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2007-10-11

モテる部屋

 それはいきなり目に飛び込んできた。どこかの建築会社のモデルルームの前で、風に揺れる派手な色をしたのぼり。それに書かれていた文字。
 
「モテルルーム」

 モデルではない。「テ」に「゛」が付いていない。間違いなく、「モテルルーム」だ。モテルルームのモデルルームだ。熾烈な客獲得競争の末、遂に最近はこんなものまで現れたのか。VOWにでも投稿すべきなのか、どのようにモテるのか、非常に気になるところだ。
 モテた経験のない私は、モテ要素の少ない脳ミソでモテる部屋というものを考えてみた。
 まず、風水。モテ方位、モテ間取り。吉方位に玄関を作り、凶方位にトイレを作り。他にも、観葉植物を置いて癒し効果を上げ、パワーストーンを置いてパワーアップを図り、アロマテラピーもして。

 次、内装カラー。モテカラー。全方位型でいってみよう。とりあえずピンクは基本。若々しく見せ、異性に媚びますよ。で、白。清潔感と心の純真さを強調しますよ。オレンジ。元気さと暖かさを強調しまっせ。黄。やんちゃな子供っぽさを演出。ベージュ。大人っぽさも演出。時には大人で、時には子供なのさ。緑で癒し。青でクールに。紫で高貴さを醸し出してみる。さらに、赤で情熱を。燃えますね。
 各色の配置。白は、トイレでしょね。青はキッチンかな。ベージュはリビング。紫は寝室、ベッドのシーツは赤に。緑は廊下。ピンクはスリッパ。オレンジを玄関に。黄は……カーペットで。
 そんな部屋嬉しいかどうかは、さて置こう。

 立地条件も良くなきゃいかん。場所は、中心地の、街中の、セキュリティ完備の、おっきなマンションの、最上階。

 設備だって立派にしなきゃ。オーディオ関係、家具、みーんな最新型。それらをこれ見よがしに自慢したりしない。適当に家電店で買った感じを。

 掃除だって欠かさず行わなきゃ。でも、ベッドの下の隙間に雑誌類を詰め込んで、相手が来たから急いで片付けた感じを演出して、少しのだらしなさも残す。しょうがないなぁ、もう。とか思わせれば、勝ち。

 相手を呼んだ時、食事は自分で作った方が意外な一面を見せられて、ポイント高しだ。料理だってそこそこ出来なきゃ。今日はちょっと奮発して、フレンチ作るよ。

 部屋着も、自分ちだからと気を抜いて安物ジャージなんて駄目。外でも内でもキメる奴と思われたい。外ではビシっと、内では適度に力を抜いた感じを見せる。やはり、意外な一面を見せて好感度アップを図る。

 相手を呼んだ時に、TVやDVDをただ見たり、見ながら話すのは止めとこう。そんなものがなくても時間を忘れさせる会話術、話題の豊富さを持つ。帰りたくなくさせるんだ。

 上記全ての条件を満たすのに、身分も重要。親の七光り的な金持ちでは駄目。しっかりと自立していることが重要。
 外でバリバリと働くエリートぶり。後輩を時には厳しく叱り、時には甘くなり、頼れる先輩。上司からは、常にあらゆる仕事を頼まれ、どんな時もそれに応え続けられるタフさ。他社の営業からも常に名前の出る、当社随一の敏腕社員。引き抜き、海外栄転の噂は絶えず。
 雑誌には、気になるカリスマ社員とか、街のオシャレなこの人とか、載ったりする。
 しかも、そんなあれこれに鼻を高くすることがない、普通さ。

 最近では芸能界デビューの噂も囁かれ、マスコミの取材も頻繁。
 アイドル芸能人にも友達多く、こないだなんか、某有名アイドルグループの武道館コンサートに飛び入り参加。あれ誰!? という客の疑問と不満も、最近よくTVに出てるカリスマ社員だ! という誰かの叫びによって、瞬く間に嬌声の嵐へと様変わり。某有名アイドルグループのリーダーとデュエットというサプライズに至っては、客席は阿鼻叫喚の大騒ぎ。中には、アイドル辞めないでー! と泣き叫ぶ者も。某有名アイドルグループとシングル曲を発表する約束を交わし、その日のコンサートは終わり。
 翌日のワイドショー、スポーツ新聞、ネットでは、新時代の到来、と特集が組まれる。キーワード検索で私の名前がトップに。芸能人でもアイドルでも、ただの会社員でもない、普通の人なのか特別な人なのかよくわからない、史上最初の特殊人の誕生。

 そして月日は瞬く間に流れ、数十年後。
 遂にこの世との別れの瞬間が迫ってきた。傍らには、最愛の人が、涙を流しながらこちらを見つめている。周囲には、見舞いに来た、数え切れない人々が麓までいる。
 ここは山頂。天にも届かんとするこの山は、私の功績を称えた無数の人々が命を賭けてこしらえた、エベレストよりも高い人工の山だ。人生の最後、私は皆に運び上げられ、山頂の、正に史上最高の頂きに横たわっている。
 最期の瞬間を逃さないよう、世界各国の人工衛星が私の遥か上に密集している。空の向こう、ピカピカ光っているのが見える。
 空気が薄いここでは、息をしているのか、もう死んでいるのかもわからない。人々のすすり泣きの声が、地響きのように聞こえる。それだけが、意識できる。幸せな人生だった。モテルルームに住んでから以後、前人未到の人生を走ってきた。悔いは、一片もない。私を巡って第3次世界大戦が勃発した時はどうしようかと焦ったが。
 ああ、天から光の筋が降りてくる。私を包む。まるで、無重力空間に解き放たれたようだ。身体が軽い。人々のすすり泣き声が、号泣の叫びに変わっている。泣くな。これはめでたいことなのだよ。
 私は死んだ。と同時に、山が大噴火。連なるように、世界中で山々が大噴火。海底火山も大噴火。地球が大爆発。人類の歴史は終わり、新たな宇宙の歴史の始まり――

 よく見たら、モテルルームののぼりには、泥が付いてて、「デ」の「゛」が隠れてただけだった。やっぱモデルルームだった。
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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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