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2011-02-02

断崖絶壁の上の映画産業

 一昨日の北國新聞の朝刊にこんな記事が載っていました(全文引用。強調部分は私による)。

<シネコン全盛、小劇場は苦境>
 国内映画館の2010年の年間興行収入が、過去最高となった。3D大作などを上映するシネマコンプレックス(複合型映画館)が活気づく一方、個性的な作品を上映するミニシアターは閉館が相次ぐ。映画関係者の間で「映画ファンの鑑賞習慣が変わりつつあるのではないか」との見方が広がっている。

 「3Dを乱用すると飽きられる」(東宝の高井英幸(たかい・ひでゆき)社長)。「3Dが興行収入のけん引力になるのは数年間だ。一般化してくれば違うだろう」(日本映画製作者連盟=映連=の大谷信義(おおたに・のぶよし)会長)。27日にあった年間興行収入の記者発表。3D作品の今後の見通しについて、映画業界トップの発言には、期待と不安が交錯した。
 『アバター』156億円、『アリス・イン・ワンダーランド』118億円、『トイ・ストーリー3』108億円。ずばぬけた興行収入を挙げた3D映画の公開は昨年前半。後半は10月公開の『怪盗グルーの月泥棒 3D』が12億円などと、ブームは一段落した感がある

 大作に観客が集中する陰で、芸術性の高い外国映画などの小品は不振だ。多くのスクリーンを持つシネコンが全盛で、良い作品を上映する映画館を探し回るようなファンは年々減っている。角川書店(角川映画)の椎名保(しいな・やすし)専務は「話題作中心へと市場は変化した。映画に詳しい人はオタクととらえられ、映画離れにつながっている」と嘆く。
 日本映画も年間興行収入が過去最高だったものの、ヒット作はアニメの他、テレビドラマの映画版や漫画原作の映画ばかり。昨年公開された408本のうち、興行収入が10億円以上だったのは29本。それだけで全興行収入の約72%を稼ぎ出し、大ヒットと不発の二極化が進んでいる

 郊外型のショッピングセンターに併設して広がったシネコンは近年、都心にも展開している。昨年は横浜市や京都市の主要駅周辺で開業。映連によると昨年末には、国内映画館の全スクリーン数の81%をシネコンが占めた。
 一方、ウディ・アレン監督の作品などを上映してきた東京都渋谷区の恵比寿ガーデンシネマが29日から休館。1980年代のミニシアターブームを支えたシネセゾン渋谷も2月に閉館する。
 地域の映画館を支援するコミュニティシネマセンター(東京)によると、09年末時点の調査で、島根、徳島の両県はシネコンだけとなっていた(成人映画館を除く)。同センターの伊藤重樹(いとう・しげき)さん(51)は「単館系の映画で若い映画監督が育った後、大手映画会社で撮るような裾野の広がりが映画界に必要だ。地域の劇場でいろんな人に見てもらえる作品を上映し、映画の多様性を守りたい」と力を込める。

 実はこの記事、共同通信社のものらしく、北國新聞に掲載されたものはその記事を少し削っています。削られているのは、

 若者も、ブログやツイッターでよほど評判にならないと劇場へ行かない傾向が強まり、欧米の名画を配給してきた会社の社員は「分かりやすい映画ばかりが求められる」とため息。シネコン最大手、TOHOシネマズの中川敬(なかがわ・たかし)社長も「かつて年に数回は劇場へ来ていたような映画ファンが減っている」と危機感を隠さない。

と、

 映画評論家の山根貞男(やまね・さだお)さんは「今ヒットしているような日本映画を見た若者が、継続的な映画ファンになるとは思えない。話題性だけで見に来るのだから、一回きりになるだろう」と指摘する。
 実際、日本人が年間に映画館へ行く回数は、1人当たりわずか1.4回。米国の約4回、フランスや韓国の約3回などと比べ、少なさが際立っている

という文章。全文はこちらで確認できます。

 文章の主旨は、「映画の売り上げが落ちているのは観客のせいだ」ということですね。それ、別に今さら強調することじゃありませんから。商品販売が客によっているのは、自由市場ですから当然のことです。
 となると、売り上げが落ちているのは客のせいでなく、需要に応えられていない供給側にあると考えるのが普通でしょ。だのに「話題作中心へと市場は変化した。映画に詳しい人はオタクととらえられ、映画離れにつながっている」と考えるとは責任転嫁も甚だしい。「映画に詳しい」が即ち「オタク」と捉えられているとは思えないのですが。そして、「オタク」と捉えられるゆえに「映画離れ」に繋がるとも思えません。オタク向けコンテンツで儲けている角川書店の専務がいうことじゃないでしょう。
 3D作品の人気にそろそろ陰りが見えてきたかなぁ、という分析にしたって同様です。3D人気が一過性であることは最初からわかっていた筈です。年後半の『怪盗グルーの月泥棒 3D』になると売り上げが落ちているので、「ブームは一段落した感がある」と分析されていますが、いや、売り方が凄く下手クソだったからです。アメリカでは2億円を超える大ヒット作品だったんですよ? それなのに日本では笑福亭鶴瓶さんを声優起用したってこと以外に大きな販売努力をしていませんでした(少なくとも私にはそう見えました)。決して「ブームは一段落した」からではありません。
 昔からアメリカで大ヒットしたのに日本では全く話題にもならなかった作品はたくさんありました。それゆえにコメディ作品になると公開すらされないことが今でもたくさんあります。ファンが必死になって何とか公開に漕ぎ着け、それでもヒットしなければ「やっぱオタク向けは駄目だなぁ。オタクのいうことは無視しよう」になります。どこかに質の変化があったのでしょうか? あったとしても質の問題でしょうか? 明らかに供給側の問題でしょ。

 公開された国内作品408本のうち、ヒットしたのが29本で、ゆえに二極化が進んでいると分析されていますが、それにしたって供給過多ってだけです。無駄すぎる作品が多すぎます。国外作品は308本公開されていますから、100本も差があります。その差ゆえか、全体の売り上げも国内作品が上です(興行成績が10億円を超えたのは、国内作品は30本、国外作品は19本)。
 記事に「ヒット作はアニメの他、テレビドラマの映画版や漫画原作の映画ばかり」とあるように、確かに売り上げ上位30本の全てが“映画化”作品で、アニメとドラマからの“映画化”作品は17本です。これは供給側がいかに安易な企画ばかり通しているかを示しています。安易な企画でないとヒットしないという判断はわかりますが、供給側が手抜きし続けたために需要側の質が下がったとはいえないでしょうか。もしかしたら不況の影響もあるかもしれませんが、何でも不況のせいにするのは間違いでしょう。
 安易な作品ばかりだから、世評を頼りにする。いや、世評を頼りにするのは昔から同じです。その形が口伝からネットに変わっただけ。しかし「ブログやツイッターでよほど評判にならないと劇場へ行かない傾向が強まり」とありますが、それ、本当ですかね? たとえば国内作品の売り上げ第3位である『踊る大捜査線THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ』をネットで褒めている人の数は少ないと思います。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』だって大半の人が褒めていないと思います。明らかに評判の悪い作品ですが、大ヒットしました。ネット・メディアの意見を頼りにしている人は確かに多いと思いますが、それがそのまま売り上げに直結してもいないと思います。
 供給側が「分かりやすい映画ばかりが求められる」と落胆していますが、それは供給側が分かりやすい映画ばかり作っているからではありませんかね? 売れる要素を集めた末に出来上がったのが「わかり易い」映画で、そーゆーのばかりが売れると「分かりやすい映画ばかりが求められる」と落胆する。“質”の高い「わかり易くない」作品を作って売れず、「わかり易い」作品作りに逃げる。よくあることです。それは本当に観客の“質”の問題なのでしょうか?
 記事にある「裾野の広がりが映画界に必要だ。地域の劇場でいろんな人に見てもらえる作品を上映し、映画の多様性を守りたい」という意見はその通りだと思いますが、若い映画監督が育ったとしても、肝心の大手映画会社が「わかり易い」作品しか作らせないのであれば意味がありません。

 「何であれがヒットしてこれがヒットしないんだ? みんな馬鹿なんじゃないの?」と思うことは確かにあります。当ブログのあちこちにそーゆー見下した視点が蔓延しています。私は「映画に詳しい人はオタク」ですから、わからない“質”の低い人々を馬鹿にする傾向にあります(だから「オタク」と揶揄される)。しかし、世間からは評価されていないけど私は大好きな作品の良さを伝えたいとも思っています(それは今のところ殆ど成功していないけど)。
 今回取り上げた記事を作った方がどのような意図を持っていたのかはわかりませんが、まず考えるべきは需要側の問題ではない筈です。重要なのは作品自体の生産力の向上でしょう。大ヒットする実力のある作品が全くヒットしなかった場合、原因は実力を十分に発揮できなかったことにあります。供給側は、潜在的な生産力をその実力のまま実現させる努力を行うしかありません。それを行ってもヒットしなければ、それこそ「今の観客は駄目だ」と嘆けばいいのじゃないでしょうか。
 国内作品の408本にしても、それが有効需要のある数だとは思えません。作ってから考えてるような気がするくらいです。大量に作れば価格が下がり、需要が伸びるような発想でもありませんし。というか、価格が長年変動しなかったことの方が間違っているのじゃないかとすら思います。TOHOシネマズの鑑賞料金値下げは、需要と供給の均衡点となるかもしれません。それによって需要が伸びれば、均衡点を長年間違っていたことになります。
 あとはやはり、消費者は合理的だから“質”の高いものを作れば正しく消費する――そーゆー考え方も間違っているんでしょうね。
 ちょいと安易なツッコミの記事だと思ったということでした。

参考リンク
一般社団法人日本映画製作者連盟→最新映連発表資料
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ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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