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2008-10-12

『イースタン・プロミス』は、真面目で律儀

 デヴィット・クローネンバーグ監督の『イースタン・プロミス』を観た。正直、普通の出来だと思った。
 ヴィゴ・モーテンセンさんが主演だからか、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に似た感触の映画だけど、全く違う。クローネンバーグ監督作品では、『デッド・ゾーン』や『スパイダー』に似ている。つまり、普通に面白い、という。

 クローネンバーグ監督の特徴は、「変態性」と「妄想」なんだけど、『イースタン・プロミス』にはそれが全くない。だから別にクローネンバーグ監督が撮らなくてもいい映画だ、というわけじゃない。どう観てもクローネンバーグ監督らしい映画ではある。
 例えば、モーテンセンさんを『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に続いて主演で使うくらい、あの「爬虫類顔」が気に入ったんだろうな、とか。『ヴィデオドローム』のジェイムズ・ウッズさん、『裸のランチ』のピーター・ウェラーさん、『戦慄の絆』のジェレミー・アイアンズさん、『デッドゾーン』のクリストファー・ウォーケンさんなどなど、冷血動物的な役者を好んで使うのがクローネンバーグ監督だ。モーテンセンさんもその系譜に連なる。
 で、そんなクローネンバーグ監督好みのモーテンセンさんが、素っ裸のフリ○ンで格闘する場面なんて(ボカシが一切ありません。映倫さん、偉い)、真面目に撮っているのか、趣味なのか、ちょっと悩んでしまう(いや、ふざけてはないだろうけど)。何でそう思えてしまうのかというと、いわゆるフェチっぽさがなく、撮り方が普通なのだ。
 「とりあえずサービスしときました~」的な残酷ショットも、メチャクチャ普通。刃物で首を掻っ切る残酷場面は2つあるんだけど、別に映す必要のないショットなのに、切って、血が溢れるまでを律儀に撮っている。首にマフラーを巻いた男の首を掻っ切る場面では、切られた男がわざわざマフラーをほどいてパックリと開いて血が溢れている傷口を見せる。そのわざとらしさ。別に傷口をみせなくても――マフラーがじんわりと赤く染まり、「ゴボゴボ」いいながら倒れるでも――いいじゃないか。それなのに、わざわざサービスショットとばかりに傷口を映す。実はその2つの場面、物語の伏線にもなっている。だから律儀に残酷に見せている。
 フ○チン戦闘場面にしたって、別に○リチンであることを見せる必要はない。カメラアングルで見えないように演出するのが不自然だから、というなら、ちゃんと見えるように演出するのも不自然だ。そこに優先されるのは、観客の欲求じゃないだろうか。『イースタン・プロミス』は、とても律儀な映画なのだ。それは演出だけでなく、物語そのものも。

 モーテンセンさんが演じる主人公はマフィアだけど、その正体は刑事だ。つまり、潜入捜査官。主人公は、まあまあで辞める、ということをしない。生真面目に、職務に忠実だ。ちなみに潜入捜査官であることが観客にわかる場面は、前述したゴアショットが伏線になっている。これがまた、「気付いて下さい」といわんばかりにわかり易く、“あの場面”でわからない観客がいたら、それはかなり鈍い人だ。
 その主人公に惹かれる、ナオミ・ワッツさん演じる看護士も、やらなくてもいいことを生真面目にやる。そのために危険な目に遭うってのに。
 登場人物が律儀なら、物語のエピローグも律儀だ。というか、登場人物のその後を語るエピローグがちゃんとあるのが律儀だといえる。別になくても構わないのに。

 モーテンセンさんの演技は素晴らしい。それだけで映画を支えているといっても過言でない素晴らしさだ。その演技を真正面から撮る演出も素晴らしい。狂気を孕みそうで孕まないマフィアの日常を、過剰には走らず、地味に落ち着くわけでもなく、冷淡に描いていて素晴らしい。しかし、もう一味が足りない。脱線しそうになるバランスの悪さが、ない。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』にはそれがあった。
 『イースタン・プロミス』は、老熟した良さはあるけど、それだけだ。いや、それだけでもかなり高レベルな映画なんだけど、例えばクリント・イーストウッド監督なら、もっと凄い映画を撮っただろう。その違いは、ショットの力の差じゃないだろうか。
 クローネンバーグ監督は、いわゆるホラー映画を撮り続けて来た。単なるホラー映画監督としてだけでない評価を得ているのは、「人間」をちゃんと描いてきたからだ。そして、ホラー映画は、「人間」を描きつつ、際立って「現象」を描くジャンルだ。今回、クローネンバーグ監督は「現象」を殆ど描かなかった。そうすることで「人間」を描こうとした。それはとても成功している。でも、ちょっと律儀すぎると思った。「現象」は、映すだけで力があるから、「人間」を描くためのショットの力とは別物だ。『イースタン・プロミス』は、「現象」を撮るように「人間」を撮っている。そこが、全体的に凡庸な映像になってしまっている要因なんじゃないかな。もしもイーストウッド監督なら、同じように河を扱っても、もっと畏れのある河として撮っただろう。
 でも、傑作であることは間違いないし、年数が経つことで価値が落ちるような映画でもないと思うけど。
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テーマ : 映画感想
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tag : イースタン・プロミス

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Author:ばっどていすとさんどいっち
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2位が『溶解人間』。
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