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2010-05-25

『シャッター・アイランド』は、お子様向け超不親切映画

 マーティン・スコセッシ監督の『シャッター・アイランド』を観た。予告編からして脳がどーとか錯覚がどーとか騙す気満々のミステリーであることを強調していたので、物凄く期待していたんだけど、同時に不安でもあった。レオナルド・ディカプリオさんとスコセッシ監督の組み合わせで良作が未だにないから。

 物語は騙す気満々の「結末は決して口外しないで下さい」系なんだけど、実はちっとも大したことない。
 精神を病んだ犯罪者ばかりを収容する、孤島にある刑務所から1人の女囚が姿を消した。その捜査をするために連邦捜査官のテディが刑務所を訪れるんだけど、捜査をしてみれば謎だらけ。そもそもテディは、妻を殺した放火魔がこの刑務所にいると知り、捜査を買って出たのだった。が、それも謎だらけ。つーか、物語の進行がとてもギクシャクしてる。それもその筈、実はただ単にテディ自身が精神を病んでおり、妻を殺したのテディ自身で、映画の大半が現実逃避の妄想でしたとさ。ちゃんちゃん。
 全力でネタバレをしちゃったけど、別にいいのだ。ネタバレしたからって何一つ価値は下がらないし、そもそも価値なんてちっともない。古今東西に溢れている「夢オチもの」でしかなく、最後には驚きよりもガッカリな落胆しか残らない。

 この手の「夢オチもの」は、どうしても演出が似通っている。ヒットしたわかり易いところで、『シックス・センス』や『ジェイコブス・ラダー』や『エンゼル・ハート』か。幻覚の場面を細かく挟み、怪しい雰囲気を出す。あと、「夢オチもの」はミステリーとして作られる以上、主人公が精神的に病んでいることが多いので、どうしても暗いじっとりした感じになる。
 主人公の精神が病んでいる「夢オチもの」である以上、物語の核には必ず悲しい出来事や陰惨な出来事が絡む。最後の最後にそれが解き明かされ、観客はその真実に驚き、感動したりする。同時に、謎とヒントを小出しにして、最後まで引っ張るだけ引っ張って「夢オチかよ!」となるんだから、呆れもする。夢オチのための謎であり物語であることが多いから。この手の「夢オチもの」で心底面白いと思えたのは、ロベール・アンリコ監督の『ふくろうの河』だ。何十年も昔の短編だけど、短編ならではの瞬発力が良い。未だに『ふくろうの河』を超える作品はない。
 夢を扱う怖い話に筒井康隆さんの「」という短編がある。ジークムント・フロイトカール・ユングさんなんかをよく租借した上での夢の恐怖譚で、筒井さんの凄さが軽く理解できる傑作。知りたくない記憶に触れるという意味では『シャッター・アイランド』も似ているんだけど、『シャッター・アイランド』に決定的に足りないのは、その禁忌となっている記憶の描写。思い出したくもない記憶を巡る物語である以上、ミステリー要素は当然としても、恐怖の描写がもっと強くないといけない。テディの触れたくない記憶は、悲しみから封印され、その封印を解くことが恐怖となるんだから、核となる記憶に近付くことを徹底的に嫌がらなきゃならないのに、全くそーゆー感じじゃない。

 ロボトミーがどーとか描いているけど、結局は思い出したくもない記憶を巡る物語なのに、その「思い出したくもない」恐怖が演出されていない。ありふれた幻想場面を挟む程度で、それも「あー、これが何かヒントなのね」くらいの価値しかなく、見ているだけで悲痛な気持ちを抱くようなものではない。デニス・ルヘインさんの原作は読んでいないので原作の評価はできないけど、スコセッシ監督の演出は駄目も駄目駄目、大駄目だ。
 とにかく映像が酷い。物凄く酷い。代表的な場面を挙げると、暗い牢屋の通路をテディがマッチを灯して恐る恐る進む場面。マッチの灯り程度は不要なくらいに明るいですから! どんだけ鳥目なんじゃい! 暗いとディカプリオさんの顔が映らないからか? 雰囲気だけで、いかに画面に気を配ってないかがわかる台無し場面。スコセッシ監督って、あんなにも下手クソな監督だったっけ?
 また、ディカプリオさんの演技も酷い。ずーっと眉間に皺寄せたしかめっ面ばっか(つか、最近は他の作品でも同じだけど)。神妙な表情となるとしかめっ面。ベン・キングズレーさんはさすがの名演なのに、主演のディカプリオさんと来たら、自己主張が強いだけの三文芝居。ディカプリオさんはもっと巧かった筈なのに。
 あと、音楽。うるさいよ。全編に意味もなく神妙で重々しい音楽を流してて、場面を盛り上げるどころか、邪魔。出だしから音楽で緊張感を煽りまくり。まあ、確かに出だしから物語はひっかけに入っているわけだから、間違ってはいないのかもしれないけど……
 テディの最後の台詞は、何もかもを悟った上での、意味をどうとでも理解でる台詞で、意味深というよりは姑息なありふれた手法。最後の台詞が衝撃的という意味で似たような『母なる証明』も映画としてはどうかと思うけど、そっちの方が遥かに衝撃的だ。『ミスティック・リバー』のルヘインさん原作であるから、本当は喪失と後悔の悲痛な物語だろうに、演出が何もかも全て台無しにしている。

 結局、脳がどーとか錯覚がどーとか、やたらと仰々しく強調された予告編からしてアホだったわけだ。脳? 錯覚? 確かに映画の内容は精神を病んだ主人公の話だから、それも納得できる。しかし、わざわざ本編開始直前までしつこくそれを繰り返すのはウザい。配給会社の宣伝担当は馬鹿なんじゃないか?
 あと、何が最悪かって、超吹き替え版とやらもあるそうだけど、そんなどうでもいいことに金を使う余裕があるのなら、エンドクレジットに流れているダイナ・ワシントンさんの「This Bitter Earth」の歌詞を字幕にしろよ! あの歌でもって映画は完成されるってのに、その最後のピースを字幕も付けずにただ流しているだけ。配給会社は馬鹿だ! あの歌詞を理解できるのとできないのとでは余韻が全く異なるんだよ! 下手すりゃ映画の価値そのものが変わるんだよ!!
 予告編といい、上映前の余計なお世話といい、超吹き替え版といい、配給会社は親切に映画の理解の手助けをしているきかもしれないけど、逆で、配給会社が全力で足を引っ張って作品の価値を最大限に下げている。そういう意味で、とっても可哀相な映画だ。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : シャッター・アイランド

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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