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2010-06-13

『孤高のメス』は、都はるみに彩られる正当なヒーローもの

 堤真一さん主演の『孤高のメス』を観た。正直、監督の成島出さんにはロクな作品がないので(監督作なら『ラブファイト』や『ミッドナイト・イーグル』、脚本作なら『築地魚河岸三代目』や『クライマーズ・ハイ』)、最初っから期待してなかったんだけど、意外と良かった。

 物語は、正義の味方(医者)が助けに来てくれる「ヒーローもの」。
 舞台は、大学病院の権威に怯える余り、オペミスも平気で隠蔽し、スタッフみんなのやる気がない、静かに腐っていた病院。そこへ主人公・当麻が赴任してくる。
 当麻は、海外で技術を培った凄腕の外科医だったが、派閥も医療界の常識も平気で破る、規格外の医者でもあった。その凄腕と患者第一の姿勢で、次々と患者を救い、スタッフを魅了していく。腐っていた病院にも精気が戻る。
 順風満帆に進み、誰もが幸せになる医療を実現していた矢先、当麻は難手術を依頼される。日本の法律ではまだ認められていない、脳死肝移植を。それは、下手すると殺人で起訴されかねない、病院側も拒否を決め込む危険な手術だった。しかし当麻は、あっさりと承諾する。
 当麻を嫌う大学病院の保守派による妨害工作が始まり、マスコミも報道する中、ブレることのない信念を基に、当麻は日本初の脳死肝移植へ挑戦する――

 とまあ、はっきりいって、物語に新鮮味はない。主人公は正義感の塊で、正義のためには周りの多少の犠牲も厭わない。だから当然の如く、保守派から反発を受け、窮地に追い込まれる。しかし、それでも自分の信念を曲げず、負けず、最後まで毅然と戦い、勝利する。間違いなく単純な「ヒーローもの」だ。
 昨今の「ヒーローもの」は、何かやたらと主人公が悩む陰鬱な作品が多いが(代表的なのは『ダークナイト』)、昔はそうでもなかった。何で主人公が主人公なのか、その存在意義は「主人公だから」で事足りた。『孤高のメス』も同じだ。当麻は「主人公」だから、悩まず、突き進む。立ち止まることも挫折することもない。登場してから退場するまで一直線。昨今の「ヒーローもの」を見慣れてしまうと物足りないくらいに一直線。だからいってしまえば『孤高のメス』は古臭い。

 演出もまた新鮮味がなく、地味。いや、『ミッドナイト・イーグル』や『クライマーズ・ハイ』のような下手に頑張られたら台無しだけど。辺鄙な田舎が舞台となっているので、大袈裟な人間ドラマもなく、物語は淡々と進む。逆にそれが腐っていた病院が元気になるのを表現できていたので、地味で良かった。
 手術場面が多いので、つまり顔面の半分以上がマスクによって隠される場面が多いので、表情による演技がかなり制限され、それが地味さをさらに強くさせている。元々そんなに表情豊かではない堤さんが、さらに無表情になり、地味さも最高潮。
 しかし、その手術場面は原作と大きく異なっている。原作ではポール・モーリアさんの曲を手術中にかけるんだけど、映画版では都はるみさんに変更されている。血の映る手術場面に「アンコ椿は恋の花」というシュール演出。メチャクチャ緊張する場面だってのに、「ああん、あん、あ~あん」と都さんの歌声が漂い、思わず笑ってしまう。この変更は大正解。小説ならマスクで顔が隠れていても表現に関係ないけど、映像となるとそうはいかない。だから、曲で雰囲気を一変させたのは正しい。
 オペスタッフから「都はるみは古臭くて……止めてくれませんか? クラシックとか、ロックとか……」と懇願されると、当麻は「都はるみは日本の宝だぞ!?」と反論する。子供みたいに拗ねた堤さんの演技が巧い。原作よりも映画版の当麻の方が親しみが持て、好きだ。それもこれも都さんのおかげ。都さんを使おうと考えたのは偉い。凄く偉い。

 ただし、と思う点もある。
 まず、もうちょっと上映時間を短くできていれば良かった。この内容で126分は長い。100分以内にできる内容だ。出だしと最後の、「現在」の場面は余計だったので削ってほしかった。少しでも感動を与えようとして、むしろ最後は蛇足極まりない。
 また、せっかくの都さんの曲が流れるクライマックスの手術場面を、どうでもいい駄作な子供コーラスの曲に途中で替えちゃってこれまた台無し。重要な場面だからこそ全面的に都さんの曲で彩ってほしかったのに、つまらん子供コーラスで変に感動させようとしちゃって、これは大失敗。
 全体的に地味だけど、実はかなり欲深な演出だ。その欲深さが如実に現れており、途中から品がなくなり、つまらなくなる。あ~あ、やっぱ『築地魚河岸三代目』の人だなぁ、と思わされる。

 「ヒーローもの」としては最初から最後まで一直線に進むので、ややこしい教訓話なんかにゃ興味ない人には最適な物語ではある。でも、演出する側に欲深さがあるので、足を引っ張ってつまらないものにしている。もったいない。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : 孤高のメス

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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