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2009-04-21

『ウォッチメン』は例えば江戸川コナンの存在意義問題のような

 ザック・スナイダー監督の『ウォッチメン』を観た。凄かった。が、「凄い映画」だったかというと、そうでもない。

 原作を読んだのは十年前くらいに出た邦訳だ。凄い漫画があったもんだ、と思った。が、内容はそんなに面白いと思えず、買って1ヶ月くらいで古本屋に売却した。買取金額は200円くらいだった。今から考えると、物凄くもったいないと大後悔。Amazonなんかじゃ今、2万円以上で売ってるんだから(こないだ再出版されたやつまで、高値になってて呆れる)。なので、内容の詳細を覚えていないため、新鮮な気持ちで観ることができ、楽しめた。
 物語は、世間では色々と難しそうなことをいってるけど、すっごく単純。「戦争が始まりそうな時に、簡単に国を滅ぼすことが可能な超人がいたら世界はどうなるか、またヒーローは役に立つのか?」というだけのもの。時系列をごっちゃにし、過剰すぎる演出で彩り、冗談なのか本気なのかわからない設定のためにわかり辛いけど、実は単純明快な物語。

 漫画やアニメの物語世界では、基本的にヒーローの存在は認められている。が、捻くれ者はヒーローの存在意義に疑問を抱いたりする。その疑問の発展形が『ダークナイト』や『ウォッチメン』などだ。
 ヒーローの存在意義に問題があるとすれば、それは「ヒーローがいるから犯罪が減らない」という「ヒーローもの」の基本構造にあるだろう。たとえば『名探偵コナン』では、どうして難解な連続殺人事件が必ず多発するのか? 江戸川コナンが殺人事件を呼び寄せているのじゃないか? 江戸川コナンが存在しなければ、多くの殺人事件は発生しなかったかもしれない。江戸川コナンは、得意気に事件を解決する前に、己の存在の不穏さに戦慄すべきではないか? 存在意義に悩むべきでは? もしも、江戸川コナンがキレて殺人鬼になったとしたら、捕まえられる者はいるのだろうか?
 ヒーローが自らの存在意義に疑問を抱いてしまうような世界では、そもそも根本的にヒーローは望まれていない。ヒーローの存在は「苦しい時の神頼み」扱いにすぎない。正義の味方は、争いの象徴でもあるわけだし。でも、ヒーローはそれを理解した上で存在している筈なので、普通は「自らの存在意義」なんてものに悩まない。従って、「望まれていない」の最終形態として、『ウォッチメン』は「キーン条例(ヒーロー廃止法)」という設定を設けた。それにより、ヒーローは明確に「望まれていない」を自覚することになる。
 ヒーローの悩みは、普通に考えれば、コストとリスクの問題でしかない。ので、『ウォッチメン』のような作品が考えるべき「現実的な問題」は、本来なら守られる側である一般人とのトレードオフの問題であるべきで、ヒーローの存在意義なんてどうでもよいことだ。
 優れている人は他人のために働くべき――これは普通のことだ。学校の先生、医者、政治家、公務員、官僚……優れた人は、周りの役に立つことをするのが社会全体の効率を考えれば当然のこと。たとえそれがヒーローという特殊な存在であっても。ヒーローが自らの存在意義に疑問を抱くということは、単に社会の成熟度が足りないだけのことでしかない。「監視者を監視するのは誰だ?」というテーマを持つ『ウォッチメン』は、現実社会の隠喩として見ることができる。

 とまあ、実際にそんな政治的社会的な内容なんだけど、映画の出来はクエンティン・タランティーノ監督作品っぽい。『パルプ・フィクション』みたい。狙っている安っぽさが同じなんだよね。
 漫画映画としては、ほぼ完璧。映像の強烈さゆえ、原作よりも一見のインパクトは大きい。内容はシニカルだけど、ヒーローたちの活躍場面の演出は凄くカッコイイ! 特に紅一点であるシルク・スペクター2世のアクション場面! 『デス・プルーフ』をものにしたタランティーノ監督なら駄目出しするだろうけど、ストレートの長髪がヴィダルサスーンのCMかと思わんばかりにキレイに弧を描いて動く様はバカ度溢れる素晴らしい演出だ。ま、アクションの演出そのものはパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』の横移動のやつと同じだったけど。
 見応えはとってもある。内容もギュウギュウに詰め込まれている。アクションはふんだんにあるし、妙に残酷描写も無駄に頑張っている。面白いショットだらけなので、飽きない。オープニング・クレジットが最も良かった。『セブン』以来の衝撃――とまではいかないけど、CGをふんだんに使い、古めかしいアメコミを意識したカッコイイものだった。が、全体的には、原作通りという制約があるからか、躍動感のない仕上がりに。超大作な割りに、映画館で観るよりも、家で観た方がいいかもしれない。DVD(かBlue-Ray)で繰り返しながらじっくりと観た方がいい。
 また、既にピクサーが『ウォッチメン』を換骨奪胎した『Mr.インクレディブル』を作っているので、娯楽作品として楽しむならそっちの方が遥かに面白い。

 内容から『ウォッチメン』はカルト作品として残るかもしれないけど、それは原作ありきの評価にすぎないので、映画単体として見れば、凄いようで凄くない凡作止まりだろう。何より、製作費を俳優陣に割り振れなかったからか、『ダークナイト』でのジョーカーのような存在がいないのがいかん。全体のショットでは『ダークナイト』よりも遥かに『ウォッチメン』の方が優れているけど、歴史に残るのは『ダークナイト』の方だ。
 物凄く頑張っている映画、という印象以上の映画ではない。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : ウォッチメン

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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