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2011-09-21

『へんげ』は、スタイルを凌駕する

 <カナザワ映画祭2011 フィルマゲドンⅡ>にて爆音上映された『へんげ』は、期待通りどころか、期待を遥かに超えてそのまま大気圏突入する勢いの作品でした

 『へんげ』は、強いていえば「怪奇映画」です。とても贅沢な「怪奇映画」で、簡単な印象だけを並べると、

黒沢清監督の『降霊』みたいな雰囲気で始まり、
心霊ホラーかと思えば怪奇の正体は塚本晋也監督の『鉄男』のようで、
その後は『ポゼッション』や『ベイビー・ブラッド』みたいに展開し、
どう着地するのかわからなくなった結果、
大魔神』というか『鉄人28号』的な結末を迎え、
そんな作品をジョン・カーペンター監督のような音楽が彩り、
ジェリー・ゴールドスミスさんのようなエンディング曲に、
ゴジラ』のような咆哮が鳴り響いて終わる

そんな感じの作品です。いや、本当に。かなりネタバレしました。
 既視感ありまくりな作品ですし、パーツの寄せ集め的な物語のため細部が殆どありません。しかし、その組み合わせが絶妙であり、1時間に満たない上映時間で一気呵成に展開させているため、疑問を抱く暇もありません。最後には、トンデモ展開に笑っていたのに、笑いやら驚きやらを超越し、感動に包まれます

 演出は、突飛な物語の割に普通です。それが悪いってんじゃなく、普通だからこそ、クライマックスで驚かされるのです。予算の都合か、基本的に物語は主人公夫婦の自宅内で展開します(実はスタッフの自宅を使っていたり)。屋外に出ても、住宅地の通りか、地下道みたいな所ばかり。閉塞感が強く、主人公夫婦の鬱屈とした雰囲気が表れています。クライマックスは、その鬱屈をぶち壊すわけです。
 怪物は欲望の具現化ですから、あのクライマックスにも監督の欲望が表れているのでしょうか? 「今の日本の政治に我慢ならん! ぶっ壊れてしまえばいいんだ!」とか。その巨大さと乱暴さから、かなりのお怒り具合と推察します。東日本大震災後の閉塞感に覆われた日本の“空気”をもぶち壊す勢いです。しかし奥さんには従順。肉体の変化だけでなく、関係性の変化や価値観の変化も。

 自主制作映画は、そのショボサゆえに「好意的に見る」をしなければ心底から楽しめなかったりすることが多いのですが、爆音上映が魅力を底上げどころでないくらいに底上し、『へんげ』を下手なメジャー作品では敵わないくらいの面白い作品として観ることができました。予想外に音楽が良く、カーペンター監督の音楽を彷彿とさせました。爆音上映がそれを観客の肉体へと直に叩き付ける! 何でもない音まで大迫力! 「ガン! ズガンッ!」て大きな音が鳴っているから何事かと思えば、台所でキャベツを刻んでいる場面だったり。ビックリしました。
 爆音上映が魅力を底上げするといはいえ、どんな作品でも良くなるわけじゃありませんから、これはやはり作品にちゃんと魅力があるってことです。過去の色んな名作から連なる演出、極端すぎるくらいの起承転結な展開、手抜きのない特撮。

 できることを全力で行ったからといって『へんげ』ができるとは思いません。メジャー作品を観てもそれはわかります。努力したからといって素晴らしい結果が待っているわけじゃないのです。才能は必要不可欠です。『へんげ』に於ける大畑創監督には確かな才能があると思います。
 しかし、もしかしたら、大畑監督が最高の輝きを見せるのは『へんげ』で終わるかもしれません。才能溢れる監督がメジャーで撮ったら凡作ばかり、なんてのは良くあることです。制約の少ないインディーズ映画や自主制作映画でこそ、真の輝きを放つかもしれません。『へんげ』も上映時間が1時間内だから面白いのです(細かいこと無視できるし)。
 『へんげ』は全国公開されるべき作品です。ただし、爆音上映で。いや、通常上映だと、もしかしたら大したことがないと思われるような……いやいや、それが通常上映だとしても、絶対に観るべきです。観なきゃ損します!
 映画の楽しみは「見られないものを観る」ことにあると思いますので、『へんげ』はその条件を十分に満たしています。『へんげ』を観ていない方に、「心霊ホラーみたいに始まって『大魔神』で終わる映画」とか簡単に説明してみて下さい。絶対に「何だそりゃ!? 観てみたい!」と思われるでしょう。そう考えると反則気味の作品かもしれませんが。
 大畑監督が有名監督へと出世した暁には、『へんげ』は大畑監督の原石の1つとして必見の作品になるのだと思います。クライマックス、奥さんが旦那さんに「行けぇーっ!!!!!」と泣きながら絶叫する瞬間のカタルシスは、今全国公開されている『世界侵略:ロサンゼルス決戦』を軽ぅ~く凌駕します。その「行けぇーっ!!!!!」な感じ、大畑監督もこれから巨大化するのかも。その巨大化を見る前に『へんげ』は観ておくべきでしょう。「私はあの頃から大畑監督に才能あるって思ってんだよぉ~」と自慢できます。

 年内には都内で劇場公開されるそうです。

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テーマ : 映画祭
ジャンル : 映画

tag : カナザワ映画祭

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プロフィール

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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