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2008-01-31

『28週後...』はゴミクズヒューマニズム映画の大傑作!

 最初にいっておきますが、『28週後...』は、出だし10分くらいだけは強烈に大傑作です。物凄い殺伐として、現代の大作なのに、味わいが70年代。刺々しくて、何もかもがささくれ立ってて、暗くて、悲しみと怒りで溢れています。

 前作の『28日後...』は、「短距離走のオリンピック選手並みの勢いでダッシュする」ゾンビ的な映画として衝撃の登場をし、それはそのまま本家ゾンビ映画として『ドーン・オブ・ザ・デッド』に受け継がれ、最早笑うしかないくらい助かる気が全くしない新しいゾンビ映画を生みました。その続編なのだから、もっと凄い勢いになるのかと思いきや、方向性を変え、70年代テイストに。ゾンビ映画というより、ジョージ・A・ロメロ監督の『ザ・クレイジーズ』に近い。
 で、それが出だしの良さ。やはり映画は開始10分が重要ですよね。『ドーン・オブ・ザ・デッド』も出だしの良さだけは古今東西のあらゆるゾンビ映画の中でもトップクラスですが、『28週後...』の出だしの良さも近年まれに見る素晴らしさ。もう、そこだけで大満足。『ホステル』や『ヒルズ・ハブズ・アイズ』ですら温いと思うくらい、痛々しく、悲しく、怖く、非情に残酷。イタリアンでもアメリカンでもどっちでも構いませんが、ニューシネマの心がザラつく感じに全編が覆われています。掴みは完全無欠に完璧。

 主人公は、妻と、何人かの仲間と共に一軒家に隠れていた。そこへ感染者の群れが襲って来る。なす術なく仲間は一人、また一人と襲われてゆく。
 主人公は妻と一緒に逃げるも、途中で妻が感染者に襲われそうになる。主人公の名を叫び、助けを求める妻。しかし主人公は、妻を見捨て、一人で逃げる。助けられたかもしれないのに。

 と、そこまでが出だし10分くらい。
 果たして主人公は逃げ延びますが、見捨てた時の妻の目が脳裏から消えず、心の安息は訪れません。どれだけ言い訳をしても足りない裏切り。それが主人公を苛みます。だから、別の地域にいたお陰で助かった子供らに「ママはどうしたの?」と訊かれ、「助けようとしたけど、既に手遅れだった」と嘘をつきます。愛する者を裏切ってしまった、一生残るであろう心の傷、それが『28週後...』の重要なテーマになっています。と思いきや、何と主人公は呆気なく感染者となり果て、子供らを襲います。
 そう、本作の面白いところは、主人公が助かるどころか、早い段階で感染者になってしまうところです。しかも、主人公が感染者になってしまうくだりが、非常に出来の良いドラマとなっています。ここまで皮肉で、悲しくて、怖いドラマは80年代以降では殆どなかったといっても過言ではないでしょう。
 情け容赦なく、愛だの友情だのが、無残に、それはもう悲惨に踏みにじられ、親子や恋人同士で殺し合う。殴り、刺し、切り、目玉をえぐり、身体を引き千切り、血肉を貪る。
 助けてくれる筈の軍隊は軍隊で、感染者と普通の人の区別がつかないから(ゾンビと違って、感染者も動きが速いため)、動く者は皆殺し。それでもどうにもならなくなって、街に爆弾投下。ロンドンが火の海。ヘリのプロペラで感染者をズッタズタにぶち殺したり。感染者とはいえ、ゾンビでもない一応はまだ人間を、人権も何もあったもんじゃない大殺戮。
 感染者だって黙って殺られるわけにはいきませんから、両の眼窩に親指を突っ込むという、『死霊のはらわた』かというような、どう考えても意味のない残酷サービスを披露したり。感染者は『デモンズ』みたいに凶暴です。
 これぞ「ゴミクズヒューマニズム映画」。

 また、音楽もささくれ立っててドラマを盛り上げます。前作同様、いかにもイギリスっぽいダークな、昔風にいえばトリップホップ的なダウンテンポ。そこへ、暗い、フォークっぽいギターの音色が被さります。テーマ曲は、完全に70~80年代の残酷映画。ルチオ・フルチ作品にも最適な感じ。主題歌があるとしたら、今ならBURIALにお願いしたいものです。
 
 さて、ここまで大絶賛してきましたが、実は私の評価は結構低いです。好きか嫌いかでいうと、物凄く大好きな映画ではあります。残酷で暗くて悲惨な見せ場だらけで盛り上がるし(人によっては落ち込むかもしれないけど)、大画面で観る価値ありです。
 しかし、ドラマがあるようで、ドラマがないのです。前述したように、「愛がある故の恐怖」はありますが、そんなの演出するの簡単でしょう。ただ状況を描けばいーんですから。
 そう、『28週後...』には状況しか描かれていないのです。ちょっと捻った展開を作ってはありますが、単なる状況描写以上の何物でもありません。ちゃんとしたドラマは、主人公(つか、早々に離脱するから、主人公ではないか)夫婦のくだりだけです。そこだけがドラマで、残りは状況描写だけ。それが物凄く、惜しい。

 この手のゾンビもので最も成功しているのは、黒沢清監督の『回路』だと思います。『回路』以上に成功しているものを私は知りません(勿論、本家『ゾンビ』は除外)。
 『回路』では、生と死の境目が消えてしまいます。生に絶望して死を選んでも、死者(幽霊)としてこの世に蘇ってしまいます。死後の世界が満員で、死者が溢れてしまうのです(という仮説が劇中に登場する)。この世に生者も死者も一緒にいる世界。友達や家族がみんな死者になってしまい、死者として傍らにいて、生きているのが自分だけだったら、生きることにこだわる必要はあるのでしょうか?
 『回路』には、ゾンビものにありがちな単なる状況描写以上の、「恐怖の哲学」があります。絶望も希望もない世界。平穏な、静かな、何もない、生きる意味も、死ぬ意味もない世界。それこそが最も怖い。

 状況だけを描いても映画になるのは、昨今のゾンビものを観ればわかります。別にそれでも問題はありません。しかし、それなら徹底的に残酷描写を強化してほしい。
 『28週後...』は、一般の映画に比べれば残酷描写に力が入っていますが、残酷映画としてみれば、かなり腰の引けた映画でもあります。問題は、カメラワーク。揺れるんですよね、最近の流行で。肝心要の残酷場面であれは止めてほしいものです。ちゃんとくっきりはっきり克明に見せろよと。まあ、そんなことしたら成人指定になりそうですけど。

 というわけで『28週後...』、個人的に大好きな映画ではありますが、映画としては佳作レベルです。大作ですし、最近作ですから、特撮は当然のように素晴らしいですが。

 ちなみにオープニングテーマ曲↓

 殺伐とした曲でしょ? 主人公が妻を見捨てて必死に逃げる場面に被るのがこのテーマ曲。サントラには、「kiss of death」というイカした名タイトルの曲もあります。その曲が流れる場面のことを考えると、そのまんまだな、と思っちゃいますけど。
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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

tag : 28週後

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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