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2008-07-11

『能登の花ヨメ』の多大なる間違い

 『能登の花ヨメ』を観た。能登震災復興映画で……それだけの映画。
 震災復興映画といえば、最近では赤井英和さん主演の『ありがとう』がある。阪神大震災から始まる奇跡のような実話の物語。あれは、駄目な点もたくさんあるけど、面白かった。ちゃんと「還暦過ぎてデビューしたプロゴルファー物語」という「売り」があった。『能登の花ヨメ』はどうだったか。

 物語はありふれている。都会者が田舎に引越し、カルチャーショックを受ける。しかし、田舎特有の温かみある人情に触れ、田舎の良さを知る。古今東西、何度も作られてきた物語だ。
 都会者が田舎で過ごす物語――そのタイプで私が好きなのは、マイケル・J・フォックスさん主演の『ドク・ハリウッド』。一般的には、フォックスさんの人気下り坂最中の1作として、低い評価の映画だと思うけど(実際、大ヒットはしなかった)、印象深い場面があって、私は大好きだ。それは、フォックスさん演じる医者が念願のハリウッドに行くことができたのに、郷愁にかられ、電話で今までいた田舎町の天気予報を聞く場面だ。全体的には凡作なんだけど、この場面だけがとても好きなので、部分が全体を越えた。『能登の花ヨメ』には、全体も部分もどっちも特別に印象深い場面がなかった。
 
 まず、『能登の花ヨメ』は震災復興映画なので当然、物語は震災絡みになるのだけど、震災については中盤以降からようやく登場する。観ている最中、このまま震災については言及しないのか、と思ったくらい、震災について触れられていない。震災について何も触れられてないんじゃ、存在価値のない映画だ。『ありがとう』では、全面的に震災復興を扱っていた。震災からの復興と、人生のやり直し――それを1つに合わせて物語としていたから、感動的だった。それが『能登の花ヨメ』にはなかった。
 ならば、『能登の花ヨメ』の「売り」というか見所は何なのか。これが、ちっともないのだ。能登を舞台にしたからには、海とか朝市とかあるわけだけど、それは全くなし。キリコ祭が登場するけど、これが全く魅力的に扱われていない。後半、最も盛り上がる場面であるキリコ祭なのに、撮り方が凄まじく下手くそだから、キリコ祭を全く知らない人々には、何が盛り上がるのかさっぱりわからないだろう。あれを見てキリコ祭のために能登を訪れたいと思う人は少ないだろう。
 キリコ祭は震災によって休止中だったんだけど、田中美里さん演じる主人公が開催しようとする。そこが『能登の花ヨメ』の最大の見所になる――のに、物語の盛り上げ方が下手くそ。田中さんがキリコに興味を抱くシークエンスに説得力がない。そもそも製作者側がキリコ祭に魅力を感じてないような、能登にはキリコ祭しかないと思ってんじゃないの――そのようにしか感じられない。たぶん違うだろうけど、そう感じるようにしか作れていない。
 田中さんがキリコ祭を開催しようと考えたのは、内海桂子さん演じる近所のおばあちゃんの死がきっかけ。内海さんが「キリコ祭、見たいなぁ」といっていたから、何がなんとしてもキリコ祭を開催したかったのだ。それならそれで、最後に内海さんが幽霊で現れ、ニコニコの笑顔を残してすーっと消え去って行く――そんなあざといまでに嘘臭い演出をしても良かった。映画は嘘をついてナンボだ。盛り上げるためには、あざとい演出でも何でも使うべきなのに、非常に地味なのだ『能登の花ヨメ』は。
 結果的に描かれる能登に魅力を見出せない映画になってしまっている。別に能登が舞台でなくてもいいよ、あれなら。まあ、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』よりは能登っぽくはあるけど。
 『ドク・ハリウッド』にもある定番の展開として、一旦は都会に戻るが、田舎が忘れられなくて思い出してばかり――というのがある。『能登の花ヨメ』にもそれは当然あるんだけど、処理の仕方が駄目。高齢化社会だからいかに年寄りばかりの田舎町で独り暮らしをするのが大変か、と説得されるわけ。そんなの別に他の地域でも一緒でしょ。むしろ都会での孤独死はもっと悲惨だ。
 全体的に見て、小道具の使い方が下手。泉ピン子さん演じる義母が、田中さんがコーヒーが好きだからと、嫌々コーヒーを飲もうとするシークエンスは、もっと生かすべきだった。台詞で仲良しになることをあからさまに喋らせるより、たった一杯のコーヒーを泉さんが飲む、それだけで伝わるものは十分伝わる。サービスすべき場面でサービスを怠り、しなくてもいい場面で無駄にサービスをしている、それが『能登の花ヨメ』だ。

 地震映画として印象深い映画は他にも1作あり、『ありがとう』にも出ていた薬師丸ひろ子さんが出ている『マグニチュード 明日への架け橋』がある。これは題名通り、地震そのものがメインの映画で、最も盛り上がる最大の見所がバケツリレーという凄まじく地味すぎる映画だ。余りに地味すぎて、逆に覚えてしまった。それはそれで「売り」だろう。
 それを考えると、『能登の花ヨメ』は、平凡。普通に楽しめるし、普通に面白い。極めて駄作でないし、といって傑作でもない。主演の役者には名前だけで観客が集まるような人は1人もいないし、といって人気のない役者ばかりでもない。舞台となる能登は、観光地として魅力的とはいい難いけど、全く観光地として機能しないともいえない。何とも、平凡。それはそれで「売り」になるかもしれないけど……平凡は当然のように忘れ去られるだろうなぁ。
 下手に震災復興を全面に出したらカッコ悪いとか思ったのかもしれないけど、復興なんだからもっともっとアコギに作るべきだった。ズルイと思うくらいに、笑わせ、泣かせ、感動させ。地元住民は、「震災復興映画」と聞けば観に行くだろうけど(私がそうだ。観るだけでも震災復興に協力できるのでなければ、観に行くような映画じゃないもん)、それ以外の地域住民は観に行かないだろう。
 実際、石川県以外で上映の決まっている地域って、全国でも今の時点で11館だよ。北陸3県では、富山県で1館しか決まってない。その数字が、『能登の花ヨメ』の平凡さ、魅力のなさ、そして失敗加減を如実に語っている。一応、震災復興映画だからもっと増加してヒットすることを望むけど……どうだろうか? 良い子ちゃんの慈善事業みたいで、つまんないんだよね。
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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : 能登の花ヨメ

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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