワ映画祭2010 世界怪談大会>が遂に始まった。『シェラ・デ・コブレの幽霊』野外上映が映画祭の幕を切って落とした。ええ、そりゃあもう盛大に。

 当日の午前中まで雨天で(前日は土砂降りだった)、ああこりゃ野外上映は無理だなぁ、と殆ど諦めていたのに、午後から雨が止み、その後は見事な晴れっぷりで野外上映は無事実施された。お天と様も『シェラ・デ・コブレの幽霊』を観たがっているのだな、と幸先の良さに感激した。思わずガッツポーズをとってしまうくらい、嬉しかった。
 しかし、さすがは『シェラ・デ・コブレの幽霊』、簡単には観させてくれなかった。

 雰囲気満点の野外で20時から上映が始ま――らなかったのだ、映写機トラブルや人的トラブルで上映時間がずれることずれること。
 「もうしばらくお待ち下さい」が何度も繰り返され、「直ったようなので上映を開始します」も何度も繰り返され、上映開始時刻が20時から20時半にずれ、さらに「あと何分とは明確にいえませんが、最善を尽くしております。もうしばしお待ち下さい」が何度も繰り返され、遂には上映開始時刻が21時になるとアナウンスされた。しかしそれでも上映は始まらなかった。
 遂には、映写機の調子が良くなったり悪くなったりを繰り返したため、良くなった時期を逃さないように、「次に映写機が直った時は、開始のアナウンスなしで上映を開始します」とアナウンスされた。いかに慌てているかよくわかる。しかし、上映開始されたと思えば、音声部分の速度が合ってなかったり、フィルムが逆だったりで、駄目だった。
 そんなこんなで21時、本当ならもう観終わっている時刻にまだ上映は開始されてなかった。野外に長い間待機させられているせいか、徐々に寒さが強くなってきた。風も強くなり、上映開始予定時刻だった20時から気温は確実に下がっていた。同じ姿勢でずっと地面に座らされていることもあり、足腰が疲れてくる。下手すると上映開始が22時になりそうなため、我慢できずに帰る観客もいた。もしかしたらこのまま上映できずに終わるかもしれない、と危惧された。
 映写機は結局、直らなかった。誰もが思っただろう。「さすがは『シェラ・デ・コブレの幽霊』だ、呪われている」と。曰く付きのフィルムでもないのに。
 映写機の復旧は諦め、別の映写機を用意することになった。映写のテントを眺めていると、シネモンド上野館長が映写機を運んできていた。しばらくすると、カタカタカタと映写機が調子良く動く音が聞こえ、「今から上映します」とアナウンスが入り、今度こそ本当に上映が開始された。上映までに1時間半近く待たされた
 
 3年ぶりに観る『シェラ・デ・コブレの幽霊』は変わってなかった。墓地に電話を引き、死者から連絡がある、という発想の面白さ。その不気味さを際立たせる異様な音効。得体の知れない恐怖描写。何もかもが見事で、全く色褪せていない。
 前に観た時は覆面上映だったため、落ち着いて観られなかったけど、今回は予めわかっていたし、2度目の鑑賞だし、日本語字幕が付いたお陰で以前よりもわかり易くなっていたので、とっても落ち着いて観ることができ、新たに気付いた点があった。
 タイトルが出る前の、街が海の水に呑まれる驚きの描写は記憶になかった。あんな場面あったんだ。
 幽霊の姿もじっくりと眺められた。当ブログの以前の感想では「骸骨と腐乱死体を合わせたようで、よくわからんが不気味」と表現したが、それだけでなく、その不気味な顔にエフェクトがかけられていることに気付いた。ギラギラと光っているようだった。
 そして、その古臭さと白黒映像だからこそ美しく不気味で、価値が下がらないことに気付いた。

 『シェラ・デ・コブレの幽霊』がカラー作品だったら、もしかしたら今程の評価はなかったかもしれない。不気味な顔も白黒だから不気味なのであって、カラーで細部の色が表現されていたらガッカリな出来かもしれない。恐怖描写にとって抑制と過剰のバランスがいかに重要であるかよーくわかろうというもの。
 たとえば今の日本の恐怖映画は、抑制が強い。とにかく恐怖描写を抑制して抑制して、最後にドカンと過剰演出をする。観客に見せるようで見せない。巧みに隠す。錯覚のように映っており、それが心霊描写としての本物っぽさを演出している。観客に想像させる余地を残す、そんな演出が恐怖を煽る。しかしそれは“演出の引き算”ではない。抑制と過剰は同じものだからだ。
 画面の端や登場人物の背後からかすかに見えるように映す“恐怖”は、画面を適当に見ている人だと気付かないかもしれない。本当の心霊写真ならそれでも構わないだろうけど、商業映画である以上、少なくとも大半の観客に「ああっ、何か映ってる!」と気付いてもらわなければならない。だから、小出しに演出しているけど、がっちりと描写している。『邪願霊』を基本として、「ほらっ、ここ、ここに何か映ってるでしょっ、ほらほらっ!」と全力で自己主張している。
 『シェラ・デ・コブレの幽霊』はそんな日本の恐怖映画と真逆に、とっても素直に過剰だ。つまり、普通のホラー映画と同じなのだ。だのにここまで評価が高いのは、物語のミステリーとしての面白さと、白黒映像としての情報量の少なさゆえだろう。
 だから思う。『シェラ・デ・コブレの幽霊』は、昔より、今の方が怖く感じるのかもしれない。その恐怖感は、人によってバラバラだろうけど。そして、時が経つにつれ、その価値は上がるんじゃないか。中原昌也さんが秘密上映会で「やっぱ燃やして、幻の映画にしよう」といった気持ち、わかるなー。

 再びまみえるのに3年かかり、いざ観られる段になっても簡単に観させてくれなかった『シェラ・デ・コブレの幽霊』は、観られるだけでも幸せな作品だった。映画ファンとしては、<かなざわ映画の会>にはどれだけ感謝してもし切れないくらいだ。くらいだけどぉ、少し批判をば。
 上映会の運行をもう少し上手に進めてほしかった。機材トラブルとはいえ、結果的に1時間半近くも観客を待たせたのだから、待ち時間中に<かなざわ映画の会>代表の小野寺さんが『シェラ・デ・コブレの幽霊』についてのアレコレを解説しても良かったと思う。『シェラ・デ・コブレの幽霊』は希少価値の高い作品だけど、集まった観客みんながその予備知識を共有しているわけじゃない。よく知らないまま興味本位で何となく観に来た人もいただろう。実際、観終わって「意味がよくわからんかった」とか「あれのどこが凄い映画なの?」といっている観客が結構いた。『女優霊』に与えた影響とか、そこら辺を解説すれば翌日以降の動員にも影響を与えられたのに。21時まで上映開始時刻が遅れると思った時点で観客を楽しませる対策を取るべきだった。そうしなかったことが何よりもの人的ミスだ。そのために作品の価値が半減したのは間違いない。もったいないな、と思った。
 あと、欲張りすぎな注文になるけど、最初から映写機は2台用意しても良かったのではないか(予算の都合で余計な準備は難しいのかもしれないけど)。野外上映だから、天候の影響を直接受けるんだし、フィルムの状態が悪くなったり、映写機の調子が悪くなることも考えられたと思うのだ。リスク対策が取られていないのも人的ミスでしょ。
 そしてもう1つ。野外上映が駄目だったら21世紀美術館シアター21で上映する予定になっていたけど、それは本当に可能だったのかなぁ? 3年前は覆面上映だったから人数も少なかったけど、今回は「探偵ナイトスクープ」以後かつ事前告知済みの上映なんだから、世界中からマニアが集まって、観客数が千人近くになったら野外上映でも厳しいだろうに、と思っていた。実際は400人以下だろうけど、それでもシアター21に納めるのは無理だ(座席を全部取っ払って単なる広場に改装することができれば可能かもしれないけど、それで無料上映なんて赤字確実でしょ)。見通しが甘いんじゃないか、と思った。本当に晴れて良かった。

 とまあ、問題も少しあったけど、私としては大満足な上映会だった。待たされている時間も何もかもが特別な感じで楽しかった。
 『シェラ・デ・コブレの幽霊』がきっかけで当ブログを始め、もしかしたら当日観に来ていた観客の中に当ブログを観た人がいるかと思うと、何か面白い。『シェラ・デ・コブレの幽霊』の今の認知度の高さは「探偵ナイトスクープ」で紹介されたお陰だけど、情報発信としては当ブログも多少は貢献できたかもしれない。だったら嬉しい。
 そして今回の上映が一般化のさらなる足がかりになれば、映画ファンとしてはとっても嬉しい。
 上映に係わった皆様、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

余談:
 映写機のところにいた人って、昔あったグランド劇場にいたさん?
 Sさんは、街中から映画館がなくなった後、公民館などを回り、自主上映会を開いていた。その上映作品は決して好きなものではなかったけど、映画にかける情熱は素晴らしいと尊敬していた。確か昨年のカナザワ映画祭でも見かけたので、カナザワ映画祭の関係者になったのだろうか? だとしたら、まだ頑張っているんだ。偉いなぁ。
 しかし、そんなベテランのSさんでも映写機トラブルを直せなかったとは……どんなトラブルだったんだ。やはり呪いが……

当ブログ内の関連記事:
当ブログ内→カナザワ映画祭2007・青いオトコまつり 覆面上映
当ブログ内→カナザワ映画祭2010で『シェラ・デ・コブレの幽霊』が再上映!!

自主上映を実施した「ホラー映画向上委員会」の感想:
ホラー映画向上委員会→シェラ・デ・コブレの幽霊(1965)

「探偵ナイトスクープ」にて『シェラ・デ・コブレの幽霊』の名を全国に轟かした功労者の体験記:
鴫野2.0→幻のホラー映画を求めて…
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テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画

tag : カナザワ映画祭 シェラ・デ・コブレ

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No title

ハラハラしましたね~。
大事なフィルムが心配で心配でたまらんかったですよ。
とはいえ、
おっしゃる通り字幕がつくことで本当に理解度が違いましたね。
楽しく怖い映画でした。

一緒にあの場で観た人達にも縁を感じずにはいられません。
We love movies !

nasuさんへ

いやぁ、本当に心配しましたよ。観客が途中でぞろぞろと帰り出したりしないか、気温の変化などでフィルムが変調したりしないか、と。nasuさんは上映会を行った側として、私とは違う視点でそこら辺を視られていたと思います。心配でたまらなかったのでしょうね。「よし、ここは任せろ!」と助け舟を出すとか……
でも、不思議と一体感を感じましたね。確かに、「We love movies!」です。

ありがとうございます!

何も客観的には見られない状況だったので、こうして詳細なレポートを読めるのは本当にうれしいです。
字幕は一カ所すごい間違いがあって、上映された瞬間に気づいたのですが、とても恥ずかしかったです。
滞在中にお会いできれば良かったのですが、事前にそういうことを考える余裕がまったくなかったので、残念なことをしました。

添野知生さんへ

フィルム所持者である添野さんご本人からのコメント、ありがとうございます。単なるいち観客に過ぎない私の、単なる感想に過ぎない駄文にコメントを頂けるとは、恐縮です。
野外上映は結果的には大成功だったと思います。さらに一般化されたのではないでしょうか? しかし、字幕にミスがあったのですか……全く気付きませんでした。感想を書いておきながら、観ているようでちゃんと観ていなかったということですね……恥ずかしいです。
お会いできれば嬉しいとは思いますが、特に何の貢献もしておらず、偉そうに感想を書いているだけの私が会うだなんて、恐れ多いです。たぶん緊張の余り逃げ出します。
今後ともご活躍を期待しております。頑張って下さい。
プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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