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2009-05-12

『その土曜日、7時58分』は、雑な家族による雑な強盗の雑な映画

 シドニー・ルメット監督の『その土曜日、7時58分』を観た。名匠ルメット監督の作品だからと、多大なる期待を抱いて観たんだけど……イマイチだった。

 物語は単純。お金に困っている兄弟が、両親が経営している宝石店を襲うんだけど、失敗し、何もかもが崩壊する。
 兄は、父親を忌み嫌っており、ずーっと父親みたいになりたくないと思い続けていた。両親の店は保険に入っているから強盗されても損はしないとわかっており、襲うことには復讐に近い意味があった。弟は、何も考えてない根性なしの駄目男。兄にいわれるまま強盗をするんだけど、さすがは駄目男で、弟のせいで犯行は失敗する。
 雑な計画だったから、犯行が犯行を呼び、事態は雪だるま式に悪化する。

 単純すぎる物語を、時系列をいじって、サスペンスとして盛り上がるようにしてある。1つの場面を登場人物毎に視点を変えて複数回描く、ザッピング演出。それぞれの事情や状況がわかるにつれ、楽観的だった行いから、逃げ道を絶たれて追い詰められてゆき、家族崩壊へと突き進む絶望的な緊張感が増幅する。
 時系列をいじったり視点変更をする演出は、サスペンスでは常套手段なので、それが“売り”になることはない。作為的であることが強調されるので、物語は自然に見えることがなく、観客は、登場人物に共感するよりも、いわば“神の視点”を強要される。だから、作為的であればある程、面白さは増すんだけど、『その土曜日、7時58分』はその点で失敗している。

 撮影の拙さが気になってしかたなかった。揺れる必要のない場面で、カメラの揺れること揺れること。新人のカメラマンかと思うくらい、安定感のない場面がいくつもあった。アングルもつまらなく、演出が過剰に作為的であるなら、ショットも作為的であるべきなのに、まさか“揺れ”が登場人物の心理状態を演出しているとも思えないから、あまりにも凡庸すぎる。
 編集の拙さも気になってしかたなかった。時系列や視点が変わる度に、映像をスクラッチしているような変な効果が入るんだけど、それが全くの無駄どころか邪魔。「面白い効果だろ!」と何か得意気なところにイライラする。暗転させて、字幕だけで「犯行1時間前」とか表示した方が、『その土曜日、7時58分』の雰囲気に合っている。まあ、作為的である点はとぉーっても強調されるけど、やり過ぎだ。

 俳優陣の演技は良かった。特にフィリップ・シーモア・ホフマンさん。『ブギーナイツ』のゲイ役の頃から考えると、信じられない出世ぶり。太ってんのは変わってないけど。
 しかし、登場人物の描写が浅く、なぜ親子関係に溝があるのか、なぜ強盗するまでに兄弟は追い込まれているのかが今いちわからないし、それぞれの造形も浅く、大量生産品のハンコで押したような感じの人物しか登場しないため、薄っぺらなドラマになってしまっている。
 俳優人の演技力だけで持っている映画だ。

 これ、ルメット監督より、コーエン兄弟が作るような映画じゃないかなぁ? 脚本をもっとシニカルにして、凝ったショット満載で作るような。だって、内容があるようで全くない物語だもん。駄目な家族が身内を襲ってもっと駄目になる――物凄くコーエン兄弟好みの物語だと思うんだけど。ちょとだけ『ファーゴ』っぽいし。そーゆーのをもっともらしく撮ることにかけてはコーエン兄弟に並ぶ者はいないでしょ。
 84歳にもなるルメット監督の手腕は悪くないけど、とにかく撮影と編集が拙くて駄作すれっすれの映画になってしまっている。それならば、絶好調のコーエン兄弟に撮ってもらいたかったと夢想してしまう。

 あと、駄目な点として、邦題が挙げられる。
 意味不明で意味深な題名ゆえに、覚え易いといえば覚え易い邦題だけど、原題は全く違っていて、『Before the devil knows you're dead』というもの。意味は、「あなたが死んだことに悪魔が気付く前に」。それがどうして『その土曜日、7時58分』になるんだか。「土曜」を含んだ題名なら、ジョー・ダンテ監督の『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』の方が何百倍もいいと勝手に断言したい。
 意味深な邦題よりももっと意味深なために何がいいたいのかさっぱりな原題には、実は前文がある。「May you be in heaven half an hour」というもの。意味は、「(30分前に)天国へ着いていますように」。映画の冒頭でこの文章が表示され、「Before the devil knows you're dead」が表示される。で、前文と題名を繋げれば、「あなたが死んだことに悪魔が気付く30分前に天国へ着いていますように」と意味が通る。
 『その土曜日、7時58分』は、強盗で始まるサスペンスだけど、それは映画のきっかけにすぎなくて(物語のきっかけではない)、物語が進行するにつれ、家族の問題が浮上する。特に核になっているのは、父親と長男(ホフマンさん演じる兄)の不和。それが強盗へと発展し、誰もが望まない最悪の結果を生む。
 しかし、「あなたが死んだことに悪魔が気付く30分前に天国へ着いていますように」とあるように、最後には悲しくて残酷ながらも静かな安らぎ(祈り)が訪れる。それは、父親の息子(兄)への祈りだ。父親らしいことを何もしてやれなかった息子への、せめてもの償いが、とんでもなく残酷な行為となる。
 アメリカで何度も何度も繰り返される父親と息子の物語。それを意味する原題を、変な邦題に変えてしまった配給会社はダメダメでしょ。『悪魔が気付く前に』や『死に気付かれる前に』とかで良かったのに。そっちの方がノワールっぽくて、雰囲気あるし。

 コーエン兄弟が撮っていたら――いや、ルメット監督のままでもいいんだけど、撮影と編集がもっとマシなものになっていたら――軽ぅーく傑作になってたろうな、と悔やまれる映画だ。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : その土曜日、7時58分

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
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生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
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