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2009-06-11

『スター・トレック』は、キャラもの版権のパチスロみたい

 シリーズ第11作目となる『スター・トレック』を観た。前評判が高く、アメリカでも2億ドルを突破する大ヒットぶりに、物凄い超特大の期待をしていたら……期待を大きく下回るものだった。

 物語は、TV版『スター・トレック/宇宙大作戦』の前日譚としながらも、独創展開にしてあり、要はオリジナル『スター・トレック』の登場人物を使った多世界解釈ものとなっている。だから第12作目からは、オリジナル『スター・トレック』へ近付きつつも微妙に離れてゆくんだろう。
 旧来からの熱烈なファンはこの独創性に異議がありそうだけど、「『スター・トレック』って何?」という新規ファンには丁度いい。作品的にジリ貧になっていた映画シリーズを盛り上げるための改革だと考えれば、当然の方法だと思う。
 ただし、新規ファンにかなりの目配せをしてはいても、基本的にTV版『スター・トレック/宇宙大作戦』の前日譚なので、登場人物の役割が“当然の結果”になるべく、物語の展開がある程度決まっており、カーク船長もスポックも知らない観客にとっては急ぎ足な展開と感じるかもしれない。そして、「スター・トレック」という枠組みを無視して見るなら、感情移入できるような登場人物が皆無なので、全く物語に“ノれない”まま終わってしまうかもしれない。つまり、物語がちっとも面白くないのだ。

 前述したように登場人物の造形に共感できるような点はなく、それが最も顕著に現れているが、少年時代のカークが旧来の(車輪のある)車で暴走するシークエンスだ。他人の車で、西暦2200年代だってのにビースティー・ボーイズの「Sabotage」をBGMに、ハイウェイを爆走。途中から警察に追われ(スパイク・ジョーンズ監督のPVを意識しているのか?)、逃走するためにさらに加速して道を外れて、やがて先に崖が見えるんだけど、それでも加速して突き進み、崖に落ちる寸前でハンドルを切って車から飛び降り、車は崖の下へ爆破、カークは崖っぷちにしがみ付いて助かる。そこで辿り着いた警察が「名前は?」と訊くと、カークは自慢気に「ジェームズ・タイベリアス・カーク」と名乗る。本当ならこの場面は、父親の犠牲の下で生き延びたカークの初登場場面として、「おおーっ! 待ってましたっ!」と歓声を上げるべき場面の筈なのに、いかにカーク少年が無鉄砲に育ったか、ということを一発でカッコ良く表現したいがために作ったシークエンスだったろうに、カークが単なる馬鹿にしか見えないんですけど。派手なだけで、無意味。他にやりようがあったろうに。
 他にも、ウフーラがスポックにキスをして慰める場面は、ウフーラがスポックに心を寄せる理由の描写が皆無なため、唐突すぎる。全体的に、「その後の活躍がわかっているから省いても平気でしょ?」な展開だらけで、登場人物の関係性における物語は超薄っぺら。
 じゃあ、SFらしい設定の妙があるかというと、ブラックホールの扱いがテキトーで、時間転移による展開が辻褄合わせを無視した超ご都合主義で、面白くない。多世界解釈ゆえに元々のシリーズと異なる描写が、旧来からのファンにとっては面白さに繋がるけど、それにしたって「原作をアレンジした映画版」程度。結果的には、未来からやってきた“あの人”が運命を操作し、TV版『スター・トレック/宇宙大作戦』へと物語を導くんだけど、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティもビックリの手抜きだよ。
 SF映画に重要な要素の1つは、とんでもなくカッコイイショットだ。『スター・トレック』にも地上で建設中のエンタープライズ号を見上げるファンサービス満点な場面はあるけど、歓声を上げたくなるような喜びが湧いてこない。なぜかというと、カークがエンタープライズ号に思い入れがなさそうだから。カークが、成績は優秀なのに、無鉄砲な直情馬鹿に育ったのは、父親と常に比較されてきたからなんだろうけど、それが全く描かれないので、「父親を超える」ためにエンタープライズ号に乗る意義がない。同様のことはスポックにもいえる。両者共に家族関係が重要なポイントになっているのに、そこはあっさり飛ばしまくり。
 さらに、敵となるネロの悲壮感が薄いのも駄目。故郷の惑星が消滅した描写はあるけど、その地獄は描かれず、台詞で説明されるだけ。連邦に対する怒りも単なる逆恨みなので、「ふーん、大変だったんだね」としか思えない。あんなに凄い技術があるのに、馬鹿。

 百歩譲って物語が面白く、手に汗握る展開の連続だったとしても、演出が駄目。特撮の出来は素晴らしく、特に光の効果なんかは「美しい」と感嘆するくらいなんだけど、それが全く活かされていない。アクション場面にしたって、迫力なし。
 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで顕著になったけど、CGで何でも描けてしまう今、迫力を出すのは丁寧な演出(展開と、ショットの構図と積み重ね)が全てだといえるのに、『スター・トレック』はかなりそこに無神経だ。画面は凄い。登場人物たちがワーワーいいながら活躍し、宇宙で色んなものが飛び交い、爆発し……でも、それを冷静に眺めてしまう自分がいる。『スター・トレック』にまでカメラの揺れ演出があってガッカリ。

 総括的に見れば、無鉄砲なカークと対照的な、冷静沈着なスポックの「冷静沈着」ぶりが全く描かれないので、『スター・トレック』は基本的に「無鉄砲な映画」か「大味な映画」にしかなってない。
 良かったのは、サイモン・ペッグさんのスコッティと(『ショーン・オブ・ザ・デッド』から出世したなぁ! イングランド育ちのスコット役なんて、配役そのものがギャグと思えるくらいだ!)、特撮と、マイケル・ジアッキノさんによる、低音を効かせた重厚な音楽だけだった。エンディング・クレジットに流れる音楽は、『クローバー・フィールド』のエンディング・テーマ曲と並ぶくらいに良かった(少し「展開がダラダラしてて長いなぁ~」と思ったけど)。
 ま、商売として見るなら、ファンを喜ばせるものは詰め込まれている。プリクエルとして作ってあることがキャラもの版権パチンコ商売と似たり寄ったりの発想だし。それでも、同じプリクエルなら、駄目な『スター・ウォーズ エピソード1』よりも駄目(いや、面白さとしてはあっちの方が駄目だけど、映画としてはあっちの方が遥かに上)。
 記憶に残ることはないな。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : スター・トレック

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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