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2009-04-13

『イエスマン』はとっても最高の凡作

 ジム・キャリーさん主演の『イエスマン “YES”は人生のパスワード』を観た。ジョン・ヒューズ監督作品のような、素晴らしく平凡な出来の映画だった。
 「素晴らしく平凡」は褒め言葉であって、貶しているわけじゃない。別のいい方をするなら、「最高の佳作」といえる。つまり、最初から映画史に残る傑作を撮ろうとしていない。鑑賞料金分を誰もが楽しめるように、確実性の高いものを目指して作られている。大爆笑することはないし、ロマンスでウットリすることはないし、感動的に泣くこともできないけど、まんべんなくその要素が混ざり、「まあまあ」の仕上がりになっている。「素晴らしく平凡」な「最高の佳作」だ。

 何に対しても否定的で後ろ向き人生の主人公が、何でもかんでも「イエス」と応えることを誓わせる変なセミナーの教えにハマり、人生を好転させる物語。後半には「イエス」で応え続けたために問題が発生するけど、最後は当然、スッキリさっぱりのハッピーエンド。
 キャリーさんはこーゆー物語の主人公が似合う。が、正直いって、アダム・サンドラーさんの方が絶対に似合うと思った。歌う場面が2箇所あるんだけど、ちょっとキャリーさんじゃ華がないんだよね。変顔対決の場面なんかは確実にキャリーさんの独壇場といえる名場面だけど。
 ヒロイン役のゾーイ・デシャネルさんは良かった。劇中に登場する「ミュンヒハウゼン症候群」という名前のバンドのリード・ヴォーカルとして歌声も披露している。その「ミュンヒハウゼン症候群」の曲が、よれっよれのオルタナなエレポップ――ドイツに山ほどいそうな下手くそ加減で、アメリカ人向けとは決して思えないような――で、個人的にかなりド真ん中。ちなみに「ミュンヒハウゼン症候群」て何のことか調べてみたら、「他人の関心を引くためになら何でもしてしまうような人」のことを指すらしい。なるほど、それがバンド名になっているのはピッタリだ。

 バンドが出てきて、そのバンド名が結構ちゃんと物語を示唆しているように、『イエスマン』は音楽が重要な役割を担っている。そこがヒューズ監督っぽい所以。
 まずは何よりもイールズでしょ。映画の音楽は、イールズのリーダーであることマーク・オリバー・エバレットさんが全面協力していて、エンド・クレジットを見ていると、イールズの曲だらけ。既存の曲をそのまま使っているものもあれば、映画用にインストにアレンジし直しているものもあり、イールズの映画といっても過言でない(エイミー・マンさんのPVと化していた『マグノリア』に近いものがある)。
 飛び降り自殺をしようとする男をキャリーさんが歌って止めさせる場面があって、そこで歌われるのは、サード・アイ・ブラインドの「Jumper」。誰も知らないよ、サード・アイ・ブラインドなんて。場面にピッタリすぎて、キャリーさんが映画用に書き下ろしたオリジナル曲かと思ってしまう。本当は感動的な歌詞なのに、爆笑間違いなし。が、私はここで「あー、この場面はキャリーさんよりもサンドラーさんの方が似合うなぁ」と思ってしまったのだけど。ちなみに飛び降りようとしているのは、『ブギー・ナイツ』に出てたルイス・ガスマンさん。そこだけのチョイ役だけど、強烈な印象を残すので、お得な役だ。
 そもそもジャーニーの曲で始まって終わるし、大袈裟ロックといえば主演は、キャリーさんでなく、ジャック・ブラックさんでも似合いそう。変顔もできるし、演技の幅も広いし(実際、最初はブラックさんが主演に考えられていた)。ちなみに使われているジャーニーの曲は、「Separate Ways」。題名通り、別れてしまう危機を歌った歌。男が主人公で、彼女と別れそうになっていて、2人はとても愛し合っていたのに道を違えてしまっただけなので、愛し合った日々を想い出して戻ってきてくれよぉー! と熱唱している歌。『イエスマン』の物語にピッタリなのだ。
 劇中で使われる曲に覚えがある人なら、物凄くウケることは間違いないんだけど、もったいないことに殆どの曲の歌詞が字幕にならないので、知らない人には単なるBGM扱いにしかならないだろう。演出として音楽が重要な位置付けになっているこの手の映画で、歌詞を字幕にしないのは、演出の意図を無視した行為で、最悪だと思う。本当に、もったいない。
 
 ウェルメイドなコメディ映画だと思われそうだけど、チョイ下品なギャグもあるので安心(?)できる。お婆ちゃんが、入れ歯を外してフェラチオしてくれるシークエンスなんか、キャリーさんの「何この快感!?」て表情と相まって、とても可笑しいし、その後の場面でそのお婆ちゃんが評判になってたりするのがまた可笑しい。
 終わり方も見事。テレンス・スタンプさんが好演している。
 キャリーさんは、「NOマン」だった頃の生気のない演技と「イエスマン」になってからの元気溢れすぎる演技とで、ちょっと大袈裟すぎる区分けをしていて、ぱっと見では構成が『マスク』と変わらないかもしれない。というか、「マスク」も被らないのに人間性がメチャクチャ変わったら、周囲の人々は嫌がるでしょーな。それでも、確かに、「イエス」で応え続けて人生が楽しそうなるのを見てると、観ている私まで「もう少し人生に冒険を与えて楽しんでみよう」という気にさせられる。いや、キャリーさんみたい変わったら人生終わりそうではあるけど。
 細かいことを無視しないと気になることがたくさんありすぎる無理のある物語ではあるけど、そこを気にさせない演出と、キャリーさんの元気演技で絶妙のバランスを維持し、音楽も良く、コメディもロマンスも人生訓(?)も楽しめて、元気まで貰える――本当に良い佳作だと思うんだけど、素晴らしく平凡なため、日本では絶対にヒットしない(アメリカではキャリーさん主演映画の久々のヒットだった)。もったいないなぁ。映画の鑑賞料金がもっと安くならないと、『イエスマン』のような見事な佳作のコメディは絶対にヒットしないだろうな。
 
 ところで、劇中でキャリーさんは銀行員として融資担当を勤めていて、「イエスマン」になるまでは融資依頼の大半に「不可」を出していたんだけど、「イエスマン」になってからはどんな融資依頼も「可」で通すようになる。その融資依頼は、団体でなく、個人の、バイクを買いたいから融資してくれとか、有名人のケーキを作って儲けたいから融資してくれとか、小口すぎるものが殆ど。そんなものに融資しても、銀行としては大して儲からない――と思いきや、小口すぎるから完済率が100%に近く、利子も付いて儲かり、キャリーさんは大評価されて幹部へ昇進する。
 これって、サブプライム・ローンを少し思い出させるんだけど、グルミン銀行も思い出させる。つまり、マイクロ・ファイナンスだ。キャリーさんは上司に評価されて昇進したけど、しかしあの貸し方で本当に完済率を高率に維持できるんだろうか? グラミン銀行はノーベル平和賞を獲ったくらいだから慈善に近いけど、キャリーさんのような慈善的(案件を考査しない)な貸し方をしていたら、高率維持はできないような気がする。
 金利のことなんかも考えると、物語の筋書きだけでなく、キャリーさんが行っている慈善的な融資のシークエンスも気にしちゃ駄目な部分なんだと思う。実際、『イエスマン』では、キャリーさんはホームレスの人からの無茶な注文にも「イエス」と応えているし、ホームレスの人々のためにボランティア活動もしている。最後のオチなんて、正に「アメリカの善意」を体言しているようなものだった。欲深くても良いことはない、と。助け合いの精神は重要だ、と。

 表面的には単純でウェルメイドなコメディに思える『イエスマン』は、意外と考えさせられる部分がある。「イエスマン」が「イエスマン」であるには、ある程度の世捨て人になる覚悟が必要だし、それなりに資金力も必要になる。小口の融資とはいえ、塵も積もれば山となる。1つ1つの融資に関わるコストも考えれば、大きな資本力があって初めて可能な行為で、それは営利目的があって初めて可能なこと。『イエスマン』ではそんなこと全く描いていないけど(描く必要ないけど)、そこは重要な部分だよなぁ。
 例えば、お金を借りる時、間近の結果と、将来の結果、どちらを優先して考えるのか、とか。そんな当たり前のこと今さら考えるな馬鹿、といわれそうだけど。ただ、「イエスマン」となったキャリーさんは、間近の結果と将来の結果、どちらを想定して動いているのだろうか? 間近の結果を想定して「イエスマン」になったんだとしたら、なかなかすぐには結果がでないんだから、無目的かつ無思考で「イエスマン」になったといえる(目的があるとしたら、「楽しそう」だろうけど)。将来の結果を想定しての「イエスマン」なんだとしたら、ちゃんと投資収益と機会費用を考えているといえる。まあ、「イエスマン」になることと人的資本投資とを関連付けられるとは思えないけど。
 主人公の設定を銀行の融資担当にしたのは偶然なのか、ちゃんと考えがあってのことなのかは知らないけど、融資担当の銀行員の「イエスマン」、という設定は巧いと思った。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : イエスマン

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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