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2009-05-05

『新宿インシデント』は、ジャッキーの『グラン・トリノ』で、つまりいつものジャッキー映画

 ジャッキー・チェンさん主演の『新宿インシデント』を観た。佳作レベルの、チェンさんが主演でなければ何の話題にもならない作品だ。
 噂に違わぬ暗い「ジャッキー映画」だった。最後にチェンさんが殺されるんだから、『炎の大捜査線』以来の、暗ぁ~い「ジャッキー映画」だ(『炎の大捜査線』は、暗い暗くない以前の問題作だったけど)。

 はっきりいって、「Vシネ」映画。新宿が舞台で、不法滞在者が主人公で、中国人マフィアが登場して、ヤクザとの血みどろの抗争があって、「ジャッキー映画」印のアクションが封印されているんだから、下手すると、たくさんある普通の「Vシネ」の中に埋もれてしまうくらいの凡作。もちろん、普通の「Vシネ」よりもお金がかかっているから映画らしいんだけど、物語は当然として、演出にも目新しさが全くなく、全力で今さら感が漂いまくり。
 ずーっと、「いつものジャッキーなら……」と考えてしまった。チェンさんが何の変哲もない不法滞在者を演じる必要性が全く感じられないわけですよ。チェンさんには、下っ端からマフィアのボスに成り上がる『ミラクル』のような奇跡を期待しちゃうのですよ。でも、最後には呆気なく死んじゃう。惨めに、下水道で、流されて、孤独に。そんなチェンさんなんて望んでないわけですよ、長年のファンとしては。しかし、だからこそ、『新宿インシデント』には価値がある。

 チェンさんが演じるのは、鉄頭という密入国者。恋人を探しに日本は新宿までやって来るんだけど、恋人は既にヤクザの妻となってた。鉄頭は中国を出る時に警官を殺しているので、帰国することもできず、裏社会に染まって生き抜くしかなかった。
 この手の物語は、密入国や移民とかの国際問題を扱わなくても、田舎から大志を抱いて上京したはいいけど、チンピラに堕し、いつの間にかヤクザ組織内での権力闘争に明け暮れる日本人自身の立身出世ものが無数にある。国際問題と国内問題の差は大きいけど、物語の構造に差はない。
 ヤクザやマフィアが登場する以上、暴力が占める要素は大きい。現実的な問題を描くからこそ、その暴力も現実的で、つまり、「痛い」。そもそも「ジャッキー映画」の基本は「暴力」なんだけど、「暴力」と見えないように映画の娯楽要素として昇華させているから、「暴力」という感じは薄かった。しかし『新宿インシデント』は、「暴力」を強調している。

 密入国者や不法滞在者を絡めた現実的なヤクザ映画を作るだけなら、チェンさんが主演する必要はない。『新宿インシデント』がチェンさん主演だからこそ価値があるのは、「ジャッキー映画」に登場する「ジャッキー・チェン」がちゃんと存在するからだ。家族と仲間を何よりも大切にする、心優しい「ジャッキー・チェン」が。その心優しい「ジャッキー・チェン」が、何の変哲もない密入国者になると、鉄頭のように、なす術もなく「暴力」的な運命に翻弄されてしまう。
 今まで「ジャッキー映画」は「暴力」で何もかも解決させていた。しかし現実は、「暴力」で何かが解決することは稀だ。鉄頭らの仲間は皆、普通の一般人だったのに、新宿で生き抜くために悪事に手を染める。「暴力」は簡単だから、染まり易い。単なる農夫だった鉄頭が、新宿ではヤクザの組長を狙う殺し屋になってしまう。「暴力」によって、みんなの人生が狂ってゆく。
 「暴力」を描きつつ、「暴力」を否定する『新宿インシデント』は、「暴力」で何もかも解決させてきた「ジャッキー映画」を作り続けてきたチェンさんにしか作れない映画だ。世界中で確固たるイメージのある「ジャッキー・チェン」でなければ価値のない映画なのだ。奇しくも似たようなテーマで大傑作を作った、クリント・イーストウッドさんの『グラン・トリノ』のように。
 『新宿インシデント』は、チェンさんの新たな分岐点となる映画として(または回顧的な映画として)、重要な作品だろう。『グラン・トリノ』じゃないけど、これがチェンさんの遺作であってもおかしくはないと思える、立派な「ジャッキー映画」だ。

 ただし、『新宿インシデント』を「ジャッキー映画」と関連付けずに観るなら、魅力的なショットはなく、フィルムの色合いは安っぽく、物語もテキトーなので、賞味期限は1ヶ月くらい。ヤクザの襲撃が、石ころを投げつけるって、あり得ないでしょ。拳銃も殆ど使わないし。時代背景が『プロジェクトA』と同じかと思うくらい。
 チェンさんの映画を全く観たことがないような人には、『新宿インシデント』は本当に単なる「Vシネ」でしかないだろう。

 それにしても、相変わらず全裸場面があったのには笑った。本当に裸になるのが好きだね、チェンさんは。
 あと、竹中直人さんは、演技が大雑把すぎて存在感があり、邪魔だった。明らかに1人だけ浮いていた。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : 新宿インシデント

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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