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2009-10-12

『しんぼる』は、観ていて辛くなる

 松本人志監督の『しんぼる』を観た。前作『大日本人』同様にとってもとぉ~っても微妙な映画だった。
 真っ白な部屋に閉じ込められた何者とも知れぬ男が、状況を考えることなくウロウロとし、やがて脱出することに思い至り、新たなる何者かへと進化する、という物語。要は、映画『CUBE』を知的ギャグにした感じ。真っ白な部屋の壁中にある小便小僧のチンコや、対照的にカラフルな主人公の水玉模様パジャマなど、パッと見の映像の威力は『大日本人』よりも確実に強く、そこは松本監督も色々と考えたんだろうな、と思う。しかし、それだけで勝負できるのは映画の2割程度で、その2割は成功している。グッズの、キティちゃんとのコラボ商品とか、巧いなぁ、と思った。が、残り8割はほぼ失敗している

 まず、物語。どこかに閉じ込められてる話や記憶がない主人公の話や箱庭世界の話は、SFと幻想文学に古今東西たくさんあり、松本さん程度じゃ絶対に超えられない傑作も当然の如くある。箱庭的な映画なら最もわかり易いのはジム・キャリーさん主演の『トゥルーマン・ショー』か。ただ、『しんぼる』には物語らしい物語がないので、発想的に最も近いのはトマス・M・ディッシュさんの短編小説「リスの檻」だろうか。吾妻ひでおさんの『不条理日記』にも使われていた超有名な作品。で、そのような前例がある以上、松本さんはとんでもなく高いハードルを自分に課したことを自覚していると思うのだけれども、自覚が足りない上にハードルが高すぎたようで、お世辞にも成功しているとはいえない。
 松本さんによる主演の演技も、かなり駄目。TVの小さな画面ならいいけど、映画館の大画面で見るものじゃない。
 演出は、『大日本人』よりも巧くなっている。特にメキシコ篇の演出は、想像以上に良い。びっくりした。が、あの程度の演出ができる監督なんて掃いて捨てるほどいるので、即ち「松っちゃんすげー」とはならない。『大日本人』に比べて「ちょっとマシになったね」程度。
 演出で悪い部分は、ギャグ。全く面白くない。あのね、予想つくわけですよ、オチが。TVのバラエティー番組ならあれもありだけど、映画ではなしでしょ。醤油とか、オナラとか、6巻とか、むしろウザい。コメディ映画としては、致命的に面白くない。センスが古い。そして、致命的に言葉的なのだ。

 松本監督は『しんぼる』を「無声劇」と称しているけど、それならもっと映像で面白さを追求すべきなのに、全てがあまりにも言葉で表現できてしまっている。『しんぼる』には脚本といえるものがないんだけど、その代わりに生まれてしまったのは、箇条書きっぽい映画
 たとえばジャッキー・チェンさんの映画によるアクション場面(格闘場面だけでなく、身体を存分に活用したアクロバティック場面)は、言葉で面白さを表現できない。『プロジェクトA』の脚本に「十メートル以上の高さのある時計塔から落下し、『地球には間違いなく引力がある』とぼやく」と書かれていたとして、それは文章だけでも面白いかもしれないけど、実際に作られた映像はその何万倍も凄いし面白い。
 TVは、生まれた時から声があった。映画には、声がなかった。今さらどうでもいいことかもしれないけど、TVと映画の出自には、そんな微妙というには大きすぎる違いがある。「映画を知っている」ということは、それをわかっていることだと思うけど、松本監督はわかっていない。だから、どれだけ「無声劇」を作ったとしても、映画にはならない。
 オチをいちいち叫ばなくてもわかるんですよ、ギャグであることくらいは。拡声器で声を大にして叫んでも、面白くはならんのだよ。また、脱出方法を思いつく度に漫画風の演出を挿入するのも邪魔。そんな演出しなくても観客は馬鹿じゃないんだから、見てればわかるっつーの。何で言葉で説明するかなぁ? 観客を馬鹿にしすぎている。松本さんは映画批評をしていたのに、全くその批評眼が役立ってない。
 ギャグを生かすには下地が必要だ。『しんぼる』でのギャグには下地がない。まず、主人公が何者であるか――人間なのかそうでないのか――が不明なので、ギャグに信憑性がない。「ギャグに信憑性が必要か?」といわれそうだけど、そのわかり易い例には、たとえば『ドラゴンボール』がある。最初の頃の孫悟空は、拳銃で撃たれて身体に穴が空いても痛がるだけで死ななかったのに(『Dr.スランプ』の延長の世界設定だったから)、途中から死ぬようになってしまった(物語の質が変化したから)。その変化の分岐点でギャグの信憑性が大きく変化している。
 『しんぼる』の主人公は、人間なのかそうでないのか。人間なら、排泄はどうするのか? 食べ物も重要だけど(それこそ醤油なんかよりも)、飲み物はどうなっているのか? そーゆー部分をすっ飛ばしているから、全くギャグが活きてない。何でもありの世界観だとするなら、醤油が欲しいのにお寿司ばかりが飛び出てくるシークエンスは、食べ続けた末に喉が詰まり、「飲み物飲み物ー!」とスイッチを押しまくって苦労した末に飲み物が出てきて、ホッと一安心したら尿意をもよおして、「便器便器」とスイッチを押しまくって苦労した末に便器が出てきて、小便を出したらなぜかそれが醤油で驚いた、とかにすべきでしょ? 「床に落ちたお寿司まで食べるのはマナー的にも衛生的にもどうなんだろう?」という疑問もさることながら、数分間も食べる場面を映して引っ張る割にオチの出来が悪いし、何よりもテンポが悪い。
 しかしそれより何より問題なのは、『しんぼる』はTVで作られていても全然面白くないってことだ。

 何かスイッチを押したら予想外の事態が発生する――それはたとえばドリフのコントなんかでも散々繰り返された古典的なものだ。「予想外」はしかし、本格的に「想像外」であってはならない。ある程度は想像ができる「想像外」でないと視聴者は面白がれないからだ。その点で松本さんのコントはドリフよりも進化していて(現代的になっていて)面白い。が、その進化は、どこかの時点で止まってしまったようだ。
 『しんぼる』で最も困ったことは、「問題解決」の手続きが観客には容易にわかってしまうこと。オチが明確に提示されているのに全く話が進展しない、駄目なミステリーだ。展開として、部屋にたくさん散らばった色んな物を使っていかに出口の扉を開けるかが中盤の肝になっているんだけど、主人公はチンパンジー程度の低知能ぶりで試行錯誤を繰り返す。観客の殆どは、1分とかからずに「あれとあれを使えばいいのに……」と思いつき、イライラする。結果的にはその予想とは異なる手段で解決したりするんだけど、無駄が多すぎる。『しんぼる』が、「物凄い馬鹿が少しは頭が良くなる」を基本としているのなら納得の展開だけど、それならもっとベン・スティラーさんやアダム・サンドラーさんみたいに演じろといいたい。主人公がちっとも馬鹿に見えないのに、結果だけは馬鹿になっているんだもの。
 短時間のコントなら『しんぼる』みたいなものでもいいかもしれないけど、長時間の映画でやるなら、主人公は効率的に解答を見つける必要がある。そして、その上で、展開を盛り上げるために、観客の想像を超える無理難題を登場させなきゃいけない。でなければ盛り上がらない。『しんぼる』には、その部分が完全に欠けている。脚本がないことを「既存の映画」と異なるみたいにいってるけど、それって「既存の映画批判は受け付けませんよ」という逃げにしか聞こえないんだよなぁ。推敲に推敲を重ねた脚本がないから、箇条書きの映画だから、面白くないんだよ。つまり、『しんぼる』はとっても非効率的なんだよ。『しんぼる』の何が悪い、と訊かれたら、そう答えるだけでいい。非効率的だから、観ているのが辛くなる。

 効率の悪さは、メキシコ編にも表れている。本筋と全く関係なく展開しているけど、最終的に本筋と重なることは観客も予想していて、当然の如くその予想通りの展開になるんだけど、長々と引っ張ったくせにこれまた面白くない。というか、いらんだろメキシコ編。
 メキシコ編が終わると、展開は本筋のみになるんだけど、そこからは進化編となる。いわば『2001年宇宙の旅』のスターゲート状態。このスターゲートっぽい場面の酷いこと酷いこと。一言でいえば、ダサい。CGが安っぽすぎるし、4つ打ちのテクノ風BGMも安っぽいし、演出も安っぽい。この場面が最も辛かった。全ての要素が酷いんだから。この場面こそ漫画風に演出すべきだった。そしてそのまま二次元キャラとなった主人公が最後のスイッチを押すと、画面が(TV画面の)別番組に切り替わって(しかも早朝のカラーバー画面になって)終わる、とか。わざと安っぽさを強調とした『大日本人』と比べて明らかに失敗しているよ。 
 
 松本監督は、もっと面白いものを作れたんじゃないかなぁ。駄目な原因は、映画をよく理解していないのと、圧倒的に知識不足。あと、ちゃんと脚本を作らなかったこと。
 「リスの檻」として考えるなら、『しんぼる』は外部批評になる。松本人志を主体とした、外部のリアクションに対する批評的物語だ。つまり、単なる自己満足映画だ。それが物凄く面白いならいいんだけど、観るのが辛いような自己満足映画はオナニー映画と呼ばれてもしかたないだろう。松本さんが映画批評で貶すタイプの映画になっている。
 観ていてムカつくような映画でないし、「金返せ!」と激怒するような映画でもないけど、早く終われ~早く終われ~と願い続けた、非常に観続けるのが辛い映画だった。だってさぁ、チンパンジーが天井から吊るされたバナナを取るまでの試行錯誤を延々と見せる映画にすぎないんだもん。そんなの、面白いわけないよ。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : しんぼる

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初めてオナニーに使った二次元キャラおしえて

1 :番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2013/02/23(土) 22:14:06.90 ID:k1VALroN0 ?2BP(1000)アライブ連載のド田舎コメディ「のんのんびより」アニメ化http://natalie.mu/comic/news/85405

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うだばばばあwww


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俺の貯金イミネェわはははww

No title

お前のがつまらん。

アカシックレコードさんへ

読んで頂き、ありがとうございます。
「お前のがつまらん」とのことですが、まあ、自覚はあります。はい。申し訳ありません。何とか面白くなるように心がけているのですが、なかなか難しく……そのくせ主張したがりなもので。

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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