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2012-05-22

『幸せの教室』は、+には圧倒的に届かないA

siawase
 人生に最高の瞬間というのはあって、たぶんそれは過ぎてみないと気付かないのでしょうが、映画に訪れる最高の瞬間は明確にわかるものです。ハッピー・エンドとは「最高の瞬間」のパターンであって、必ずしもハッピー・エンドが「最高の瞬間」というわけではありません。ハッピー・エンドそのものが蛇足でしかないものもありますし。
 最近は離婚歴を持つ者が主人公になることが当たり前になってきましたが、そのような主人公でどれだけ見事なラヴ・ロマンスを描いても、「そーはいっても、また離婚するんじゃないのぉ?」という予感は付きまといます。なぜこれだけ魅力溢れる素晴らしい主人公が離婚を経験しているのか、そこに「魅力的な主人公なんだけど」という留保が残るわけです。もちろん離婚歴がその人物の否定に繋がるわけではありませんが、物語としては陰を残すものです。
 ですのでラブ・ロマンスは、主人公ら男女が明確に結ばれるハッピー・エンドよりも、出会いや恋愛の始まる予感または瞬間を「最高の瞬間」にすべきだと思います。クリント・イーストウッド監督の『ヒアアフター』は、その見事な代表例でしょう。長い長い前ふりがあって、始まりの予感と共に終わる。

 『幸せの教室』の主人公ラリー・クラウンは、離婚とリストラを続けて経験した後、雨天の直後に訪れた晴天のように人生設計を学生からやり直そうとします(ただし、そこで竜巻に巻き込まれるのが物語というもの)。今やアメリカ映画の定番となった2つの要素「離婚」「リストラ」を共に抱え、共に解決するわけですが、普通に作れば男性としても大人としても失格者となった重い物語になるところを、躁的というか幻想的というか妄想的といって過言でない展開で一切の憂いも悩みもなく突き進みます。真実の愛も練りに練ったロマンスも存在せず、宮崎駿監督作品に近い奇妙な物語だけがあります。何もかもが突発的。出だしがあって、終わりしかない物語。その中間はなし。
 ラリーの前には、指針を示してくれる人物が常に現れます。ラリーは受動的にそれらを受け入れているだけ。若くて魅力的な女学生タリアがその最たる人物で、『幸せの教室』は現代版の男版のシンデレラ物語のようなものです。アメリカの「ラリーみたいな男たち」は、『幸せの教室』を求めているのかもしれません。ご都合主義をも上回る妄想主義。
 多くの物語は最低限の辻褄合わせを行うものですが、『幸せの教室』にそれはありません。純度100%の妄想展開なので、登場人物たちの行動には逡巡がありません。学校に通うのも、訳のわからない暴走団に入るのも、得体の知れない女教師とキスをするのも、過去を捨てることにも躊躇しません。ミュージカルとして作るべきだったんじゃないか、と思うくらいです。
 予告編と邦題を見る限りでは「とある教室の授業のお陰で幸せになれた事実に基づく物語」のように思えますが、そんな予想と想像を裏切り上回る中年“男子”な妄想世界ですから、「キモイ」の一言で片付けられてもおかしくはありません。
 
 夫に「この洗濯板!」と罵倒されたり出演作史上最悪の役柄かもしれないジュリア・ロバーツさんですが、まさかそんなわけはありません。ロバーツさんといえば、口。あの大きな、顔の1/3はあろうかという、口。屈託のない笑顔は最後の最後に取って置き、そこまでは歪めてばかり。あの大きな口をぐいとねじ上げる。綺麗な方だからこそ魅力的な変顔。あの魅力的な変顔を撮りたいがためにロバーツさんをヒロインに選んだのかと思うと、トム・ハンクスさんは酷い方です。やはり最低の役柄かもしれません。
 それをいうなら、ハンクスさんも良いんだか悪いんだか判断し兼ねる役柄です。もちろん「俺による俺の映画」ですから、得な役柄ではありますが、全体を通していえるのは、『ビッグ』を間違った方向に成長させた大人というか、一言でいうならばやはり「キモイ」という感想になります。

 ここまでの要素を集めると、「有名俳優による、有名俳優のための、見るも無残な作品」となるところですが、そうではありません。
 カメラワークに突出したものはありませんが、見事な画面作りとなっています。ティノーが歌いながら運転している横から、スクーターに乗ったラリーがヒョコヒョコ現れる場面の面白さは、最近では『ロボジー』の吉高由里子さんでも見ました。ティノー夫婦の車中大喧嘩の場面も見事な効果を発揮しています。
 各々の場面が的確に演出されており、映画としてとても見事な仕上がり具合。物語がキモイ? そんなことどうだっていーじゃありませんか。
 特に終盤、クラウンとティノーが惹かれ合っていることに自覚する、レストランの場面。スリリングといっても過言でありません。厨房にいるクラウンと、客席にいるテイノーの視線が絡み合う瞬間、そこが『幸せの教室』の最高の瞬間です。
 上映時間が108分と短めなのは良いことですが、この物語なら、マノエル・ド・オリヴェイラ監督は90分で作ったと思います。互いが恋心を自覚し、互いが次の一歩を踏み出すだろうと予感させる瞬間――そこから後は全てが蛇足です。そこで終わらせられていれば。もったいない、嗚呼もったいない。
 +には届きませんが、良い意味でも悪い意味(悪い意味では、既に腐っている、ともいえる)でも意外と賞味期限の長い作品だと思いました。
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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