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2008-01-08

『イン/レインボウズ』の効果

 レディオヘッドの『イン/レインボウズ』、先月に購入してから、私はずっとヘビーローテーション中ですが、世間ではどうなのか。

 オリコンチャートの洋楽部門で1位、米英日の殆どの音楽雑誌で2007年度ベスト1位と、評価は上々。無料でダウンロードしても構わないダウンロード販売を先行しておきながらも、CDはヒットしているのだから、レディオヘッドの人気は素晴らしいものです。
 私は、今回のダウンロード販売、試みとしてはとても良いものだと思いました。でも、それが「あのままの形」で商売として即適用できるかというと、無理です。リリー・アレンさんがいっていた通り、あのやり方が可能なのは評価と人気と実力の全てが高いアーティストだけでしょう。実際、レディオヘッドも盤の流通は止めない旨を語っています。

BARKS global music explorer→レディオヘッド「ダウンロードだけではダメ」

 トム・ヨークさん曰く、
 俺たち、“ネット以外は全て終わってる。インターネットこそがフューチャーだ”なんて高らかに宣言する気はないよ。それに、一般には“物体”とか呼ばれる工芸品を持つのはとても大事だ
ということです。
 それを裏付けるように、イギリスのアルバムチャートでも初登場1位でした。

BARKS global music explorer→UKアルバム・チャート、レディオヘッドがトップに
 
 盤を心待ちにしていたリスナーがたくさんいたわけですね。みんながダウンロードできる環境にあるわけじゃないので、盤を心待ちにしているリスナーにすれば、レディオヘッドが試みたダウンロード販売は、「アーティストやレコード会社によるイベント」程度のものです。
 ダウンロードで購入することに何のインセンティブがあるかというと、「手軽」「低額」くらいのものです。そこにレディオヘッドは「無料でも可」を加えたのですから、そりゃあ盛り上がります。「有料のみ」だと、アーティスト自身が行う商売としては成り立ちません。結局は、資本力の差になります。例えばレディオヘッドがiTunes Storeと競うことになれば、レディオヘッドから直接購入するインセンティブは、ただ単に「ファン心理」でしかありません。
 しかし、今回のレディオヘッドが試みた、「ユーザーの希望価格でダウンロード販売」をビジネスとして成功させるのに最も重要なのは、「ファン心理」です。

 ネット環境さえ整っているのなら、そして少しの知識があるのなら、正規ルートからダウンロード購入しなくても、P2Pなどによる違法ダウンロードでタダで入手することができます。どう考えても、入手するだけなら違法ダウンロードした方が煩わしい手続きはいらないし、簡単です。それを「あえて選ばない」には、「正しい倫理観」か「ファン心理」が働かなくてはいけません。
 それを全くわかっちゃいないのが、ナイン・インチ・ネイルズです。

BARKS global music explorer→NIN、無料でダウンロードするファンの多さに落胆

 記事の要約↓
 レディオヘッドの『In Rainbows』のダウンロード方にインスパイアされたレズナーは、ソウル・ウィリアムスのニュー・アルバム『The Inevitable Rise And Liberation Of Niggy Tardust』をダウンロードするにあたり、購入者に“無料”もしくは“有料/5ドル(約570円)”のどちらかを選んでもらうようにした。その結果、“無料”を選んだ人の数が考えていたより多かったそうだ。
 「ソウルが'04年にリリースした前作は3万3,897枚売れた。1月2日現在、新作をダウンロードした人の数は15万4,449。そのうち2万8,322人が5ドル支払った。すなわち18.3%が金を払うほうを選んだわけだ」
 「5ドルの価値があると考えたのは5人に1人もいなかった」
 うーん、でも前作が33,897枚売れて、有料でダウンロードしたのが28,322人なら、前作を買った人の8割はまたお金を払って入手したってことなんじゃないですかね? 18.3%しか支払わなかったのではなく、2割の人が支払う価値がないと判断したのでしょう。その他の12万人くらいの人は、「味見」しただけでしょう。「味見」にお金を支払う馬鹿はいません。

 P2Pが普及している今、アーティスト自身による、このようなダウンロード販売を成功させるのは難しいでしょう。アーティストは、リスナーに対して抱いている「夢」を打ち砕かれることになるかもしれません。しかし、ダウンロード販売自体が失敗だ、というわけじゃありません。

産経ニュース→米の音楽売り上げ、最高の1500億円 ネット配信が急増

 CDの売り上げは下がり、ダウンロード販売が急増しているそうです。全体で見ると黒字だそうで。
 となると後は、P2P被害をどうやって食い止めるか、になります。なりますが、それは諦めるしかないんじゃないですかね。例えば、P2Pによる違法ダウンロードでアルバムを「味見」して、ちゃんと盤で買い直すリスナーだっています。その傾向はインディーズ系のアーティストに多いそうです。また、P2Pによってアルバムの収益が減る代わりに、コンサートの収益が増えることもあるそうです。レズナーさんも記事で「無料ダウンロードは多かったけど、コンサートに来る人もその分増えるんじゃないか」と語っています。要は、違法ダウンロードも「使いよう」なわけです。

 『イン/レインボウズ』のレディオヘッド自身によるダウンロード販売は、4割の人が有料、6割が無料でダウンロードしたそうです。4割は、高い数字だと思います。
 スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー『ヤバい経済学』という本に、ベーグルを売るフェルドマンという人の話があります。フェルドマンさんは、ベーグルの売り方にレディオヘッドと同様の方法を採りました。つまり、ベーグルを置いてある付近に代金箱を設置するだけで、フェルドマンさん自身は売買に関わらないのです。支払いは購入者の自己申告。その結果、9割の人がちゃんと支払いました。ただ、売る場所によっては、8割に落ちることもありました。
 フェルドマンさんは、支払いには「士気」が重要だ、と語っています。例えば職場で、上司や業務が好かれている所は、仕事に誤魔化しがない、と。これはレディオヘッドやレズナーさんのダウンロード販売にもいえることでしょう。「ファン心理」です。

 レディオヘッドは高い信用があり、レズナーさんの信用は低かっただけなのかもしれません(ナイン・インチ・ネイルズの近作2作は猛烈な駄作だったし)。今回は無料でダウンロードしても、次回も(また同様のダウンロード販売をするとして)無料でダウンロードするとは限りません。信用と、完成度の高さ、それだけが「ユーザーの希望価格」というダウンロード販売を成功させる鍵です。

 レディオヘッドはダウンロード販売で成功したのでしょうか? 無論、大成功です。確実に次に繋がりました。6割が無料で持ち逃げしたとしても、その人たちだって評価はしたでしょう。レディオヘッドに対する「士気」がどれだけなのか、かなり明確な数字でわかったのは良いことです。
 持ち逃げ上等、なんですよ。

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テーマ : 音楽のある生活
ジャンル : 音楽

tag : レディオヘッド

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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