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2008-03-18

『魔法にかけられて』は観客に魔法をかけられない

 私は基本的に歌って踊る映画が大好きなので、どんな映画でも歌って踊る場面があるだけでかなり評価が甘くなる。従って『魔法にかけられて』も、かなり大好きな作品だ。

 いかにもディズニーらしいおとぎ話のアニメの住人が、現実の実写世界に現れる――それだけのワンアイデアで押し通し、『シュレック』で散々コケにされたネタを自家薬籠中の物とする。登場する自虐ネタは、シンデレラ、白雪姫、眠れる森の美女などのディズニー定番ネタから、ドラゴン・スレイヤーにキング・コング(!)まで。シチュエーション一発、アメリカが得意とするウェルメイドなコメディ。私、大好きです。

 主人公のジゼルは、いわゆるディズニー・キャラなので、感情が昂ぶると歌い踊り出す。アニメ世界にいた時は別に違和感ないんだけど、現実世界でそれやると、単なる頭のオカシイ女の子になっちゃう。一緒に現実世界に来たエドワード王子も、同様。いきなり街中で歌いだすから、みんな引くんだよね。
 また、ジゼルが「ラ~ララ~」と声を出すと、どこからともなく動物がたくさん集まってくる。現実世界なので、小鹿やリスとかでなく、大量のドブネズミやゴキブリだったりするけど。
 完全にディズニータイプをコケにしている。しかしそこはやはりディズニー、何としてでもミュージカルに展開させる。そのミュージカル場面をもっと頑張って用意してほしかったなぁ。ギャグのネタのためだけに使うんでなく。
 他にも、アニメ世界では人間と同じに喋ってたリスが、現実世界だと喋られなくなってコミュニケーションに困ってしまう、ってのもおかしかった。リスはだから、身振り手振りで話したいことを伝える。当然、本物のリスにそんな芸当は無理だから、ここはCGなんだけど、結構良い出来で、可愛かった~。

 しかし駄目な点があって、上映時間を2時間以内に収めるため、人物の掘り下げがなく、全てが類型的な予定調和で進んでしまうところ。
 現実世界でジゼルが好きになるロバートは、離婚してしまって現実的な物の考え方しかできなくなり、夢やおとぎ話が大嫌いで、自分の子供にもおとぎ話は聞かせない。だから最初はジゼルの言動に嫌悪感を示す。これは『三十四丁目の奇跡』だ。
 ジゼルが舞踏会に出るために買い物する場面は、とういか全体的に『プリティ・ウーマン』だし(『プリテイ・ウーマン』はシンデレラ物語なんだから、自己模範だ)。
 ギャグとして織り込んでいるってわけでなく、急ピッチで物語を進めるためにパターンをはめたって感じ。パクリと見るか、ネタと見るかは人それぞれだろうけど。
 なので、全てが予定調和的すぎて、コメディとしては爆笑できないし、ロマンスとしては盛り上がらないし、と微妙な按配になってしまっている。アニメ世界と現実世界の話は上手に融合しているけど、それが映画を素晴らしく昇華させるまでには至っていない。
 配役がちょっと駄目だってのもある。ジゼルのエイミー・アダムスさんは、田舎娘で垢抜けてない感じがピッタリだし、エドワード王子のジェームズ・マースデンさんもアホみたいに突き抜けた王子役がピッタリだったけど、ロバート役のパトリック・デンプシーさんが合ってないと思った。アニメ世界のお姫様が恋をするには、説得力のある魅力が足りない。ロマンスものに於いて、そこは最も重要な部分でしょ。

 というわけで、面白いような面白くないような、微妙ぉ~な映画ですな。私は好きだけど。
 
 ところで、たぶん殆どの人は気にならないだろうけど、私は、ロバートが娘の誕生日に女性偉人伝の本をプレゼントする場面が物凄く気になった。
 そこで登場する偉人に、ローザ・パークスさんが出る。なぜ、ローザ・パークスさんが? アメリカ人なら大半の人は知っているだろう。しかし、ディズニーのラブコメを観る日本人で、どれだけの人がパークスさんを知っているのか?

 ローザ・パークスさんは、黒人女性で、現代アメリカの歴史に欠かせない人物だ。
 昔々、まだ公民権が成立されてなかった頃のアメリカ南部には、人種分離法ってのがあった。公共の場所でも、黒人は白人と一緒にいてはいけないって法律だ。レストランなら、客席を使わせてもらえず、店の正面から出入りできない(裏の通用口を使わせられる)。病院なら、白人の先生や看護士がいると、黒人は診てもらえない。公共の乗物では、座る座席に白人席と黒人席があった。今からするとアホみたいな話だけど(本当は今でもアホみたいな話ではなかったりする。ホワイト・ツリーの一件とか※)、当時はそれが当然だった。そして、そこに登場するのが、パークスさんだ
 パークスさんは、白人席と黒人席が分離されていたバスで、白人席に座った。黒人の分際で白人席に座るな、といわれても、「どく必要がなぜあるのか?」と、どかなかった。しかし、それで逮捕されてしまう。これが公民権運動を後押しする事件となった。見方によっては、キング牧師よりも重要な人物だ。

 こんな話、アメリカ人なら大半は知っているだろうけど、それでもなぜ、わざわざパークスさんの名前を作中に登場させるのか。黒人客に気配りしたんだろうか? たぶん、そうなんだろう。ただ、それがディズニーの『魔法にかけられて』という能天気な映画だったもんだから、私は結構驚いたのだ。アメリカは奥深いな、と。


※一昨年、ルイジアナ州の高校で、校庭の木に首吊り縄がぶら下がる事件があった。
 その木はホワイト・ツリーと呼ばれ、白人生徒だけの憩いの場所だったんだけど、そこに黒人生徒が座ろうとしたら、木の枝から首吊り縄がぶら下げられた。それは、黒人が奴隷だった時代に、白人が黒人をリンチする際に用いたものだった。
 これがきっかけとなり、全米中を騒がす事件へと発展した。ニュー・ヨークでも、あの世界一の大都市であるニュー・ヨークでも、首吊り縄がぶら下げられることが発生した。
 ルイジアナ州っていや、十年以上前に、日本人留学生が「フリーズ!」ていわれたのに意味わかんなくて逃げ出したら射殺された事件のあった地域。そんなとこで起きたのが、このホワイト・ツリー事件。もう、21世紀なのに、人種差別はまだ根深い……
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tag : 魔法にかけられて ローザ・パークス

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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