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2007-11-13

ボーン・アルティメイタム

 昨日、マット・デイモン主演『ボーン・アルティメイタム』を観た。
 面白かった。娯楽作としては超一級の出来だろう。特にアクション場面の出来は、前2作を軽く上回る

 特にカーチェイスが凄かった。というか、あれはもうチェイスではないような。主人公ボーンは、追手から逃げてるのに、積極的に相手へどっかんどっかんぶつけまくる。ぶつけて、逃げる。だから車はぐっちゃぐちゃ。よくあれで走れるもんだ、ってくらい。正に、肉を切らせて骨を断つ。
 あれだけ相手に全速力でぶつけて逃げるカーチェイスってのは、他にないんじゃないだろうか。アクション映画の判断としては正しいと思うけど、逃げ切る頃には、ボーンは生き延びているのが不思議なくらい、ぼろっぼろだ。前作でも「がっしゃーん!」てぶつける場面はあったけど、3割増しです。

 スペインはマドリッドの迷路みたいに密集している旧市街での、追跡・逃亡劇も凄い。敵の殺し屋を追いかけつつ、警察の追跡からは逃げつつという、大忙しな場面。
 狭い路地をバイクを使いながら文字通り縦横無尽に疾走し、足で走っては屋上から屋上へ、隣の建物の窓から隣の建物の窓へと、跳んで移る。もうジャッキー・チェンの時代は終わった、と見ている間は思ってしまう迫力がある。
 無論、殆どがスタントなのは、そーゆー場面の大半が主人公の背後しか映らないことからわかる。わかるけど、アクション場面は、アクションのできる人が演じるか、アクションができるように撮るかであって、スタントを使わなきゃアクション場面のランクが上がるわけじゃない。
 私はジャッキー至上主義ではあるけど、あれだけカッコ良いアクション場面が撮られているなら、スタントがどうとか気にならない。ていうか、殆ど『プロジェクトA』や『プロジェクトA2』、『ポリス・ストーリー』だ。しかもそれの凄い版。ポール・グリーングラス監督はジャッキー映画を観たことあるんじゃないの?
 とにかく今作はグリーングラス監督の手腕が一分の無駄なく発揮されている。手持ちカメラで撮るドキュメンタリー・タッチの手法は、かなり今さら感があると思っていたが、いや、そんなことは全くなかった。
 グリーングラス監督の前作『ユナイテッド93』もドキュメンタリー・タッチの手法が活かされたサスペンスの傑作だった(最後の最後で大失敗作に堕ちるけど)。緊張感の持続が巧いのだ。それは、手持ちカメラによる臨場感もあるけど、何よりも編集の巧さだ。とにかくカットが多く、1カット1カットが短い。
 観客は目まぐるしく移り変わるカットに翻弄されるうち、編集のマジックによって、現場にいるような気分に陥る。サスペンスとして『ユナイテッド93』は最高レベルの出来だった。
 『ユナイテッド93』より前に撮られたボーン・シリーズ2作目『ボーン・スプレマシー』でもグリーングラス監督の手腕は発揮されており、アクション場面の緊張感は凄かったが、今作は前作を上回るカット数だ。前作のカット数も通常の映画より多かったけど、今作は2倍。
 カーチェイス場面では瞬きしているようなカットの連続。それが、下手な監督になるとごちゃごちゃになりすぎて、画面で何か凄いことが起きているのはわかるけど何が起きているのかさっぱりわからなかったりする(代表例が『バッドボーイズ2バッド』)。ところが、グリーングラス監督はそうならない。本当、編集の巧さだと思う。小刻みな数千カットの編集、気が遠くなりそうだ。

 アクションは凄い。それと並んで物語も面白い――となれば良かったんだけど、凄まじいアクションの連続に紛れてしまう程度の面白さ。よくよく考えると物語には欠陥がいくらでもあることに気付く。でも、物語がボーン・シリーズより出来の悪いアクション映画なんて山ほどあるし、物語が少し面白くないのなんて、大した問題にはならない。それに、ちゃんとシリーズ作であることを意識して整合性を取っているので、決して物語をおろそかにしているわけでもない。
 どのようにシリーズを強く意識しているかというと、今作で初めてボーン・シリーズを観る客用に簡単なシリーズのおさらい場面を盛り込むようなことをしていない点。もう、一見さん完全無視
 例えば前作の最後。CIAの調査局長パメラにボーンから電話が入る。パメラはボーンに本名を告げる。ボーンは、パメラに「顔色悪いよ。休んだら」という。その一言で、ボーンはパメラの近くから電話をかけていることがわかる。そうボーンの健在ぶりを強調して、前作は幕を閉じる。そして今作は、そこから始まらない。何と、前作の最後の少し前から始まるのだ。それは前作を観ていると、「おおっ!」と思わず唸ってしまうような展開だった。巧い。
 今作を観る時は、先に『ボーン・アイデンティティ』と『ボーン・スプレマシー』を絶対に観ておこう。

 あと、脇を固める女性陣もボーン・シリーズの要点だろう。1作目は彼女になるマリー、2作目はCIA局長のパメラ、今作はシリーズ常連のCIA局員ニッキー。ニッキーはボーンの彼女にはならないし、そんなに助けにもならない。ならないが、シリーズで最も重要な役となった。
 ニッキーは1作目からずっとむっつりしているけど、その演出が最後の最後に活きるのだ。たぶん、それは最初から予定済の演出ではないだろう。原作を読んだことないから知らないけど、今作を作る時に思い付いた演出なのではないだろうか。その最後の場面を見て、「このシリーズは傑作として終えられたな」と思った。どう考えても辛く暗い物語に、最後のニッキーの場面で、物凄い開放感を与える。拍手喝采のラストだ。

 1作目では「海に浮かぶ何も持たない男」で始まり、2作目では「水中で大切なものを失う男」で始まり、完結する今作では「全てを取り戻し、生命の根源たる海に帰る男」で終わる。
 知性的で肉体的なボーンを、デイモンさんは上手に演じ切った。最初は自分を知らない不安に苛まれるだけだったのが、自分を知れば知る程、今度は罪の重さに苛まされる。全てを取り戻しても、ずっと辛さは続く。ずっと逃げ続けるしかない。その末路に幸福はないだろう。そんなボーンを、ちゃんと演じていた。間違いなく、デイモンさんの生涯の代表作になる。
 自分を持たない男が、自分を取り戻すまでを、凄まじいアクションの連続で描いたボーン・シリーズは、世にたくさんある「三部作」の中でも、特にアクション映画の中では、最高級だ。

 最後に一言。頼むから続編は作らないで!
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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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