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2008-09-17

渡辺文樹監督は、ロマンチスト

 14日の深夜に開催された、カナザワ映画祭の駅前シネマでの覆面オールナイト上映は、渡辺文樹監督の特集上映で、予想通りでも驚いてしまった。渡辺監督の話によると、上映日当日には駅前付近にポスターを貼りまくったそうで、私はそれを知らず、駅前シネマの入り口に渡辺監督作品のポスターが貼ってあるのを見て初めて知ったので、驚いた。カナザワ映画祭と駅前シネマ、やるなぁ。
 渡辺監督作品は、情報として知っていたけど、実際に観るのは今回が初めて。上映された映画は、『ノモンハン』、『天皇伝説』、『腹腹時計』の3本。そして、渡辺監督、ミュージシャン(兼文筆家)の中原昌也さん、『映画秘宝』の田野辺尚人さんという御三方によるトークショウ。

 渡辺監督は、各映画の上映前に簡単な解説をしてくれた。作ろうと思った動機、調査して判明した事柄、歴史的な意味合いとかを。その解説を聞くだけでも面白く、この時点でサービス精神旺盛な人であることがわかった。
 さて、肝心の映画は、噂と違って全然ちっともまぁーったく、過激でなかった。逮捕されたり、右翼と揉めたりという数々の戦歴が不思議なくらい、普通に娯楽映画だった。いや、まあ、確かに扱っている内容は過激かもしれない。皇族の血筋はおかしいとか、天皇暗殺とか。渡辺監督は、『腹腹時計』上映前に次のように語った。

「外国の映画では、大統領や王族が殺されたりするんだから、天皇が殺されたっていーじゃないか」

 確かに。日本人には、「天皇」は最も盛り上がる要素かもしれない。
 『天皇伝説』は、アメリカのイラク侵攻と、橋本元首相の金融スキャンダルと、皇室財産を一本の線で結び、皇族の血筋にまで迫る、詰め込みすぎて何の物語か最後には忘れてしまうアクション映画だ
 『ノモンハン』は、「ノモンハン事件」と終戦と皇族の関係を強引すぎるまでに結んだ挙句、男女の痴話話になったりならなかったりする映画だ。
 『腹腹時計』は、東アジア反日武装戦線による天皇暗殺事件を描いた、架空の「もう1つの日本史」アクション映画だ。
 どれも普通の感覚からすると、とんでもなく危険極まりない題材を扱っているけど、危険極まりないからこそ、とっても面白い。しかし。
 
 TVで皇族の特集番組が放送されることがある。結婚した、亡くなった、産まれたって時に各TV局で何時間でも放送してるやつ。あれ、日本中が注目してるとか、視聴率が高いとかTVではいってるけど、大嘘だよね。
 私は昔、レンタルビデオ店でバイトをしていたから、よーく知ってるのだ。皇族の特集番組が何時間も長々と放送される日のレンタル率の高さを。だって、何が面白いの、皇族の特集って? 選挙の開票番組と皇族の特集番組が長々と放送されている日は、正月以外では最もかき入れ時なんだよ、レンタル店にとっては。
 だから、それを前提に渡辺監督作品を観ると、正直いって、テーマは過激どころか単なる時代遅れにしか思えない。今さら「天皇」といわれてもねぇ。渡辺監督作品を「過激」というキーワードで語る人は、渡辺監督作品を理解するしない以前に、「普通の感覚」を持ち合わせていないんじゃないか? 「普通の感覚」からすると、天皇のことなんてどうでもいいんだよ。

 例えば『腹腹時計』と『天皇伝説』は、どちらも天皇という禁忌を扱いながらも、明確な娯楽映画となっている。前者は黒澤明監督の『天国と地獄』や『ブラック・サンデー』みたいだし、後者は『逃亡者』のようだ。
 だから、不思議だった。訴えたいことがあるなら、何でドキュメンタリーにしないんだろう? 『靖国』みたいに(渡辺監督は、『天皇伝説』の前フリで『靖国』をかーなり貶してたけど)。劇映画になぜこだわるのか。
 しかし、『腹腹時計』を観て、やっとわかった。渡辺監督は、ロマンチストなんだ。即物的に訴えたいことを映すだけじゃ満足できないのだ。物語によって、ロマンを紡ぐのが好きなんだろう。革命家は、常にロマンチストじゃないか。それに、観客がドラマによって一喜一憂する姿を見たいんだ。何よりも、まずは映画好きなんじゃないか?
 『天皇伝説』の後半のアクション場面の連続、ロープウェイでの戦い、橋の上での撃ち合い、そこには古き良き娯楽映画の味わいがあった
 渡辺監督は、各映画の上映前の解説で必ず最後にこういう。

拙い映画ですが、最後まで観てやって下さい

 製作費が安いからか、ただ単に技術的な問題なのか、アクション場面は稚拙だ。出演者はみんな素人ばっかだから、演技だって程が知れている。やたらと頑張っているのは、主演もしている渡辺監督だけ。それについては、「他人が信じられないんだよね。自分で演じた方がいい」といっていた。つまり、確かに間違いなく拙い映画なのだ。
 しかし、その稚拙さに反して、アルフレッド・ヒッチコック監督か、はたまたハワード・ホークス監督かという瞬間がある。もしかしたら……今の多くの邦画に欠けているものが『天皇伝説』にはあるかもしれない。

 フォーマットもジャンルも方向性も雰囲気も全く違うけど、宮崎駿監督と渡辺監督は近い感じがする。大反論されるだろうけど。『天皇伝説』は、『崖の上のポニョ』……いやいや、『千と千尋の神隠し』に近いような気がした。たぶん、私の頭がおかしいのだろう。渡辺文樹監督と宮崎駿監督を並べて語るなんて、馬鹿丸出しだ。でも、怒っていて、ロマンチストで、変にリアリストで、そしてそして、「映画」であろうとしている点が同じだと思った。そんな映画作家、今の日本に多くはいない。
 同じ日に観たクリスピン・グローヴァー監督の『It is Fine! Everything is Fine.』と違って、渡辺監督作品は、「人間」を描いていない。でも、「映画」だ。同じように自主制作で、個人で巡業していて、昔の見世物のような原始的な「映画」である点は間違いなく共通するんだけど、それ以外は、グローヴァー監督と渡辺監督に似ている点はない。けど……心から観てもらいたくて作ってある点は同じだ。渡辺監督に至っては、逮捕されてでも(それすら宣伝の一環と思っている節があるけど)、観てもらいたいと思っている。過激さが売りなら、そんなことはないと思うのだ。
 例えば、同じカナザワ映画祭で観たいくつかのドキュメンタリー映画には、正直いって観る価値のないものもあった。こんな事件が起きてます。その真実を映しました。ふーん、だから何? 嘘でもいいから、アジってくれよ。本当に、何かを伝えたいのか? 観客を映画の中に巻き込んでくれよ。邦画だけでなく、洋画を含めたって、それができてない映画はたくさんある。私は、意外とM・ナイト・シャマラン監督も渡辺監督に近いんじゃないか、と思ったりする。観客との共存関係の外で映画を作ろうとしている点が、似ていると思う。

 渡辺監督作品は、最後がスッキリしない。いつまでも、何かを追い求めたまま終わる(観ていない他の映画もそんな気がする)。『腹腹時計』で主人公は、志半ばに死ぬ。『天皇伝説』は、目的はとりあえず果たす。『ノモンハン』は、歴史が動くけど、主人公たちは放ったらかしだ。
 渡辺監督は、国民に隠されている日本国の陰謀をしつこく描く。真実という意味でなら、「天皇は実は不倫をしていた」を題材に恋愛物語の映画を作ったっていい筈だけど、そんなものは作らない(後に作るかもしれないけど)。
 過激だから、という理由だけでそんな映画を作っているのだろうか? 自主制作で儲けようと思ったら、過激でないと客が入らないから?

 質疑応答で渡辺監督は、「いずれ資本主義は駄目になりますよ。そしたら社会主義になりますよ」といっていた。そこからも渡辺監督がロマンチストであることがわかる。革命。ロマン。しかし、見果てぬ先は、資本主義にしか存在しない。その原動力は、人間の欲望だ。
 渡辺監督作品に欠けているものがあるとすれば、「人間の欲望」だろう。『ノモンハン』にも『天皇伝説』にも『腹腹時計』にも、「人間の欲望」は描かれていない。「状況による判断」だけだ。状況を割くことが、ロマンに結び付いている。だから、最後はスッキリしない。いつまでも終わらず、現状を許さず、理想を追い求める、それが渡辺監督作品ではないだろうか。過激なのは、オマケだ。過激を追うのも、ロマンなのかもしれない。有体にいってしまえば、状況に陶酔する――そんなロマンかもしれない。
 根っからのロマンチストである渡辺監督には、だからもっと多くの人々が観られる映画を作ってもらいたいが、ロマンチストだから、巨大資本で誰もが観られる映画なんかには興味がないかも。自分で運んで、偶然の出会い、真剣に観たい人との出会い、そんなロマンス。扱っている題材は過激だろうけど、できた映画は過激じゃない。ロマン溢れる娯楽映画だ。
 だから『天皇伝説』は、『腹腹時計』よりも、ずっと「映画」になっている。はっきりいえば、『腹腹時計』の方が映画としてはまとまってるし、撮影も編集も“マシ”だ。しかし、そーゆーものを取り除いて、「面白い映画」であることが純粋に強調されているのが、『天皇伝説』だ。宮崎駿監督が、『もののけ姫』以降、段々と異常な映画を撮るようになったのと、シャマラン監督が『レディ・イン・ザ・ウォーター』を撮ったのと似ていないか?

 渡辺文樹監督はロマンチスト。世間はもっとその側面を強調してもいいと思うのだけれど。
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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : カナザワ映画祭 渡辺文樹

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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