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2009-09-20

偉大なる奴ら

 遂に始まったカナザワ映画祭、早速初日に観たのは2本。『メトロポリス』(伴奏付)と、野外上映された謎の覆面映画だ。

 『メトロポリス』は、今さら何の説明も必要ない超有名なSFでありプロパガンダ映画だ。約80年前の映画とは思えないくらい美しい画面で、一言で表すなら、モダンな映画。もちろん画質は悪いんだけど、何というか、明治時代から残っている赤レンガの洋風建築物(石川県立歴史博物館を想定)のような趣きで、時代がどれだけ経っても絶対に色褪せない魅力がある。後々に与えた影響は数知れず、未だに真似をするものが後を絶たない(SABU監督版の『蟹工船』もそうだろうなぁ)。
 バージョンがいくつかあり、どれが決定版か未だによくわからない。個人的にはジェフ・ミルズさんが伴奏曲を作ったバージョンが面白くて好きなんだけど、あまりにクールすぎるし、機械都市が強調されすぎてロマンス部分が異様に浮いてしまっていたから普及版にはならんだろう(つーか、ミルズ版のサントラはソフト化されているけど、ミルズ版の伴奏曲があたっている肝心の映像本編がソフト化されていないし)。ので、今回の生演奏による伴奏付き上映は、ミルズさんのを除けば初体験で(あれは生演奏とはいい難いような気がする)、もしかしたら記憶に残る決定版となるかもしれない。
 で、実際に鑑賞した感想は……とても良かった。んだけど、とっても良かったんだけど、決定版にはならず。曲は良かったし、演奏も良かったし、音量も良かったんだけど、『メトロポリス』にしては、ちょぉ~とセンチメンタルすぎだと思った。たった3人で、アコーディオンとコントラバスとピアノを主な楽器にしているのが要因かもしれない。ただし、個人的にはジョルジォ・モロダーさんのディスコなバージョンよりも良かった。
 でも、演奏を見たり画面を見たりと、いつもと違う楽しみ方ができて、これぞ「映画を体験する」だと思い、結果的には大変楽しませていただきました。お陰さまで、帰宅して山村聡監督版『蟹工船』を観てしまったよ。『メトロポリス』に駄目な点があるとしたら、物語が安易な娯楽向けになってしまっているところだ。

 お次。
 野外上映なので場所を中央公園に移し、設営された舞台上に、カナザワ映画祭の小野寺代表が登場し、覆面上映作品の紹介をする。「今の日本は、優れたリーダーや、カリスマ性などが求められている。それがどのようなものか描かれた映画」らしい。
 風がビュービューと吹き荒ぶ中(雨降るかと思った)、スクリーンに映し出されたのは、「金日成」という文字。確かに、嘘はいってない!
 
 お楽しみの覆面上映は、まさかまさかの『金日成のパレード』(だったと思う。ちゃんと題名を見ていなかったので)! 一部では有名な爆笑ドキュメンタリー&プロパガンダ映画(またプロパガンダ!) ナレーションが佐藤慶さんのため、日本が撮ったものか、または北朝鮮が撮ったものかと思うが、ポーランドの映画だ。
 ポーランドといえば、アンジェイ・ワイダ監督にロマン・ポランスキー監督が有名だ(それ以外知らないけど。あ、スタニスワフ・レムさんがいた)。そのポーランドが撮ったドキュメンタリーなんだけど、実質的には北朝鮮のお国自慢映像満載なだけの変な映画。存在は知っていたけど(DVDが普通に販売している)、観たのは初めて。
 内容は、建国40周年記念式典をずーっと映しているだけ。合間合間にお国自慢と「偉大なる首領様」をマンセーする映像が挿入される。
 圧倒されるのは、式典でのマスゲームの完成度だ。特に凄いのが、観客席でのパネルを使ったディスプレイ。動きの綺麗さ、緻密さ、正確さが機械仕掛けのようで、遠くから見ると人力とは思えず、電光表示レベルオルブライト元国務長官が絶賛したのも納得してしまうね。たとえ奴隷をこき使ったものだとしても、素晴らしいことに変わりはない。マンセー!
 次に凄いのが、登場する人物が皆揃って「偉大なる首領様」と必ず最初にいうこと。上映時間1時間半くらいの間に200回近く聞いた。いわなきゃ大変な目に遭わされるからなんだろうけど、余りにも連呼されて、逆に面白くなってきて、「偉大なる首領様」といわれる度に笑ってしまった。佐藤さんのナレーションが冷静な感じで笑いを誘う。ちなみに呼称の順列は、
 ①偉大なる&敬愛する
 ②親愛なる
 ③尊敬する
となっており、金日成は①、金正日が②、その次くらいに偉いのが③でいわれていた。ためになるな、マンセーマンセー!
 とにかく「偉大なる首領様」自慢が素晴らしすぎる。一流ホテル(?)の従業員は、「偉大なる首領様」がベッドの置き方まで指導してくれたことに大感激。「偉大なる首領様」は、ベッドを窓際に置くと隙間風が当たって宿泊客に悪い、とご心配なさる大変に心優しいお方らしい。っておい、一流ホテルなのに隙間風が入るのかよ!? セコいな! でも、マンセーマンセーマンセー!
 「偉大なる首領様」はトウモロコシの種まきから、足腰の弱ったおばあちゃんの面倒から、最先端科学研究所の機器の修理から、全世界の人民の太陽のような存在になることまで何でもこなす。北朝鮮人にとって全知全能の神に等しい存在なのだ。ポスターや壁画になる際は、実物の数百倍は美化して描かれる。ずんぐりむっくりな体型なのに、『週刊少年ジャンプ』の漫画の主人公のように描かれる。マンセーマンセーマンセーマンセー!
 セコいといえば、アメリカ領に対して「アメリカの奴ら」と言い捨ててたのには爆笑してしまった。佐藤さんの冷静なナレーションがそこでも威力を発揮していた。
 そうかと思えば、小学生くらいの子供たちが拳銃の扱いを学校で教わっていたりする。とても巧い。幼稚園児でも「偉大なる首領様」の生家がどこにあるのか詳細をそらんじることができる。子供たちのために、山登りができるように、山を切り崩し、あまつさえ山肌にでっかく文字を刻む。環境破壊なんて「偉大なる首領様」にとってはどうでもいいことだ。マーンセーッ!
 しかし、ひたすら続く「偉大なる首領様」マンセー映像の中で最も印象に残ったのは、そんな派手な場面でなく、マスゲームの行進をしている最中に一瞬だけ映る、脱げた靴のショットだ。女性ものの白い靴の片方だけが、道端に脱ぎ捨てられていた。たぶん、行進中に脱げたんだろうけど、はき直す余裕がないから、捨て去ったんだろう。その女性は裸足で行進したのだ。華やかで、豊かで、幸せそうな映像が溢れているのに、脱げた靴をはき直すこともできない緊迫感が一瞬のショットに隠しようもなく映っている。
 アンジェイ・ワイダ監督は、本作を「ホラー映画だ」と評したという。なるほどねぇ。新興宗教のヤバさを見ているようでもあった。

 さて、初日に2作品を観て思ったことは、3千円も出して観た『メトロポリス』よりも無料の『金日成のパレード』の方がインパクトありすぎて、『メトロポリス』のメロディをすっかり忘れてしまった脱力感の面白さだ。貧乏人としては、何がなんとしても『メトロポリス』の価値を上げたいところなんだけど……どんなメロディだったか殆ど思い出せない! 「偉大なる首領様」という言葉と、「マンセーマンセーマンセー!」しか思い出せない! これも北朝鮮に洗脳されたことになるのか!? 『金日成のパレード』を選ぶカナザワ映画祭、さすがだ!
 どうでもいいけど、警察機関のすぐそば(交番がある)で「マンセーマンセーマンセー!」と絶叫している映画を上映しているシチュエーションが大変に面白かった。これもまた「映画を体験する」ですな。
 あと、野外上映では、カナザワ映画祭のスポンサーである株式会社まつやの「とり野菜みそ」がアンケートを提出した人から抽選か早い者勝ちで当たる予定だったんだけど、上映が終わってみたら途中退場した人が半分もいて(寒かったのか、面白くなかったのか。子連れの家族は皆、早々に退場していった。まあ、子供にすりゃ面白くないわな)、もれなく「とり野菜みそ」を貰うことができた。何か悪いので、千円募金した。
 帰宅時にスーパーに寄って、白菜と鶏肉を買って、早速とり野菜鍋を作った。まつやの「とり野菜みそ」美味し! カナザワ映画祭開催者の皆様、ありがとうございました。鍋を食べながら、今後は他人を呼称する際に「偉大なる~」と付けてみよう、と決意。

 2日目は、『フィツカラルド』、『地獄の黙示録』、『宇宙戦争』を観るつもり。期待感で爆発しそうな爆音上映の『宇宙戦争』だ! あ、初日に『2001年宇宙の旅』を観るの忘れた。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : カナザワ映画祭

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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