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2009-06-18

『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』は犬で浮浪者を撲殺する映画

 木村拓哉さんジョシュ・ハートネットさんイ・ビョンホンさん主演の『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』を観た。絶対に『レイン・フォール』や『バンコック・デンジャラス』に匹敵する駄作と予想していたら、その予想を大きく上回る変な映画だった。あそこまで変な映画は久しぶりに観たぞ。

 物語は単純。人生落伍者の探偵が、事件を追ううちに自らの傷を癒すという、よくある探偵ものだ。
 ハートネットさん演じる探偵のクラインが、とある大富豪から、行方不明になっている息子のシタオの捜索依頼を受けるのが物語の始まり。シタオを演じるのが木村さんだ。クラインは、シタオがいると報告された香港へ行く。そこには、ビョンホンさん演じるマフィアのボスのドンポがいた。奇しくも、ドンポも別の理由からシタオを探すことになる。探偵とマフィア、そして謎の行方不明青年、全く関連する筈のない3人の運命が交差する時、人間の想像を超えた奇跡が現れる。
 と、一応はちゃんと物語があるんだけど、実際は、物語はないも同然。物語の進行を追いかけるのが馬鹿らしくなるくらい、メッチャクチャなんだもの。
 それに、本当なら物凄くありふれた単純な物語だったのに、癒し映画になりえたのに、何を間違えたか連続猟奇殺人鬼をそこに混ぜちゃったもんだから、異常な映画になってしまっている。

 『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』の観客の多くは女性だから(実際、私が観た時は、平日のモーニング・ショーだったのに、座席の半分近くを埋める観客数で、私を除いてみんな女性だった)、もっぱらアメリカとアジアのイケメン見たさの人ばかりだろうに、「あ~、ビョンホン、カッコイイわねぇ~」とウットリしたかったろうに、その期待は裏切られるどころか、想像もしえないとんでもないもの見せられて唖然とする羽目に。
 登場する連続猟奇殺人鬼というのが、よりにもよって殺した遺体をバラして――食べたりして――“芸術品”を作る、極悪非道な上にアーティスト気取りのキチガイだ。こいつはイケメンじゃない。
 連続猟奇殺人鬼の造る芸術品、ぱっと見てすぐにわかるけど、フランシス・ベーコンさんの絵画そのもの。気になったのでパンフレットを購入してみたけど、映画評論家による解説にも監督のインタビューにもベーコンさんの名前が出てこない。監督が意図的に作ったのは間違いないのに、解説を執筆した映画評論家は知らないのかもしれない。
 ベーコンさんの絵画を知らない人のために、参考をば。
bacon
 正にこれ。これが登場するのだ。「ベーコンさんのパクりだ!」と批判したいわけじゃない。ベーコンさんに影響された映画なんてたくさんあるし。代表的なのは、デヴィット・リンチ監督の作品。たとえば『ワイルド・アット・ハート』に登場するウィレム・デフォーさんの「歯ぐき」。他にも、エイドリアン・ライン監督の『ジェイコブス・ラダー』の悪夢の演出とか。ただしそれらは、影響下にあるだけで、ベーコンさんの絵画そのままってわけじゃなかった。しかし、『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』に登場する“芸術品”は、ベーコンさんの絵画そのままを立体造形したものだった。
 何であんな“芸術品”を登場させたのか、正直よくわからん。まあ、『羊たちの沈黙』みたいにエド・ゲインさんがモチーフになっているのは間違いないと思うけど、それをそのまま使うには使い古されているから駄目だと思い、ちょっと別の路線で頑張ろうと思った結果が、ベーコンさんだったんだろう。狙いはいいんだけど、何もイケメン好みの映画でそれをやる必要はなかったんじゃないの?
 また、せっかくの“芸術品”の出来がキレイすぎてイマイチだったし、映し方にフェチっぽさがなくて色気がなかった。ベーコンさんは知っての通りゲイだったので、フェチ要素は重要だ。『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』の主役3人はやたらと半裸になるから、もしかしてゲイ要素が多いのかと思いきや、そうでもない。フェチっぽい場面はたくさんあるけれど、なーんか“薄い”。せっかくのショッキングで度肝を抜くような“芸術品”が、素っ気なく撮られている。もったいないなぁ。

 イケメンが見たかっただけの、どんな映画か全く知らずに観た女性客は、怒るかもしれないし、今観た映画は何だったのか悩むかもしれないし、ただただ唖然とするだけかもしれない。少なくとも、「あー、面白かった!」なんて言葉は絶対に出ないだろう。ましてや癒されることなんてありえない。だってさぁ、犬を射殺して、その犬をぶん回しながら浮浪者を滅多打ちにするような場面のある映画なんだよ?
 しかも、時系列を説明らしい説明なしにごっちゃにしてる上に、今じゃ殆ど見られないオーバーラップ編集を多用してるから、何が何だかわからない。深読みできるような映画に見えるけど、解釈するだけ無駄。物語をキレイに整理整頓してみても、何かが抜けていて、何かが余分なんだもの。普通に作れば普通の映画でしかないものを、わざわざわかり難く編集しているだけ。そこを一生懸命に解釈しようとすることは無駄でしかない。
 そんな点からも、とってもデヴィット・リンチ監督っぽいと思えた。特に、オーバーラップの使い方が。明らかにリンチ監督を意識しているとしか思えない。音楽の使い方まで似ている。レディオヘッドの曲が何曲か使われているけど、わざと怪しい使い方している。レディオヘッドは『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』を観たのだろうか? 観たとしたらどう感じたろうか。

 例えば黒沢清監督や、ツァイ・ミンリャン監督と仲良くなれるような映画かもしれないけど、そうでもない。自意識だけが前面に出すぎている。
 しかし、映画の出来が悪いというわけでもない。困ったことに、素晴らしいショットが多いのだ。もったいなさ過ぎるショットもかなりあるんだけど。映画の出来が悪いとしたら、脚本の出来が悪すぎるからだ。もったいぶった意味のないシークエンスが多く、カットできる部分が20分はあった。そこを削って短くし、もっとフェチっぽさ全開にしてくれれば、わけがわからなくても「傑作だ!」という人はたくさん現れただろう。今のままじゃ……わけわからん、ていわれてお終いかも。
 それに、主役を演じる3人がイケメン好きの期待を裏切ってない。やたらと半裸になるし、雨やら汗やらでしょっちゅう濡れ濡れになり、水も滴るいい男を文字通り演じている。木村さんも、殆ど喋らない役だからか(悶絶したり絶叫する場面が多い)、何を演じても「キムタク」になることもなく、正に「今まで誰も見たことのないキムタク」になっていた。ダリオ・アルジェント監督の『フェノミナ』のジェニファー・コネリーさんみたく、蛆虫まみれになる場面だってある。力演だ。ファンにはたまらんでしょ。だから、主役3人を見るためだけに観に行く価値はあるといえば、ある。意味不明で怪しく長ったらしいPVを見せられていると思えば気にならんだろ。
 ま、要約すれば、「イケメン鑑賞のつもりが猟奇殺人を見せられて、平気で犬を虐待する人が登場する、『ツイン・ピークス』のような物語」か。

 私は……何だかんだと批判しているようだけど、こーゆーのは大好きだ。映画史には残らんだろうけど。色気のない“薄い”映画だから。ホント、もったいない。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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