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2010-09-12

変わらぬもの:石野卓球『Cruise』、砂原良徳『Subliminal』

 石野卓球さんの『Cruise』と砂原良徳さんの『Subliminal』を購入。どちらも良作。とっても。

 石野さんの『Cruise』は、とてもリラックスした作品。シーンを活性化させなければとか、自分がシーンを牽引しなければというような、ちょいと昔の気負いはもう全くない。もう石野さんがいなくてもシーンは勝手に気ままに動いている。もう石野さんは古臭いオッサンといわれてもおかしくない。だから、というわけでもないんだろうけど、音が気楽な感じだ。
 といって、何か変わった感じは全くない。いつも通りの石野さんの音。それは1曲目の「Feb4」からわかる。キック、ベース、エフェクト、そしてTB-303、変わっているようで全く変わらない石野さんらしさ。
 3曲目の「Hukkle」は、ちょっと流行を意識しているのかな、と思える。パーカッシブなミニマル。なんだけど、エフェクトの入れ方にしても、決してミニマルにならないのが石野さんらしさだ。結局、サービス精神旺盛なのか、展開を細々と入れて飽きさせない。逆にいえば、深いところに潜るような曲に石野さんは興味ないのだろう。
 最後の「Y.H.F.」にしたって、最後の曲だからそれっぽいのを、という全体の展開を考えてしまうあたり、石野さんらしい。
 とっても石野さんらしい、聴けば石野さんだとすぐにわかるような作品だ。

 砂原さんの『Subliminal』も、とてもリラックスした作品。ただし、石野さんとは逆に深く潜るような感じ。
 前作の『Lovebeat』は、大傑作だった。余りの傑作ぶりに、『Subliminal』を聴いていると、『Lovebeat』が去年くらいに発表された作品かと思うくらいだ。『Lovebeat』は全く色褪せることなく、その発展系として『Subliminal』がある。
 9年ぶりに発表された新作だってのに、砂原さんには焦りは全くなさそうだ。聴く人によっては、『Lovebeat』と同じじゃん、と思うだろう。もちろんそんなわけはない。『Lovebeat』と同じ路線ではあるけど、曲の完成度は『Lovebeat』よりもさらに格段に上がっている。『Lovebeat』が完成度の高い世界を作り上げていたってのに、それをさらに超えている。また、音が『Lovebeat』よりもシリアスになっている。たとえるなら、オウテカっぽくなった。つまり、今まで以上に一音一音に緊張感があり、同時に遊び心もある。余裕があるのに、切迫している感じ。
 1曲目の「The First Step」の始まり方が良い。時報のような、時を刻む――1秒よりもゆったりとした――カチッカチッカチッカチという音から始まる。そこに鍵盤のフレーズ、太いベースの音が加わり、隙間の多いビートが始まる。聴いているだけで、瞬時にリラックスしてしまうような、まるで「まあ、まずは落ち着きなよ」といわれているような始まり。もうこれだけで傑作であることを確信してしまう。9年ぶりの新作の1曲目は、期待に膨れ上がってドキドキしているリスナーに対し、落ち着くことを勧める。
 楽しくなる。しかし、音は蠱惑的でリスナーを陶酔させるのに、そうさせないものがある。
 題名曲である「Subliminal」は、始まるや早々に緊急事態のようだ。
 3曲目の「Unconscious Fragment」には常に警告音のようなものが鳴っている。まるで、戦時中であることを遠くで意識しているような。
 4曲目の「Capacity」は、メロディに緊張感がある。題名である「Capacity」とは、何を意味しているのか。何か、色んなものが溢れそうな、大変な状況を指しているのだろうか?
 『Subliminal』を聴いていると、陶酔と覚醒の狭間にいる気分になる。「寝ているな、起きるんだ」と切迫されているような。まだシングルだってのに、大傑作と断言できる。『Subliminal』は、レディオヘッドの『Kid A』に近いかもしれない。
 9年も作品を発表しなかった割に(サントラやプロデュース仕事は除く)、待たされた感は不思議とない。それは、今も『Lovebeat』が古臭くなってないからだろう。となれば、今年中に発表されるアルバムの後はまた十年くらい空白期間が続くのかもしれない。たぶんその時代の流れに耐え得る作品になるだろう。

 それにしても、現電気と元電気の2人が同時に作品を発表するなんて、狙ったのだろうか(どちらもアルバムじゃないし)? しかも、どちらもリラックスして、それでいて進化していて、深化している。また2人とも、多くを語らず、説明による意味付けを嫌う。聴いた人に任せる、という点で2人ともとっても真面目だ。
 この2枚を聴くと、砂原さんがいた頃の電気は凄かったんだなぁ、と改めて思ってしまう。あのまま巧くまとまっていたら――現在も砂原さんが脱退してなければ――世界最強のダンスミュージック・バンドになってただろうな。アンダーワールドベースメント・ジャックスも敵わないくらいの。
 そもそも考えたら、砂原さんの前作の題名である「Lovebeat」って凄い言葉だ。色んなラヴソングがある中、ビートで愛を語るってんだから。単純に気持ちを歌っているだけのラヴソングには理解できない次元だ。「愛のある、平和なビート」なんだろうか? 音に溺れてしまう、そんな愛だってあるだろう。石野さんと砂原さんがその代表だ。
 アルバムが待ち遠しい。

砂原良徳 「Subliminal」


CRUISECRUISE
(2010/08/18)
石野卓球

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テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽

tag : 石野卓球 砂原良徳

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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