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2011-01-08

『トロン:レガシー』は、実はダフト・パンクの超大作PV

tronlegacy
 『トロン:レガシー』を観た。
 旧『トロン』は、子供の頃にTVで観た。斬新なデザインに目を奪われ、劇中で描かれる光の帯を伸ばして戦うレースゲームにも夢中になった。そのせいか私の中で「カッコイイ未来的デザイン」は今も『トロン』だ。それが最新CG技術によってリメイクされるってんだから期待しないわけがない。しかも音楽は『トロン』そのもののダフト・パンク。予告編からして大興奮できたのだから、観る前から傑作は保証されたも同然だった。
 しかし。

 物語は単純。コンピューターの世界に迷い込んでしまい、そこから脱出するための大冒険。要するに、『不思議の国のアリス』を男子が好きそうなゲームちっくアレンジにしたってだけ。従って、物語は全く面白くない。
 コンピューターの世界とはいえ「不思議の国」だから、物理法則も何もあったもんじゃなく、どーゆー理屈でコンピューター世界へ出入りできるのかさっぱりわからない。主人公の父親は何か天才で、コンピューターの世界で完璧な世界を構築して、現実の世界に反映させようとしているのだけど、何をどうやるのかさっぱりわからない。細部が全く練り込まれていないので、いちいち理屈を気にしたら駄目ってことだ。「ゲームの中に入って、大活躍して、世界を救って、かつ美女と結ばれたらいいよなぁ~」というような男子の妄想でできている。
 物語だけでなく、演出も画一的。アクション場面の演出は『マトリックス』。登場する機器のデザインは未だ斬新さが健在とはいえ、逆にいえば、斬新なデザインはここ30年ばかり出ていないってことになる。斬新とはいえないかもしれないが、ここ30年間でSFとして優れていると思ったのは、押井守監督の『Ghost In The Shell 攻殻機動隊』、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』と『マイノリティ・リポート』くらいしかない。SFで重要な質感と普通っぽさを意識的に描いて成功しているのはそれくらいだろう。そこを比較すれば、『トロン:レガシー』には斬新さは欠片もないし、SFっぽくもない。やはり『不思議の国のアリス』っぽい。
 じゃあ『トロン:レガシー』には短所しかないのかというと、もちろんそんなわけがない。長所は、音楽とやはり映像だ。というか、そこに特化している。つまり、面白い物語の映画を期待せず、最初っからダフト・パンクのPVと割り切って観れば十分に楽しめる。
 
 光と闇を強調した旧『トロン』そのままのデザインを最新CG技術で更新した映像は、キレイでカッコイイ。その独特の映像に合わせ、大音量で鳴り響くダフト・パンクの曲は、身震いする程にカッコイイ。実際、思わず立ち上がって歓声を上げたくなる場面が何度もあった。『トロン:レガシー』がダフト・パンクのプロジェクトの1つとしか思えないくらいだ。
 しかし、その実、曲の完成度は低い。サントラを買って聴くと、それがよくわかる。映画で味わった興奮が微塵も感じられない。映画の公開を我慢できず、先にサントラを買って聴いたら、曲がちっとも良くなく、「あれ? これはもしかしたら……映画も駄目かも」と思っていた。私が『トロン:レガシー』に期待したのは、「映像3:音楽7」くらい音楽重視の配分だったんだから。
 音楽は、「これぞダフト・パンク」な部分と、「これでダフト・パンク?」な部分があり、どちらかというと後者が濃厚。一言でいえば、「今時の人気ある映画音楽」だ。
 「今時の人気ある映画音楽」の作曲家で真っ先に思い浮かべるのは、ハンス・ジマーさんとジョン・パウエルさん。作品で挙げるなら、『インセプション』や『ナイト&デイ』とか。『トロン:レガシー』の音楽で、エレクトロな部分を除いた管弦楽曲の部分がそれに近い。迫力あって良い曲かもしれないけど、ダフト・パンクという個性を殆ど感じない。ダフト・パンクがコスプレをすることで個性的であると同時に個性的であること否定しているかのように、『トロン:レガシー』の音楽は脱個性的すぎる

 ロックやダンス・ミュージックのアーティストが音楽担当をした映画で近年最も素晴らしかったのは(音楽が、ね)、『運命のボタン』だろう(サントラ発売してほしい!)。音楽担当はアーケイド・ファイアーのメンバー。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に於けるジョニー・グリーンウッドさんの曲も似た傾向だったけど、『運命のボタン』の良さは挿入歌にもある。スコット・ウォーカーさんの「When Joanna Loved Me」が重要な曲として使われていたり、もう本当に最高!
 他にも最近なら、アーケイド・ファイア繋がりで、『かいじゅうたちのいるところ』の音楽担当はヤー・ヤー・ヤーズカレン・Oさんだった。あれも良かったけど、予告編のアーケイド・ファイアの「Wake Up」使いが余りにもハマリすぎていて、本編には少しガッカリした。
 あと、スコット・ウォーカー的な作品を作ったラスト・シャドウ・パペッツの作品も映画音楽的で最高で、またそこから繋げてオーウェン・パレットさんも良く、いつも見事で最高な作品を作るスフィアン・スティーヴンスさんも映画音楽的で良い。ヤー・ヤー・ヤーズに近い(かもしれない)ヨンシーさんも最高だし、私的な日々のサントラを作ると最近はそこら辺のアーティストで固まりそう。全然関係ない話でした。
 で、まあ、そーゆー映画的な作品に比べれば、『トロン:レガシー』に於けるダフト・パンクの仕事は、期待外れ。とはいえ、いつも通りのエレクトロな曲ばっかでも期待通りすぎて駄目に思える。カニエ・ウェストさんの「Stronger」のPVに見る『AKIRA』的な未来感とダフト・パンク感だとさすがに古すぎるし……そう考えれば、『トロン:レガシー』のエレクトロと管弦楽曲のバランスは絶妙ではある。

 『トロン:レガシー』の映像は、凄くカッコイイけど、それは旧デザインを「進化」させたのではなく、「強化」したものだ。同様に音楽も、「進化」というよりは、ダフト・パンクによって「強化」されている。映像と音楽が時代に合わせて「強化」され、密接に組み合わさっているので、PVのように映像と音楽を切り離して鑑賞はできない。従って、ダフト・パンクの曲は、脱個性的ではあるけれど、場面を盛り上げる伴奏としては物凄く機能的に作られている。DJ感覚的に、といってもいいかもしれない。
 『トロン:レガシー』のサントラが魅力的でないのは、楽曲の機能性がミニマルのように高いため、映像抜きではその威力が半減するからだ。ダフト・パンクの作品ではあるけど、映画を盛り上げるための音楽なので、その魅力は映画館で『トロン:レガシー』を観ないと絶対に理解できない(従って、できる限り音響設備の良い映画館で観るべき)。
 物語は面白くないし、デザインは、昔は個性的だったけど、30年近く時間が経ち、脱個性的になってしまっている。演出は画一的。だから、映像と音楽の一致を楽しむ――即ちPVとして割り切れば、とっても楽しい。主人公が絶体絶命の大ピンチに陥った時、颯爽と父親が助けに来てくれる場面の音楽の高揚感といったら! ダフト・パンク本人がDj役で登場しているだけはあって、超アがった! そこだけで満足できるといえばできる。実際、その場面見たさに、音響の良い映画館に移って再度観たくらいだ。
 最もアがる場面は、最初の方のゲーセン(?)の場面。ジュークボックスからジャーニーの「Separate Ways」曲が流れ(しっかりとボトムアップされていて良い!)、次にユーリズミックスの「Sweet Dreams」が流れるんだけど、主人公が地下に移動するため、曲が漏れ聴こえるモコモコとくぐもった音になる。ここ! この演出に最も盛り上がった! だって、クラブでの高揚感を想い出すし!
 私は、ユーリズミックスの「Love Is A Stranger」がオールタイム・ベストの1曲なので、それを使ってもらえたら叫びそうになるんだけど(「Sweet Dreams」はよく使われるし、よくカバーもされるんだけど、「Love Is A Stranger」はなぜか人気ないよね)、それはそれとして、クラブのフロアに入る直前の、扉の向こうや階段の向こうから音が漏れ聴こえ、ワクワク感が高揚する――おおー、盛り上がってんなー、というような――感じが、ゲーセン地下に移動するあの場面にある(と思うのは私だけかもしれないが)。ダフト・パンクが音楽担当している以上、そーゆー意図があっても不思議でない。
 ところで、歌詞ありの曲はゲーセンの場面にしか使われない。ジャーニーの「Separate Ways」は、父親との別離、そして親子関係を示しているんだろうな。こんな歌詞だし(超要約)。

世界の端と端に別れ、2人の心は真っ二つ
夜も寝られず、地に足が付かない

いつの日か
君も愛を見い出すだろう
君を縛っている鎖を断ち切るんだ
真実の愛は君を見捨てやしない
今も君を愛している
僕らは知り合い
別れてしまったけれど

どうしても行くなら
君の幸せを祈ろう
決して一人ぼっちにならないで
気をつけてね
君がいないと淋しくなるよ

突然行方不明になった父親とそのことを大人になってもずっと引きずっている主人公にピッタリの曲。そして、もちろん「Sweet Dreams」も状況説明に使われている。歌詞はこう(やはり超要約)。

甘い夢なんてこんなもの
そう思えない私は誰?
世界と七つの海を
旅して周る
誰もが何かを探している

君を利用したがる人がいれば
君に利用されたい人もいる
君を罵る人がいれば
君に罵られたい人もいる

ほら顔を上げて
上げ続けて(動き出せ)

これは今までの主人公の境遇と、今から大冒険に赴こうとする境遇を示している。
 たった2曲だけだけど、冒険の導入部としては完璧な選曲だ(ダンス・ミュージック的にも)。全体がDj感覚で音楽と映像を合わせて作られている感じがする。曲単位の魅力はないけど、映画を観ている最中は凄く盛り上がるし。気に入れば最高の映画かもしれない。その分、映画としては後に何も残らない。
 ただ、上映時間が長すぎる。140分もあるので、列車(?)の移動場面とか削れる場面があったから、あと30分短ければ、「『トロン:レガシー』はダフト・パンクの超大作の大傑作」と迷わず大絶賛できたのになぁ。惜しい。
 あと、3D効果は殆ど感じられなかったので、2D版も公開してほしかった。2D版の方が映像に集中できたと思うから。もったいない。
 観ている間だけ楽しめる享楽性がクラブ的な楽しみにも似ているので、賞味期限は当日中ってとこか。

『トロン:レガシー』のサントラから「The Game Has Changed」


『インセプション』のサントラから「Dream Is Collapsing」


『ナイト・アンド・デイ』のサントラから「Bull Run」


Journey 「Separate Ways」


Eurythmics 「Sweet Dreams」


ついでに、『運命のボタン』のサントラ

この怪しさ! もう最高すぎる! 映画は微妙だけど!
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : トロン

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プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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