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2010-05-30

『ボックス!』は、目指した場所が頂点でない中途半端な物語

 市原隼人さん主演の『ボックス!』を観た。
 こないだ「ミュージック・ステーション」でRIZE with 隼人の「Laugh It Out」を聴いたことをきっかけに『ボックス!』の存在を知り、明らかに私が好きな類の話だったので、期待半分、不安半分で鑑賞。

 物語は、天才型のボクサーであるカブと、努力型のボクサーであるユウキ、この2人の男子高校生を中心にした、夢と挫折と栄光の物語。努力を知らない天才が努力の凡才に負け、挫折するが、復活してハッピーエンド。典型も典型、ど典型の少年漫画的スポ根物語。要するに、はっきりいって、松本大洋さんの『ピンポン』。しかも、劣化版ですわ。
 この手の「少年漫画的スポ根もの」は、主人公の天才ぶりと、挫折と復活の3点に最も強い明かりを当てる。なので描き方としては、主人公がいかに天才かを序盤で描き、観客をその輝きで魅了してから、挫折のどん底に叩き落し、そしてそこから這い上がる主人公のさらなる輝きで感動させるわけだ。実際、『ボックス!』もそう展開する。
 カブの天才ぶりは序盤で描かれる。しかし、カブは天才なだけで努力をしないから輝きが鈍い。そこで挫折させ、自己を見つめ直すきっかけを与え、復活させることで真の輝きを引き出す。が、『ボックス!』は、そこに無駄があって感動が台無しになっている。
 展開が「挫折→復活」の典型なのは悪くないんだけど、なぜかその展開を2度繰り返すのだ。長期間の連続ドラマならそれもいいだろうけど、約2時間の映画で「挫折→復活」を2度繰り返すのは無駄でしかない。斬新さに「ええーっ! また負けるのぉ!?」と驚いてしまった(1回目は稲村、2回目はユウキ)。この手の「努力せずして強い天才の主人公の物語」が面白いのは、挫折した後に真の強さを掴み取るから良いのに、2度も負けたら「あれ? 実は口ばっかで本当は弱いんじゃない?」と疑いを抱いてしまう。『ボックス!』が正にそうで、2度目の「復活」にはインパクトが弱く、後半の展開はもうどうでも良かった。

 登場人物全員の存在感が薄いのも悪い。何でカブがボクシングをやってるのかわからないし、勉強の成績優秀なユウキが何でボクシングをやろうとするのかわからないし、丸野が何でマネージャーをしたいのかもわからないし、ボクシング部の先輩が弱いくせに何でボクシングが大好きなのかもわからないし、とにかく何から何まで存在感と存在価値がない。
 まず、衝撃的な筈のカブの初登場場面がとんでもなく駄目な演出で台無し。ユウキと女性教諭の耀子がチンピラに絡まれているのをカブが颯爽と助けるその場面は、照明が明滅する電車の中で描かれるんだけど、明滅のせいで、ただ単に見辛い。いかにカブが強くて魅力的か、それを初っ端から観客に刷り込ませる必要があるってのに、明滅でフラッシュ効果を出すわけでもなく、はっきり見せないという驚きの馬鹿演出。
 そもそも根本的な大問題として、肝心要であるボクシング場面が全く魅力的に描かれていない。『ボックス!』はボクシングを軸として展開する青春物語である以上、ボクシング場面が最大級に面白くなければ全ての展開に価値がなくなってしまう。それが「登場人物全員の存在感が薄い」ということ。丸野にしてもユウキにしても、行動のきっかけがカブのボクシング姿の美しさなんだけど、演出が駄目なために「あれのどこに惹かれるの?」としか思えない。
 しかしもっと根本的には、物語がちっとも面白くないってことが問題だ。たとえば、物語を盛り上げるためだけに、丸野を病死させる悪趣味さ。挫折して堕落したカブに自己嫌悪の悔し涙を流させ、奮起を後押しさせるために、丸野は病死“させられる”。「物語を盛り上げるために死ぬ展開のある感動物語」が私は大っ嫌いだ。丸野が死ぬ必要ちっともないし、そもそも丸野が心臓病を患っている病弱な設定だって必要ない。映画版では丸野の存在を丸ごと削る脚色をしても良かったと思うくらいだ。百歩譲って物語的に必要なのだとしても、カブのボクシング姿が魅力的でないため、病気を押してまでマネージャーをやる意義が見えず、いきなり丸野が脈絡なく病死した感じしかしない。ついでにいうと、丸野を演じる谷村美月さんが病弱に見えないのも大問題。いないだろ、あんなにふっくらとした病弱キャラって。
 敵役として重要な稲村が変人にしか描かれていないのも盛り上がらない原因。原作も同じなのかね? 都合良く使われているだけのライバル役。結局、よくわかんないままカブに負けるし。顧問に嫌々なる耀子に至っては、本当に何のために存在しているのかさっぱりわからない。最終的にボクシングが好きになったのかどうかもよくわからない描き方。あれじゃ単なる嫌味な教師だよ。

 とにかく『ボックス!』は、約2時間の中での脚色(取捨選択)を間違えてしまい、大失敗している。カブの挫折は1度だけにすべきだった。そこで削れた時間で、もっと丸野の魅力を描くべきだった。丸野を病死させるのなら、少なくともユウキと同程度に丸野の描写を増やさないと意味がない。そうしていないから、『ボックス!』の展開は何もかもがおざなりテキトー極まりない。2度も負けるからテンポが悪く、結果的に上映時間が水増しされている。登場人物がテンポを悪くしているのもある。物語に何の貢献もしない耀子や丸野が登場する度にテンポが悪くなる。
 演出が悪いのもある。とにかくカブの初登場場面は駄目すぎだし、ボクシング場面が魅力的に見えない。殴り合いを魅力的に見せられていない時点で大失敗でしょ。ボクシング場面を魅力的に演出できないなら、その他のドラマで頑張ればいいんだけど、脚色が駄目だから、何もかもが駄目。ボクシング場面以外の場面はとってもセット(作り物)じみた撮り方になっていて、ボクシング場面こそが活き活きと演出されてはいるんだけど、肝心なところで止めの画にしたり、意味がわからん。丸野が「死んだら天使になってカブを見守る」といったのなら、最後の稲村との闘いでは丸野を天使として映すとか、それくらい恥ずかしい大袈裟な演出があっても良かったのに。
 最も呆れたのは、最後。「稲村を倒したか!?」と思うところで、暗転。いきなり後日談に切り替わり、思い出として稲村を倒した場面が描かれる。何あのテンポの悪い演出? さらにその後日談に愕然。カブはボクシングを辞め、お好み焼き屋を始めましたとさ。って何そのショボい結末ーっ!? 結局、『ボックス!』は何を描こうとした作品なんだ? あの結末じゃ、それがちっとも見えんわ。才能を巡る物語なのか、ただの青春ものなのか。

 市原さんも高良健吾さんも相当に訓練したんだろう、と感心するボクサーぶりで良かった。そこは予想以上に素晴らしく、本当に「おおーっ!」と感心した。でも、何度も繰り返すけど、演出や脚本が悪いから、「光り輝いて見える」ことはなかった。もったいないなぁ。
 原作は読んでいないから原作の評価はできないけど、映画版に限っていえば、はっきりって『ピンポン』以下。『ピンポン』も出来の悪い映画ではあったけど、「才能」というテーマがブレていない物語であるため、中途半端に恋愛要素まで入れてしまった『ボックス!』よりは遥かに面白い。無論、北野武監督の『キッズ・リターン』とは比較にもならないね。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : ボックス!

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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