--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2010-08-17

『告白』は、長い長い「Street Spirit」な映画

 中島哲也監督の『告白』を観た。いつも大成功しているようで大失敗している中島監督の新作だから、ワクワクしながら観に行った。
 原作は読んでおらず、内容が「女教師の子供を殺した子供を見つけるミステリー」だと思っていたら、全く違っていて驚いた。

 初っ端が女教師の告白で始まる。私の子供が殺されました、犯人はこのクラスにいる誰々です、と。いきなり犯人が発表され、エイズ・ウイルスの入った血液入りの牛乳を飲ませ、復讐が果たされる。え? いきなり物語終わったじゃん。と思いきや、物語はこっからが本題だ。
 物語は、主要人物毎に、それぞれの視点から三者三様に描かれる。別の視点では被害者だった者が、その別の視点では加害者になる。物語としてはそこが面白いところなんだろう。そして最後に本当の復讐が果たされる。ここが最高の見せ場とばかりに。
 しかし『告白』は、「朗読映画」とでもいうべき映画だ。

 喋りに喋り、喋り倒している。
 物語だけを考えれば、出だしの「告白」部分で全て終わっている。その後は多大なる蛇足。子供も大人も馬鹿ばかり、という物語。ゴシップ好きのワイドショー批判にもなっている。
 重要なのは、「朗読」でしかない物語を、どのように演出するか。その点は頑張っている。あの「朗読」な物語を魅せるものに仕立てている。が、どう頑張って好意的に見ても、『告白』は長い長いPVにしか見えん。特に、レディオヘッドの曲が使われていることもあってか、どうしても「Street Spirit」のPVを想い出す。中島監督は絶対に知っている筈だ、「Street Spirit」のPVを。正直、その真似事でしかないと思う。
 映像は美しいかもしれない。でも、『告白』程度のPVならもっと優れたものがわんさかとある。どうせ作るなら、世界中のPV監督が驚愕するくらいの――それこそスパイク・ジョーンズ監督やミシェル・ゴンドリー監督が驚くくらいの――映像美を見せてほしかった。

 残酷で馬鹿なだけの物語をPV風の映像美で魅せる――それだけの『告白』には、現実感も映像同様に間延びし、剥離している。残酷な物語を美しく撮れば撮る程、現実味は薄くなる。というか、薄くしている。凝った演出、凝ったショット、凝った照明、それら全てが現実感を遠ざけようと意図されている。中島監督には度胸がなかったのだ。本気で残酷な物語を描くだけの度胸が。
 それでもクライマックスは面白かった。犯人の少年の母親に爆弾を仕掛け、それを爆発させる場面。「ドッカーン!」と松たか子さんが間抜けなくらいに物凄く口をデカク開けて叫ぶことから始まる、一連のシークエンス。「おおーっ、よく描いたなこれを」と感心した。現実の事件として考えれば大変な出来事だけど、映画のこととして考えればギャグとなって大変に面白い。笑えたもの。しかし、その後が悪かった。つまらない話の代表に、最後に「なんちゃって」でオチを付けるものがある。よりによって『告白』はそれを最後の最後にやっている。ガックリだ。最後は、「授業をこれで終わります」という台詞で暗転させて終了、それで良かったと思うのだ。
 中島監督は、何もかも全てが残酷であるかのようには描き切れなかった。意味もなく騒ぐ生徒たち、意味もなく騒ぐ大人たち、嫌悪感を高めるためにそれらを効果的に挿入しておきながらも、最終的には完璧に嫌悪させる作品には仕立てられなかった。娯楽作としてヒットさせなきゃならないんだからそれは当然ではあるんだけど、そーゆー側面を無視して考えれば、徹底的に嫌悪感で包んだ作品も、それはそれで見事な娯楽だと思うんだ。たぶんトッド・ソロンズ監督ならもっと完璧に近付けたに違いない。

 『告白』を、出だしの「告白」部分だけで短編として作ってあればまだマシだった。2時間近くをただ綺麗な映像だけで語るのは、ちょっと単調すぎる。正直、30分は長い。不要な挿話を削って――というか、スローモーション演出を全てなくせばもっと短くなるんだけど。何であんなにスローモーションを多用したのだろうか? それ以外に魅せる方法が思いつかなかったのかもしれない。喋くり倒す映画には、シドニー・ルメット監督の『12人の怒れる男』があり、それを真似ても良かったと思うんだけど、『告白』は密室劇だけど長編の密室劇にはできない。それに、密室劇を持続させられるだけの役者がいなかったのかもしれない。『12人の怒れる男』と『告白』を比較するのは酷か。
 三者三様の実情がある、という物語構成は、黒澤明監督の『羅生門』も彷彿とさせる。凝った撮影、凝った演出という点も似ている。しかし、『告白』は『羅生門』(今から60年前の作品)の頃と比べて撮影技術が格段に進化しているにもかかわらず、作品そのものは大して進化していない印象を受けてしまう。まず演出が単調なのもあるけど、脚本に面白味が全くないのが原因。さらに突っ込んでいえば、中島監督の哲学の浅さが原因なんじゃないか? 『告白』のテーマに関して中島監督が語る考えるレベルが低いので、それが演出の全てに繋がっているのだと思う。中島監督に橋本忍さんの仕事をするのは難しいか。

 結局、徹底的に露悪的な物語を描き切れなかったため、適度なライト・ファンタジーに仕上がっている。それはそれで娯楽として楽しみ易い。しかし――と、欲をかいてしまう。たぶん、中島監督に向いていない作品だったのだ。
 たとえば、ドカンと感情が爆発するなら、サム・ライミ監督の『ダークマン』の方が演出的に過激で面白い(内容が凄くかけ離れてはいるけど)。ライミ監督の方が巧く『告白』を撮ったに違いない。またはバズ・ラーマン監督なら、もっと見事に美しく描いたに違いない。
 中島監督には、過剰さがまだ足りない。

 最後に。
 どうせだからもっとレディオヘッド寄りにしても良かったと思った。「No Surprises」なんかもピッタリなんだし。

心は埋め立てられたみたいにいっぱい
俺は平穏な生活を送るんだ
恐れることも、驚くこともない



Radiohead 「Street Spirit」


Radiohead 「No Surprises」
スポンサーサイト

テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : 告白

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

最近の記事
プルダウンリスト
プルダウンタグリスト
ブログ内検索
ブログ全記事表示

全ての記事を表示する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。