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2011-04-29

痛みを伴わない否定はない

 金沢市の市議選で、「脱原発」を唱える議員がトップ当選していました。初のトップ当選だそうです。「脱原発」が効いたのかは知りません。原発は安全だから、と語っていた知識人や学者が謝罪をしています。結構な人数がそれを批判しています。今さら無責任だ、と。福島原発のせいで避難させられる方々の中には、原発の恩恵に与ることがなく、それなのに強制的に避難させられるため、ただただ政府と東電に腹が立つ、という方が多くいます。
 日本全体を見ても、原発の存在に疑問を感じている人が多数のようです。今は当然ながら、「反原発」な風潮です。福島原発があのような事態である以上、当然の結果です。
 しかし、と思います。

 今の日本に過ごしていて原発の恩恵に与らない人は殆どいないでしょう。直接的なお金の支給がなくても、間接的に原発の電力の恩恵に与っていると思います。色んな物の生産には大量の電力が使われていますし、色んな施設の運営にも大量の電力が使われています。それら全てを原発の電力なしにまかなうのは難しいでしょう。
 「脱原発」をすれば、確実にその生活は変わります。変わったって構わない、という人が大勢いるからこその「脱原発」大流行ですが、以前からずっと一貫して「脱原発」を訴えていた人ならちゃんと考えていると思いますが、何となく流行に乗っただけの「にわか脱原発」の人は、自覚なく、またもや何も考えていないと思うのです。

 「またもや」というのは、一昨年、自民党から民主党に国民の大半が支持を変えた頃のことを思い出すからです。
 麻生政権の不甲斐なさに、みんなの我慢も限界で、「もう自民党は嫌だ! 民主党にしよう! 何か変わるかも!」と支持を変えました。あの時点で民主党に何もできないどころか害悪にしかならないのは明白だったのに(マニフェストを見るだけで判断できるレベルで)、民主党が与党になりました。まあ、当然の結果ではありました。不安が残る民主党だけど、自民党が続くよりはマシ、とみんなが判断してしまう程に自民党はボロボロでした。とりあえず自民党にお灸を据える気持ちで民主党に入れた人が大半だったと思います。
 駄目な自民党を懲らしめ、改心してもらうために民主党を与党にした。もしかすると民主党が素晴らしい政党なら結果オーライだ。それがあの当時の気分だったと思います。それはみんな自覚的だった筈です。しかし、今になってやはり大勢が「民主党は駄目だ」と大騒ぎしているのを見ると、自覚的でなかったのかもしれません。
 小泉政権の時は「郵政民営化に賛成」で、民主党に鞍替えする時は一転して「郵政民営化に反対」。しかも、自覚なしに。その民意の正当性を議論することなく、国民は安穏と暮らしてきました。
 「にわか脱原発」の人々は、後になって後悔しないのか。自民党から民主党に鞍替えし、今になって「しまった!」と後悔しているように。何となく、同じ構図に見えるのです。

 毎年、<WIRE>という大型レイヴを楽しんでいる私は、原発の電力供給をありがたく感じていました。<WIRE>の演出には大量の電力が必要とされますし、そもそも横浜アリーナの設備だけでなく、横浜アリーナの建設にも大量の電力が必要とされた筈です(建設そのものだけでなく、素材となる鉄鋼の製作とかにも)。安全な環境、ストレスのない運営、魅力的な演出、それらはどこかの誰かの犠牲の上に成り立っている――それを自覚的に楽しむ、それが現代日本人の自覚というものです。
 自由で平和な音楽イベントは、大変な犠牲の上で成り立っているという皮肉。それを自覚できない人は、鈍感だといえます。<レインボー2000>のような屋外レイヴは、太陽光発電を利用するなど、環境保護に意識的でした。
 映画だって同じ。今の映画館の運営を「脱原発」でまかなえるのか、疑問があります。のん気に椅子に座って、ポップコーンを頬張りながら映画を観る楽しみ――それも大変な労力や犠牲の上に成り立っているわけです。
 何にしろ現代日本の生活は、少なかれ原発の恩恵に与っています。それをなかったことにして簡単に「脱原発」を唱えていいのか、わかりません。無自覚に原発の恩恵に与っておきながら、原発を安全だと推奨してきた学者や知識人を今さら「無責任」だと批判すること自体が無責任なのかもしれない、という自問をしなくて構わないのか。

 私んちの前は家庭ゴミ収集場になっており、よく問題が発生します。無断でゴミを捨てる人がいたり、可燃ゴミの日の昨晩にこっそりと不燃ゴミを出す人がいたり、町会で掃除当番を決めても守らない人がいたり、隣の町会の人がこっちの方が近いからと捨てに来たり、本当によく揉めます。たかが家庭ゴミ収集場でも問題が頻繁に発生するのですから、そりゃ原発ともなれば比較にならないくらい大変でしょう。原発と家庭ゴミ収集場を比較して話すな、と怒られそうですけど。
 誰もが完璧に満足することはない――それが原発なんだと思います。原発が完璧に安全でないことは誰だって最初から知っていることです。原発には常に不安が付きまとう。反対運動、誘致騒動、裏での政治的なやり取り――きな臭い話が満載なのが、「クリーンなエネルギー」という名目とは裏腹の原発の当然な事実でしょう。

 「脱原発」を唱える人は、では何を代替案として推進するのか? 火、水、風、土(地熱)、光のエネルギーですか。M・ナイト・シャマラン監督の『エアベンダー』かリュック・ベッソン監督の『フィフス・エレメント』ですけど、それらが原発の分もまかなうにはもっと大きく開発を拡大する必要があるでしょう。それにかかる費用は? 「脱原発」しつつ、そっちに移行するにはお金が必要です。そのお金の管理は誰が行うのでしょう? そのお金を巡ってまた政治家たちがごちゃごちゃと暗躍するわけですか。
 今の日本の生産性を維持するには、いきなり再生可能エネルギーだけでは難しいでしょうから、徐々に再生可能エネルギーに切り替える間は原発に頼らざるをえないと思います。というか、今の不況の日本で完全に「脱原発」が問題なく可能なのか、それが議論されていません。「脱原発」を掲げてトップ当選した人もそこら辺を徹底的に議論しているわけではありませんでした。
 まずは安全を。それは当然のことです。原発のような高リスクの施設に対し、リスク軽減よりもコスト軽減を優先するのは許されることではありません。しかし、どのようなリスクもゼロにすることはできません。どこかで妥協するしかありません。その妥協点をどこまで上げるか、それはどうしたってコストと要相談になります。民主党が行った施策で最も評価されたのが「事業仕分け」であることからもそれは証明されています。どのようなリスクであれ、コストと天秤にかけられるのです
 そして極論をいえば、原発から離れた場所に住む人々にとっては、“そんなこと”よりも安定的な電力供給が優先されると思います。今の状況下であっても。そんな人々をも満足させられる論理を、「脱原発」の人々は持ち合わせているのでしょうか? 奇麗事以外で。それが「またもや」を連想させます。

 ところで、今回の原発賛否論争(今さら何を論争するんだ、という気もしますが)を見ていて、『鋼の錬金術師』の最終話を思い出しました。エドと“真理”の間でこんな会話が交わされます。

 錬金術の使えないただの人間に成り下がるか?
 真理とかいういう物を見ちまってから、それに頼って、過信して、失敗しての繰り返し…踊らされたよなぁ
 もうこれがなくても大丈夫か?
 錬金術が無くても、みんながいるさ
 正解だ錬金術師。おまえは真理に勝った。持って行け、全てを

 そして、全てが片付き、今後を考えるエドはこういいます。

 錬金術が使えりゃ、こんなもん屋根に登らなくてもパッと片付くのに…
 …まあ、手間がかかるのもいいもんだよな

 大きな力を得るためには、代償も大きい。当たり前のことです。
 新たな旅に出るアルは、目標を立てます。

 10もらったら、自分の1を上乗せして、11にして次の人へ渡す
 小さいけど、僕達が辿りついた「等価交換を否定する新しい法則」です。これから証明していかなきゃいけないんですけど

 そして『鋼の錬金術師』は、こんな文章で締め括られます。

 痛みを伴わない教訓には意義がない
 人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから
 しかしそれを乗り越え、自分のものにした時……
 人は何にも代えがたい鋼の心を手に入れるだろう

 確かに、それが真理なのでしょう。エドとアルが頑張り続ける理由は、

 僕達が助けられなかった女の子がいます
 その子をずっと忘れる事ができません

というものなのですから。

 「脱原発」には、日本全体の生活を見直すことが重要です。本気の“エコ”を。それをはっきりと明言し、国民に“押し付ける”ことを厭わない重要な政治家が、果たして現れるでしょうか? 「脱原発」には、それ以外に正しい道はないと思います。「脱原発」を安易に支持している人々がそれを正しく理解しているのであれば良いのですが。後から苦情をいっても遅いのですから。
 また『鋼の錬金術師』から――新たな大総統になったグラマンはいいます。

 新たな可能性というやつは、いくつになってもわくわくするねぇ

 否定するばかりでなく、新たな可能性を楽しむこと。被災者には悪いと思いますが、そうしないと物事は進まないと思うのです。何せ、他人の痛みは忘れ易いのですから――
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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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