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2012-02-27

ヴィンセントを主人公しても良かった

 大好きな筈の『フライトナイト/恐怖の夜』は、はっきりいって失敗作でした。普通に作っていれば普通に楽しい娯楽作品に仕上がったものを、なぜ失敗したのか……今になって気になってきました。

 「怪物もの」は、性衝動の隠喩であったりします。ゆえに昔はデートムービーとして有効でしたが、今では「怪物もの」のデートムービーは『トワイライト』だったりしますので、同路線で売るのは難しい。『トワイライト』シリーズには抑圧された性衝動も何もありません。
 リメイク元の『フライトナイト』には、公開当時は「不真面目」な「殺人鬼もの」が主流だったからこそ、ふざけているようで真剣な「怪物もの」を作る意義や余地がありました。流行が「殺人鬼もの」であればこそ、時代遅れな「怪物もの」は自動的にふざけたものとなり、しかしそこには、真剣な「怪物もの」を叩き込んで驚かせてやろう、というホラー作家の意気込みもありました。
 黙って襲ってくる殺人鬼と違い、怪物は雄弁です。雄弁である以上、それはギャグになります。存在感があればある程、場の雰囲気をぶち壊しにすることもあるからです。雰囲気がちゃんと作られていない場所に雄弁な怪物が登場すると、ギャグにしかなりません。恐怖の正体は不明であればある程、恐い。正体が判明してしまえば、後はどのように対処するか、それだけです。もちろん著名な殺人鬼(ジェイソンやフレディ等)は既に「怪物」であり、様式美もありますから、今ではギャグに使われています(それを巧く使ったのが『スクリーム』シリーズ)。ゾンビが恐怖の対象へと復活させたのは、ザック・スナイダー監督版(というよりはジェームズ・ガン脚本版というべきか)『ドーン・オブ・ザ・デッド』でした。作品の評価は賛否ありますが、重要な作品です。あと『ショーン・オブ・ザ・デッド』の影響力も無視できません。日本の幽霊の恐怖が日本中に蘇るのは『リング』まで待たなければなりませんでした(貞子は幽霊でないし、その後しっかりギャグ対象になったけど)。みんな放っとくとギャグになっていた分野です。
 しかし『~恐怖の夜』は、『フライトナイト』のリメイクなのに、コメディ色が薄くなっています。

 『~恐怖の夜』の吸血鬼は、いわゆる「レッドネック」(日本でいうなら「ドカチン」)です。一流の味わい(処女の生血でなきゃ嫌だ、とか)にこだわるような感じには見えません。雑でアメリカンな感じ。リメイクする際の最大のアイデアはやはり、この「吸血鬼を様式的にしない」という点だったのでしょう。
 お約束の「招かれざる者は入れない」という展開は、「レッドネック」ならではの強引すぎる力技で進行します。「ごちゃごちゃうっせーんだよ!」という頭の悪い感じ。だのにそこがギャグになっていません。少なくとも爆笑へと繋がっていません。「なるほど、その手があったか」という納得になってしまっているからです。『~恐怖の夜』で最も巧い展開でありながら、最も失敗している展開でもあります。
 しかし、吸血鬼を雑な「レッドネック」にしたのは正解だと思います。親友を裏切ってまで得ることができた彼女(学園のアイドル)を身体だけが自慢のバカに横取りされてしまう恐怖、それが『~恐怖の夜』の描く恐怖の1つだからです。主人公が「何の取り得もない普通の男子」になってしまっているのも納得できます。そう考えて『~恐怖の夜』を観れば、とても納得できる作品に仕上がっていると思えます。何の取り得もない普通の男子が抱く抑圧された性衝動(恐怖)が描かれているからです。
 しかし、だとすると、なぜそれで巧く「学園もの」に仕上がっていないのでしょうか。そこにもう1つ当てはまる新たな要素として、ピーター・ヴィンセントの存在があります。『フライトナイト』では落ち目のタレントとして、『~恐怖の夜』ではトラウマ設定のある売れっ子タレントとして異なる描かれ方をされている人物。その差。
 『フライトナイト』のヴィンセントは、いうなれば『ロッキー』のような復活劇の人物です。それをそのまま『~恐怖の夜』に当てはめてしまうと、不具合が生じます。主人公をオタクから退いた設定にしてある以上、ヴィンセントの復活劇はどうでも良いことです。主人公が普通である以上、ヴィンセントに与えられるのはトラウマでなければなりません。それもまた抑圧された衝動的感情だからです。
 『~恐怖の夜』のヴィンセントが抱えるトラウマは、形を変えれば、イジメられた記憶にも似ています。辛い学生生活を卒業し、大人になって、久々に出会ったいじめっ子――それを『~恐怖の夜』のジェリー(吸血鬼)だとすれば、ヴィンセントのトラウマは、一応は「学園もの」の要素を持つ物語にピッタリです。
 『~恐怖の夜』は、そのような「学園もの」にありがちな抑圧された衝動的感情による恐怖、それを隠れたテーマにしているように思います。

 そのような物語を単純な娯楽作品に仕上げるには、物語を強く牽引する要素が必要です。『~恐怖の夜』を強く牽引する要素は何でしょうか? うーん……特に思い付きません。たぶん設定を変更した時点で作品の雰囲気も大きく変える必要があったのだと思います。それなのに間違えて3D作品にしてしまった。アトラクション的な娯楽作品に仕上げることが3D作品には求められます。『~恐怖の夜』にも本来はそのような娯楽要素が求められる筈です。しかし、物語の設定を変更してしまったため、“その方向”に巧く流れませんでした。『~恐怖の夜』の失敗の要因は、3D作品であることにあると思います。
 もう1つ、思い切って主人公をヴィンセントにするくらいの大胆な変更があっても良かったのではないでしょうか。落ち目のヴィンセントが吸血鬼退治によって復活する――それはたとえば『エクソシスト』のように信仰心を試すようなものでもありますから、従ってそれをそのまま描くと真面目な信仰戦争になってしまうので、『フライトナイト』と『~恐怖の夜』の設定を合わせ、マスメディアを利用するような物語にしてみる――って、それは『ラスト・エクソシズム』じゃん。ま、何にしろ、ヴィンセントを主人公にしたリメイクなら、『フライトナイト』からのファンもとても楽しみな作品になったような気がします。でも、たぶんそれだと監督や脚本家の思うところではないのでしょう。
 やるなら、ジョン・ヒューズ監督が「怪物もの」を作ったような、そのような感じの作品を目指すべきでした。

 あとついでに、日本の配給会社は宣伝が下手です。予告編で見せ過ぎ。米国の予告編を見る限り、ギリギリのところでお隣さんが吸血鬼であることが明確になる部分は伏せていますが、日本の予告編では明確になっています。それがサービスだと思っているのでしょうか?
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テーマ : 映画関連ネタ
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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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