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2011-05-15

『エンジェル・ウォーズ』は、『ミスター味っ子』的な

angel
 『エンジェル・ウォーズ』を観た。
 まず、予告編が私の心を鷲掴みにした。作品を構成する要素が、セーラー服の金髪少女、ゾンビ、機関銃、日本刀、侍、ロボット、戦争、ドラゴン、女囚、脱獄……まるでアホな中学生男子の妄想を詰め込んだような映画がメジャーで作られるなんて、「嗚呼っ、これは俺に向けられたプレゼントだ!」と思ってしまい、公開日を心待ちにしていた。たぶん全世界に似たような奴がたくさんいただろう。

 物語は驚いたことに一応、ある。予告編を観た時点で、「これは……物語の面白さに期待してはいかんな」と思ったもので。色々と複雑な構造になっているけど、要約すると、「キモい継父の策略によって精神病院へ入れられた少女がそこから脱出するまでの物語」だ。
 しかし、単なる「脱獄もの」ではない。主人公のベイビードールは、妄想逞しく、妄想世界では『チャーリーズ・エンジェルズ』も真っ青な強さを誇る戦士で、その妄想を巧みに利用しながら脱出するという、世にも珍しい「妄想系脱獄もの」なのだ。
 精神病院に“収監”(入院というよりは、収監だ)された少女たちは、“観客”の前で踊りを披露させられる。“観客”はそれを見、少女たちを買う。少女たちのいる精神病院は、表向きは問題児を預かる精神病院だが、実際は麻薬から武器、少女たちの性までを密売する違法施設だった。
 ベイビードールも踊りを強要させられる。しかし、踊ることこそが、ベイビードールの最大の武器だった。踊り始めた瞬間――妄想の世界にダイヴ・イン! どこの世界とも知れぬ戦場に、ベイビードールはいた。ベイビードールはそこで世界のあり方を教えられる。逃げたければ、戦うしかない。ベイビードールはその世界では無敵に強かった。脱出に必要な5つの小道具を集めるため、妄想世界で大冒険を繰り広げる――
 などと説明すれば、とっても面白い「ファンタジーもの」みたいに思える。が、予告編を観た時点で、「現実に精神病院を脱出することと、妄想でその過程を冒険することに整合性があるのか?」という点が疑問だった。そしたら、整合性以前に、妄想世界の展開に意味が全くなかった。それはもう、潔いくらいに。

 「ジャパニメーション」からの影響を隠しもせず、ただ単に「セーラー服を着た金髪美少女が日本刀を振り回してモンスターと戦い、ついでにロボットも出て、女囚で脱獄もする」物語を描きたかっただけなのだろう。その欲求は見事に実現されている。大作の予算で作ったVFXだけはあり、妄想世界の大冒険自体は、大迫力で、高水準の出来映え。
 展開は、「踊る→妄想開始→戦う→ミッション・コンプリート→妄想終了」の繰り返し。踊ることで敵を魅了し、行動不能にする。その踊りの凄さが妄想世界の大冒険として表現されている。それはもう『ミスター味っ子』もかくやという大袈裟な表現だ。
 しかし、それが物語に全く活きない。だって、観客が見せられるのは「妄想世界の大冒険」だけど、物語としては、実際は貧相な精神病院で踊っているだけなんだから。精神病院を脱出するために必要な道具を集めなくてはいけなくて、それが本作の見所になるんだけど、ベイビードールが敵の前で踊りを披露し、みんなが魅了されている(ぼーっとしている)隙にベイビードールの仲間が道具を盗み出しているだけ。全ての展開がそんな感じ。現実の描写を面白く描けないから、演出が妄想世界に逃げているようにしか見えない
 ビョークさん主演の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』を合わせたような感じなんだけど、それらの作品には妄想の登場に意味があった。本作には全くない。単なる「脱獄もの」か「空想戦記もの」にすれば良かったのに。

 映画の魅力は物語にはないので、物語が面白くなくても、画面で繰り広げられることが面白ければ問題ない。んだけど、本作はその点でも駄目。妄想世界の設定に既知感が溢れまくっているのと、演出が安直で単調なため、VFXをふんだんに使っていてもすぐに見飽きてしまう。「ジャパニメーション」からの影響を隠しもしないなら、もっと直球で「ジャパニメーション」っぽく作れば良かったのになぁ。「ジャパニメーション」側ではカートゥーンの影響を隠しもしない『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』なんて傑作が生まれてるってのに。
 アクションは『マトリックス』だし、舞台設定は何かのゲームっぽいし……個人的には、ロボット、刀、美女集団、大戦、という要素から、セガのゲーム『サクラ大戦』を想い出してしまった。ハリウッド大作として『サクラ大戦』を実写化したらこんな感じなんだろうなぁ、と。
 ベイビードールの「踊り」は、妄想世界に入るためのスイッチなので、その素晴らしさは全く描かれない。涙を流してベイビードールを眺める観衆の描写があるので、我を忘れてしまうくらいに素晴らしい「踊り」なんだとわかる。それなら真正面から「踊り」を描いてみても良かったと思う。どうせセガの『サクラ大戦』に似ているんだから(個人的には)、『スペース・チャンネル5』のようにして、歌と踊りでモンスター大戦を描けば良かったのに。マイケル・ジャクソンさんの『ムーンウォーカー』の方が妄想映画としても本作より楽しいよ。
 実は、面白い場面は現実世界の描写ばかりだったし。『ウォッチメン』同様の色調の良さも妄想世界より現実世界の方に活きていた。妄想世界の存在は本当に意味がない。「踊り」の素晴らしさを伝えるのが妄想世界だってのは面白い演出だとは思う。下手クソなミュージカルを見せられるよりは遥かにマシだと思う。本作を観れば、『BECK』でコユキが歌う場面も妄想世界で演出すれば良かったのに、と思ったりもする。しかし、『ムーラン・ルージュ』を作ったバズ・ラーマン監督なら、間違いなく歌って踊らせただろう。とっても魅力的に。本作で「惜しい」と思うのはそこだけなんだけど、そこが本作の全てなんだよねぇ。

 物語は最後に多重構造になっていることがわかる。「辛い現実世界」→「夢の世界」→「妄想世界」という風に。夢と現実の境目が曖昧になる映画は、最近ではクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』があったけど、あっちは「知的」で、本作は「中学生男子的」。ノーラン監督とスナイダー監督、好きに作らせた差が、これ。
 夢のような世界に入り込んで戦うってのなら、最近は他にも『トロン:レガシー』があった。そして面白いことに、『トロン:レガシー』も本作も前半部分でユーリズミックスの「Sweet Dreams」を効果的に使用している。これから始まる物語を暗示的に示している。そーゆーとこは素晴らしいのに、妄想世界が始まった途端に駄目になる。物語も停滞する。
 そして結局は、ロベール・アンリコ監督の『ふくろうの河』だ。死ぬ直前に見た夢、という。「Sweet Dreams」で歌われるように、「甘い夢なんて、どこにもない。誰もが何かを探していた」のだ。問題は、本作で描かれた夢は、とんでもなく退屈で面白味がなく、上映途中で退席しても構わないくらいのものだった、ってとこだ。さっさと夢が覚めてほしい、と願うくらいに。
 本編より予告編の方が楽しめた。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : エンジェル・ウォーズ

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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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