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2009-01-27

『誰も守ってくれない』はTVドラマに続きそう

 佐藤浩市さん主演の『誰も守ってくれない』を観た。TVドラマの『誰も守れない』が余りにも酷い出来だったので、ほぼ駄作決定と思っていたんだけど……打って変わって出来が良かったので驚いた! 『誰も守れない』の出来の悪さは何だったんだ!

 物語は単純。殺人事件の加害者側の家族を世間の目から保護すること、それだけ。一見、警察が人権に基いて世間の誹謗中傷から守ってくれるように思えるけど、実際は、家族個人個人から情報を引き出すための策でもある。だから、家族まとめてでなく、個別に別れさせて守ることになる。
 加害者側の家族を守るに当たって強制的に行われるあれこれの描写が「へぇ~」と思わせ、物語に引き込まれる。
 まず、名字が息子(犯人)と同じだと、それで加害者側の家族だとバレてしまい、世間から非難されるので、両親は離婚させられ、その場ですぐに再婚させられ、名字を換える(父方から母方の名字になる)。
 その後、娘は、入籍手続きを取らされる。もちろん息子は犯人なので、旧姓のままで放置。さらに娘は、義務教育免除がなされ、学校に行かなくても良くなる。
 これらの手続きは、役人がやってきて、荒っぽく説明をして、強引に書類にサインをさせて終わり。家族は、わけも分からずサインするしかない。淡々としたやり取りが、家族の置かれた最悪な状況を際立たせる。はっきりいって、単なる「トリビア」な描写でしかないけど、効果は抜群。
 そしてその後は……佐藤さん演じる勝浦刑事が志田未来さん演じる船村沙織を保護しつつ、逃亡する物語へと転じる。ここから、世間が沙織を徹底的に糾弾し誹謗し中傷し傷付ける描写が始まる。守る側の勝浦刑事にも暗い過去があり、それをついでに暴かれ、一緒くたに糾弾され、逃亡の旅へと出ることになってしまう。

 正直、面白かった。余りにTVドラマが酷かったから、比較して良く見えたのかもしれないけど、普通に面白かった。しかし、何が良かったのかとなると、特に何もないのだ。加害者側の家族を守る警察の物語――そのアイデアを上回る映画的な面白さがない。
 「加害者の家族」という物語は、東野圭吾さんの『手紙』の方が面白い。どこまでもまとわり付いて来る「加害者の家族」という非難の種。何年経とうと消えない傷。「加害者の家族」が結婚し、子供が生まれれば、何の罪もないその子供までもが差別の対象となる、「加害者の家族」という罪。『手紙』はそこをちゃんと描いていて、とても素晴らしいと思った。多少は奇麗事な面もあったけど(特に映画版は)。『誰も守ってくれない』は、現象だけを追ってる。それはそれでいいけど、「加害者側の家族」というネタを扱う以上、もっと悲惨で残酷な「加害者」の部分を避けているのが良くない。見たいのは、「加害者」が何故にどのように「加害者」だったのか、だ。勝浦刑事関連の挿話を全部削ってでもそこを描いてほしかった。「加害者の家族」も被害者、ってのは誰だってわかることなんだから、不運にも「加害者」の側に回ってしまったことをもっと描くべきだった。唯一の幸福な場面である、スローモーションで描かれる導入部分を全部ばっさりとカットした方が良かった。
 ネットによる誹謗中傷の描写は、やりすぎだと思うけど、似たような展開は実際にあるから、時代性として評価できる。しかし、フジテレビが作っておきながらあれはないだろ。TVのワイドショーで散々やってる暴露は、ネットよりもマシといえるのか? 旧来の主要メディアがネットに負けた、というような描写が最後にあるけど、それはちょっと卑怯だろ。ネットの煽りを受けてさらに煽るくせに。そこら辺の描写にかなり及び腰なのが駄目。
 主役2人の刑事――勝浦刑事と松田龍平さん演じる三島刑事の人物造形は、今までのメジャーな日本の刑事ドラマと一線を画しているけど、アメリカ映画の刑事ドラマじゃよく見るタイプで、創りが浅いと思った。勝浦刑事は、『ダイハード』のマクレーン刑事っぽいかな。三島刑事は、存在自体が全くいらないし。また、特に駄目だと思ったのは、人物描写の掘り下げを、『誰も守ってくれない』では放棄し、TVドラマの『誰も守れない』で補った点だ。木村佳乃さん演じる精神科医の尾上令子なんて、『誰も守ってくれない』だけじゃ意味不明の存在だよ。他に、佐々木蔵之介さん演じる新聞記者も、全くいらない人物だった。彼なしでも物語は展開できた。
 カーチェイスも完璧な無駄だった。『ダークナイト』のハービー・デント検事の護送場面を百倍に薄めた感じ。
 手持ちカメラの“揺れ”が減ってたのは良かった。本当に良かった。やれば出来る子。

 一見は、とても良く、面白い映画に見える。その実、内容は薄い。一見でも良いものに見えるのは、あちこちのドラマや映画や物語から良い要素を拝借しまくっているからだ。その拝借のしかたが上手ではあるんだけど、その隠し方はもっと上手であるべきだった。だって、「ああ、この話は、ヒットすればTVドラマ化する気なんだろうな」と見えてしまうから。そう、最も引っかかるのが、TVドラマにする気が力一杯感じるところだ。勝浦刑事の「背筋が凍るな、おい」という口癖や、表立ってない裏設定が無駄にあるんだもん。
 この手の複雑になりそうな物語を2時間以内に収めたのは良かったと思う。思うけど、TVドラマの前日譚あっての説明省略だったりするので、評価し難い。
 上手なんだけど、上手じゃない。面白いんだけど、面白くない。記憶には、残らない。映画でなく、最初から最後までTVドラマとして作れば良かったのに。もしも、本格的に映画として作りたかったんなら、リチャード・ドナー監督の『16ブロック』を目指すべきだったね。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : 誰も守ってくれない

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誰もわかってくれない

はじめまして

誰も守ってくれないを観ました。テーマは深く重くすばらしいのに、映画としては何かスカスカな気がしました。特に16ブロックを目指せという意見には全くその通りだと思いました。16ブロックは泣いてしまいました。
プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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