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2007-10-17

キングダム/見えざる敵

 『キングダム/見えざる敵』は、今のイラク情勢をどう考えているかで評価が少しだけ変わる。アクション映画だけど、政治映画でもあるからだ。
 ま、政治的なあれこれを無視しても、普通にアクション映画として傑作だけど。

 始まりは、のどか。舞台はサウジアラビア。石油会社社員の外国人居住区で、アメリカ人たちが青空の下、野球をして遊んでいる。
 そこへテロリストが襲撃してくる。居住区の警備員にもテロは紛れ込んでいた。反米主義のテロは、アメリカ人を女子供年寄関係なくマシンガンで撃ち殺す。阿鼻叫喚のパニックの中、サウジの警察が犯人を撃ち殺し、襲撃は終わる。しかし安心したのも束の間、避難した先で空爆レベルの自爆テロが起きる。月のクレーターみたいな穴が開く程の爆発。大人数が死に、重症を負う。
 この、自爆テロの現場を実体験させてくれるような迫力に満ちた始まりが、素晴らしい。のどかな日常が一転して地獄に変わる。ツカミは完璧。否応なく作品の中に引きずり込まれる。
 爆発の被害者には、FBI捜査官が含まれていた。主人公は、その同僚。仲間数人とアメリカからサウジへ捜査に行く。しかし、当然の如く捜査は簡単に進まない。FBIはアメリカ以外では何の権限も持たないし、サウジの警察は非協力的だし、大使館の対応は官僚的だし、街でも自由に動けない。しかも、サウジに滞留できる期間は5日間。その上、テロからは常に狙われている。
 どうにもこうにもならない状況で、それでも主人公たちは現地警察と少しずつ協力しながら、捜査を進める。このパターン、アメリカ映画のバディものなんかの定石だ。ジャッキー・チェン主演の『ラッシュ・アワー』とか。日本なら、キャリアとノンキャリアが協力をする『踊る大捜査線』とか。
 進行を妨げるような展開はなく、物語は非常にスピーディーに進む。

 後半、主人公たちの乗っている車がテロに急襲され、護衛していた警察の車もろとも爆発炎上する大事故に。そこを狙われ、FBIの1人がテロに拉致られる。主人公たちは、テロのアジトに攻め込まざるを得なくなる。
 後半の展開は、FBIによるテロの捜査というより、単なる悪者退治のドンパチ合戦になってしまうけど、息つく暇もないアクション場面が続く。アジトとなっている居住区は過激派の巣窟で、主人公たちは全方位からマシンガンやライフルや小型ミサイルや手榴弾で攻撃される。正に怒濤。手持ちカメラだけで撮影されたこともあり、現場に居合わせるような緊張感がある。『プライベート・ライアン』以降の、ガタガタ揺れまくる演出にはいい加減飽きたけど。

 結末は、一応はハッピーエンド。「一応は」と書いたのは、それが本作のキモだから。

 サウジ、石油、テロと並べれば誰だって連想するのは、ニューヨークの貿易センタービルを襲った9.11テロ。主犯とされるビンラディンはサウジの金持ち坊ちゃんだ。しかしアメリカは、サウジには手を出さず、アフガンと、テロに全く関係のないイラクを攻撃した。石油のため、サウジとは懇意でありたいからだ。
 イラク戦争はあらゆる意味で間違っていた。イラクは確かに野蛮国家だろうが(アメリカだって似たり寄ったりだけど)、アメリカに対してテロを起こしたことはない。大量破壊兵器だって持ってない。そして、例えイラクが9.11テロの主犯国家であったとしても、戦争でなく、捜査にすべきだった。
 本作の主人公は、サウジで仲間がテロに殺されたから、テロリストの捜査にサウジへ行く。これがアメリカで起きた事件だったら、どうなるだろう? サウジへ侵攻するかもしれない。捜査はしないだろう。
 戦争を起こせば、関係ない人々まで巻き込んでしまう。巻き込まれた人々は、巻き込んだ人々を恨み、いつか仕返ししてやると思うだろう。復讐が復讐を生み続ける負の連鎖。アメリカの行ったことはそれを最悪の形で実現させたにすぎない。しかも、さっさとアメリカ軍を撤退させりゃいいのにずっと駐留しているから、異教徒(アメリカ人)に対するジハードが成立してしまう。おかげでイラクからサウジにもジハード熱は伝播した。本作が描いているのは、そんな状況下だ。
 結末は、アメリカ側から見るとハッピーエンドになる。主人公は、望みを叶えた。最後に明かされる望みの正体は、決して正義によるものじゃなかった。じゃあ、サウジ側から見たら? 片方のハッピーエンドは、もう片方のハッピーエンドとなるわけじゃない。サウジ側の望みは叶うのだろうか?

 本作は、描いている内容が内容だけに、ポリティカリィ・コレクトをかなり考慮している。アメリカ寄りのおかしな描写は結構あるけど(白人よりも有色人種の方がバッタバッタ死んでしまうとか)、それでも今までのハリウッド映画に比べれば、かなり公平に描いている。特に最後の場面、最後の台詞は、今のアメリカを真正面から批判していて強烈だ。同時に、日本人も加担してしまったイラク戦争の戦後は、いつまで続くのかと思うと、ぞっとさせられる。
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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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