2009-01-13

『ゴールデンスランバー』は、大きな花マルの「よくできました」小説

 一昨年に買ったまま、ずーっと積読になってた伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』やっと読了。読み始めるまでに1年以上かかって、読み終えるには1日もかかからなかった。
 今になって読もうと思ったのは単純な理由で、色んな雑誌やムックのベストに挙げられていたから。「あー、そーいえば、積読になってたなぁ、これ」と思い出し、そんなに面白いならさっさと読もう、と。連休でもあったし。で、すっげ面白かった。何でこれを今まで1年以上も放置してたのか……いつもの通り、買ってすぐに結末だけは読んであったので(私は、必ず結末を先に読む)、主人公が整形して助かることだけは知っていたんだけど。

 首相が暗殺されるまでを、主人公を登場させないまま、他の登場人物だけで描写し、主人公の逃亡劇が始まってからは、過去と現代の時間軸を巧みに入り乱れさせ、読者をグイグイと物語に引き込む。
 途上人物がまた面白い。連続殺人鬼や、怪しいヤクザ紛いのオッサン、ロック馬鹿の先輩などなど、味方になるのが善悪入り乱れているのがいい。連続殺人鬼が味方の小説って、そんなに多くないでしょ。似ても近くもないけど、殊能将之さんの『ハサミ男』を思い出した。
 細かい会話や思い出のことごとくが後半で伏線だったことがわかり、その全てが爽快感を伴うまとまり方をするのが素晴らしいし、感動する。ハッピーエンドでないのに、スカっと爽やかな読後感があるのも、そのため。
 主人公をハメた敵の全貌を暴くマクロな物語にせず、単なる一般市民が巨大な陰謀と対峙したら、立ち向かうんじゃなく、必死に逃げるしかないというミクロな物語にしたのが良かった。
 部分的には、主人公の父親の挿話がとても良かった。痴漢嫌いの話には笑えたし、TVの取材に対していう台詞には感動した。主人公が父親に「痴漢は死ね」と書いて送ったのには、笑うやら泣けるやらだ。
 一番最後、「よくできました」とハンコを押してもらえるのが、またいい。
 あーっ、くそーっ、凄く面白かったーっ! と悶えてしまうくらい、面白かった。

 全体的に、映画みたいだと思った。『逃亡者』や「ジェイソン・ボーン」シリーズに近い娯楽性がある。是非とも映画にしてもらいたい――けど、面白い小説の映画化はほぼ失敗するんだよね、邦画は。
 私は、映画好きだからか、面白い小説を読んでいると、勝手に場面に合わせてBGMを思い浮かべてしまう。『ゴールデンスランバー』なら、「この場面はビートルズの曲だな」とか。時にはオリジナルのBGMを鼻歌で作ることがあるし、実際にサントラとして作ったこともある。同人CDで発表してみようかと思ったことがあったけど、思っただけに終わっている。『ゴールデンスランバー』も、場面に合わせてBGMを作ってしまう娯楽作品だった。
 お手本のように、花マルで「よくできました」な小説だ。

 それにしても、積読はまだ数十冊もありますよ……

テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

tag : ゴールデンスランバー

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Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
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生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
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