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2010-11-25

セガール作品は無条件に楽しい

 金沢市にはなぜか変な映画を上映するシネコンが2館ある。ユナイテッド・シネマ金沢金沢コロナシネマワールドだ。

 ユナイテッド・シネマ金沢は、最近では石井隆監督の『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』を上映し、よくぞこんな一般向けでない作品を上映したもんだと大いに感心させられた。
 正直、予告編では「これは駄作っぽいなぁ」と思っていたんだけど、全くの勘違い。駄目な点もあったけど、その全てを帳消しにする程に傑作だった。
 この作品、年齢制限が「R15+」なんだけど……15歳以上なら楽しめるだろうか? 下手すりゃそこらの大人でも楽しめないくらい素晴らしい出来なので。私が観た回では、公開初日に観た『エクスペンダブルズ』の時より観客数が多かった(こっちも「R15+」作品なんだよね)。意外と高齢者が多かった。ロマンポルノ感覚で観に来たのかもしれないけど、女性客が男性客より多かったので、それは関係ないだろう。
 ユナイテッド・シネマ金沢は意外と変な邦画を上映するので面白い(アニメ作品含む。最近なら『REDLINE』とか。駄作だけど)。黒沢清監督の『CURE』を観たのもここだった。『回路』も『』も。
 洋画も頑張っていて、『フローズン』もここだったし、リチャード・ギアさん主演の『クロッシング』もここ。『クロッシング』は、想像以上に素晴らしかった。内容は全然大したことないんだけど、画面が想像以上に素晴らしい。「ノワール」な画面をよくわかってらっしゃる。映画雑誌を読んでもそこら辺を誉めていないのでガッカリ。
 ユナイテッド・シネマ金沢さん、この調子で頑張って下さい。

 金沢コロナシネマワールドは、ユナイテッド・シネマ金沢よりも偏差値が低い感じ。あ、貶してるわけじゃないので。絶対に儲からなさそうな作品を上映してくれるありがたい映画館だ。
 最近なら、『クレイジーズ』。ジョージ・A・ロメロ監督のアレでございます。たぶん大したことないだろうなぁ、と思って観たら本当に大したことがなく、しかし演出が意外と良かった。驚いたことに、最近の邦画の心霊演出を踏襲してた
 大傑作『ハロウィンⅡ』も、誉めている人多いけど全く面白くなかった『ザ・ホード 死霊の大群』も金沢コロナシネマワールドで上映されている。それにそれに、スティーブン・セガールさん主演の『沈黙の鉄拳』を上映したのもここだ。
 『沈黙の鉄拳』といえば、なぜか鑑賞料金が390円だったのが面白かった(いや、作品内容も好きだけど)。パンフレットが500円だったので、パンフレットの方が鑑賞料金より高額だったのも面白かった。ちなみにそのパンフレットは、厚紙1枚を二つ折りにしただけの豪快極まるものだった。そんな豪快なパンフレットは今時珍しく、「ボッタクリだ!」と腹が立ちそうなのに、オマケでA4サイズのクリアケースが付いていたから、明らかにパンフレット本体よりもそっちの値段なんだろうなぁ、と思えば納得できた。クリアケースは今現在、職場で積極的に使っている。責任者会議なんかで、自慢気に。みんなの羨ましそうな視線がたまらん(蔑んでいるのかもしれないが)。
 まあ何にせよ、金沢コロナシネマワールドも私のような映画ファンにはありがたい映画館だ。エクストリームな作品を上映する方向性に邁進してもらいたい。金沢コロナシネマワールドさん、この調子で頑張って下さい。

 で、『クレイジーズ』を観た帰り、近日上映作品のラインナップを見ていたら、またもや金沢コロナシネマワールドでセガールさんの作品を上映するようだ。『沈黙の復讐』という作品で、思わずチラシを持ち帰った。このチラシがまた素晴らしい!
 まず、セガールさんは不況に強いらしい。

不況に強いオヤジ、スティーヴン・セガール!!

と記載されている。何で不況に強いのか理由は明記されていないが。
 そして、驚いたことに、今度のセガールさんはAKB40なのだ! どういうことかというと――チラシの記述そのままをお楽しみ下さい。

 [Action] 最高のアクションシーン! 前作の160%!
 [Killer] 瞬き禁止! 最強オヤジは秒殺だ!
 [Battle」 ご安心下さい! おなじみのセガール武道炸裂!

その上さらに、

オヤジだってAKB! 闘い続けて祝40作品!

という記念的作品であることを強調し、さらに、

2011年は、男達の熱い友情に男泣き!!

と煽っている。AKBで男泣き……っ! 凄ぇっ!! 前人未到の地だよっ!!! AKB48なんかにゃ全く興味なく、職場で会話に混ざれなかった私だけど……これでトレンドリーダーだっ!!!!

 考えたら『沈黙の鉄拳』でも「3D」を謳っており、それは、

andy!
ynamaite!!
angerous!!!

と3つの頭文字で「3D」というものだった。
 姑息といえば姑息だけど、何年も経ってから見返すと何のこといってるのかわからなくなってしまうようなトレンドを含めてチラシを作っているあたり、姑息を超越した誠意を感じるのは私だけではないだろう。
 チラシでここまで楽しませてくれたなら、たとえ本編が大して面白くなくても何一つ文句はない。『沈黙の復讐』、絶対に観ねば!!!!
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テーマ : 映画関連ネタ
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2010-11-18

同じ夏でもこっちの夏

 今年の米アカデミー賞の長編アニメーション部門に、日本の『サマーウォーズ』がエントリーされたそうで。
「ふーん。何であの程度の作品が?」が正直な感想。どう考えたって日本の作品なら『サマーウォーズ』より『借り暮らしのアリエッティ』が比較にならないくらい上なのに、変なの。どんな基準と手続きでエントリーに入ったんだろ?

 他のエントリー作品は、
  『トイ・ストーリー3
  『ヒックとドラゴン
  『シュレック フォーエバー
  『ガフールの伝説
  『怪盗グルーの月泥棒
  『塔の上のラプンツェル
  『メガマインド
  『キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争
  『イリュージョニスト
  『アルファ・アンド・オメガ
  『ザ・ドリームス・オブ・ジンシャ
  『イディオッツ・アンド・エンジェルス
  『マイ・ドッグ・チューリップ
  『ティンカー・ベル・アンド・ザ・グレート・フェアリー・レスキュー
と、全15作品。

 ノミネート作品は、『トイ・ストーリー3』と『ヒックとドラゴン』、それと『シュレック フォーエバー』か『ガフールの伝説』のどちらかだろう。『サマーウォーズ』はノミネート枠に残らない。
 で、『トイ・ストーリー3』と『ヒックとドラゴン』の一騎討ち。普通に考えれば『トイ・ストーリー3』の圧勝受賞。私の好みなら、僅差で『ヒックとドラゴン』が受賞。映画としては『トイ・ストーリー3』の方が出来は遥かに良いけど、『ヒックとドラゴン』の方が好きなので……
 もしも『サマーウォーズ』がノミネート枠に残ったとしても、『トイ・ストーリー3』と『ヒックとドラゴン』に勝てるとは到底思えない。しかし、『借り暮らしのアリエッティ』だったら、映画としての完成度が『トイ・ストーリー3』と『ヒックとドラゴン』よりも高いので、受賞できるかもしれない(いや、絶対に無理か)。『サマーウォーズ』の方が娯楽映画として楽しいけど、後に何も残らないんだよなぁ。いってしまえば賞味期限が短い。1年以内に腐ってしまう。『借り暮らしのアリエッティ』は、十年以上は確実に持つ。
 ホント、何で『サマーウォーズ』なんて推したのかなぁ?

 あとついでに、外国語映画賞の日本映画が『告白』なのも疑問だらけだ。よりによって、なぜあの陰鬱なだけの『告白』なんだ? それなら『アウトレイジ』の方が比較にならないくらい凄いだろーに。『ヒーローショー』も素晴らしかった。まあ、賞なんか獲れるわけないのわかってていってんだけど。でも、『告白』はないわー。最初から受賞する気がないとしか思えない。

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ジャンル : 映画

2010-11-14

『フローズン』は、自己言及に終わっている

 『フローズン』を観た。残酷映画の佳作『ハチェット』を撮ったアダム・グリーン監督の新作だ。
 『ハチェット』は、80年代そのままの残酷映画で、特に新鮮さもなく、イーライ・ロス監督の『ホステル』大ヒットありきの作品だったけど、過剰な残酷描写は楽しく、ついつい笑顔になってしまう作品だった。もっと面白くない映画がたくさん公開されている中、『ハチェット』は劇場公開されるに十分の魅力を備えていたと思う。だからグリーン監督の名前は要注目として覚えた。ロス監督のように『キャビン・フィーバー』から『ホステル』へとステップ・アップするか、地味に消えていくか、その動向を見てみよう、と。
 で、『フローズン』だ。

 物語は物凄い単純。スキー場のリフトに男女3人が吹雪の中放置されて、さあ大変。そんだけ。
 誰しも一度は「こんな状況は嫌だ」を考えたことあるだろう。ジェットコースターの回転中に停止しちゃったらどうしよう。理髪店の店員が殺人鬼だったらどうしよう。歯科医の医者が殺人鬼だったらどうしよう。他にも色々あるけど、その大半はもう映像化されているんだよね。特に『ファイナル・デスティネーション』シリーズは「こんな状況は嫌だ」の宝庫だ。実際、前述した3つの状況と似たような状況を描いている。『フローズン』も同じ。
 地上15メートルにあるリフトに取り残されるのは、一晩でなく、1週間。食べ物も飲み物もない。排泄も困難。下手に寝ると落下する恐れもある。吹雪をしのぐ場所もない。飛び降りるには地上15メートルは高すぎる。無事に飛び降りられたとしても、下には空腹の野生オオカミが目を光らせて待ち構えている。携帯電話はロッカーに置きっ放しだから救援も頼めない。凍死するか、空腹で死ぬか、落下して大怪我した上にオオカミに喰われて死ぬか……より良い死に方を選ぶしかない、まさに絶体絶命の大ピンチ。
 主人公らが追い詰められる姿を楽しむ作品なので、いかに面白い状況を作り出すかが重要。なんだけど、「リフト上に遭難」というアイデアを超えるものは最後までなかった。

 この手の作品は、登場人物の頭が良くないといけない。ダウンタウンの松本人志さんが監督した『しんぼる』みたいに、状況を改善するための行動がアホだと一気に興醒めしてしまう。「他にもっと良案があるだろうに、何でそんなことするかなぁ?」と。『フローズン』も同じ。とにかく脚本が練られていない。状況に対して最善策を採った上で窮地に陥れなきゃ駄目なのに、全くそうなっていない。
 前半に、「『ジョーズ』みたいに襲われるのがわかる死に方は嫌だ」とか「9.11テロの、WTCから飛び降りなければならなかった状況は嫌だ」など、暇潰しに「嫌な死に方」を話し合う場面があるんだけど、それがそのまま『フローズン』の展開に反映されているので、ウェス・クレイヴン監督の『スクリーム』シリーズみたいな自己言及映画でもある。が、『スクリーム』程には自己言及的でもない。無駄話の中に解決策を織り交ぜ(「あの映画ではこうやって助かっていた」とか)、それが行動に伴うならわかるんだけど、無駄話が本当に無駄なので驚いた。全てが中途半端。
 サスペンスのくせに、行動によって展開しないし。リフトから飛び降りたら、大骨折し、オオカミに喰われて終わり。ケーブルを伝って無事に地上に降りても、オオカミに喰われて終わり。結局、何も行動していない者が生き残る。皮肉的な展開を狙ったんだろうけど、全く成功していない。
 前半に、ロッジの壁に行方不明者のチラシが貼られているのを映すんだけど、それが伏線として効果的に活きることはない。リフト係が状況改善に役立つような展開もない。小便を漏らしても、凍り付いて困るようなこともない。少ない登場人物と状況が効果的に動かない。
 基本的に投げっ放しジャーマンな作品だ。

 また画面も酷い。
 凄く頑張って撮影したようだけど、照明が頑張ってない。スキー場の照明が全て落ち、月明かりしかない闇夜だってのに、しかも吹雪いているってのに、何であんなにちゃんと見えるの? もうね、その時点で駄目。サスペンスとして盛り上がらない。
 CGを嫌って現場主義で撮影するのは良し悪しだよ。便利な技術は積極的に使えばいいのに。

 とはいえ、面白い場面もあった。
 飛び降りた彼氏が着地に見事すぎる大失敗をし、「ボキグシャッ!」という盛大な効果音で骨が飛び出す大骨折するのは面白かった。最初はなぜか大して痛がらないんだけど、前屈しようとして「いってーっ!」と叫ぶのも面白かった。そして、オオカミに襲撃される場面は完全にギャグ演出で、涙が出る程に爆笑した。もっと容赦なく演出してほしかった。
 結局、何もしなかった彼女が運良くリフトから降りられ、急いでスキー場を滑り降りている最中、またもやオオカミと遭遇するんだけど、先に逃げた筈の友人を食べるのに夢中だったから襲われずに済むのが面白かった。
 面白かったのは、その2つのシークエンスと「リフト上で遭難」というアイデアだけ。
 上映時間は93分と短いんだけど、無駄話が無駄なため、長く感じた。登場人物の行動によって性格設定も説明できていれば、80分くらいで作れるような作品だ。それだったら物凄く面白かったろうな。

 ところで、公式サイトから見られるコメント五月女ケイ子さんによる「バカドリル」みたいなイラストは、余計極まりない。
 特にデーブ・スペクターさんとルー大柴さん、竹中直人さんのコメントが酷い。『フローズン』に全く貢献していない。観た後に読むと、盛り上げてくれるどころか盛り下げてくれる。
 イラストはとっても面白いけど、これまた『フローズン』には貢献しない。
 作品に貢献する気が配給会社にないとしか思えない……

テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : フローズン

2010-11-09

ポルトガル映画祭2010で大発見

 11月5~7日まで21世紀美術館シアター21で開催されていた<ポルトガル映画祭2010>を観た。仕事の都合上、6日のペドロ・コスタ監督の『』、アントニオ・レイスマルガリーダ・コルデイロ監督の『トラス・オス・モンテス』、7日のマノエル・ド・オリヴェイラ監督の『神曲』、計3本しか観られなかったけど、それでも充実した時間を過ごせた。

 まず、私はコスタ監督の『ヴェンダの部屋』が大好きなので(DVDを買って観た)、まだ観たことない『骨』が観たかった。そのコスタ監督に多大なる影響を与えたという『トラス・オス・モンテス』も興味津々だった。

 『トラス・オス・モンテス』は、ノンフィクションとフィクションの境目にいる作品だ。
 ポルトガルの山岳地帯にある村を舞台に、美しい風景、純朴な人々、その想い出が時系列をごっちゃにしながら特に何の説明もなく描かれる。シネコンで上映される多くの説明過多な映画を観慣れていると、呆気にとられたまま気付いたら終わっているような作品だ。つまり、何を語っており、何が描かれているのか理解し難い作品ってこと。無駄な説明を省略しているだけで、説明は十分に成されている。何を描こうとし、何を語ろうとしているのか、それは画面を見るしかない。
 画面を凝視する。ただそれだけが楽しいと感じる映画もある。『トラス・オス・モンテス』はそれに近い。近いが、何かもう一歩足りない。おおっ、と感嘆するショットもたくさんあるんだけど、その「おおっ」が持続しない。美しい風景を存分に楽しめるし(とはいえ殆どが山岳地帯なので荒涼としているけど)、純朴な子供たちの姿を楽しめるし(とはいえ純朴すぎて何が楽しいのか理解できないけど)、過去と現在の歴史の流れや近代化への警鐘みたいなものも楽しめるし(とはいえ、それはちょいと無理がある。さすが詩人だけはあり、何考えてんだ、と思わなくもなかった)、本当にところどころで「おおっ」なんだけど、全体を通して考えると、この作品の何が「おおっ」なのかわからなくなる。
 コスタ監督に影響を与えたというのは、納得できた。前半、ある少年の姉が嫁ぐことになった際のことを回想する場面なんか、コスタ監督作に近いものを感じた。でもコスタ監督作は、『トラス・オス・モンテス』の影響を受けた以上の化学変化を見せている。本当に基本的な部分で影響を受けただけなんじゃないだろうか? 『トラス・オス・モンテス』は『骨』よりも20年も古い作品だけど、それを考慮しても『トラス・オス・モンテス』から『骨』への飛躍は凄まじい変化だと思う。
 ま、観るだけの価値はある作品だった(と偉そうに語れる程に私が『トラス・オス・モンテス』の価値を理解しているとは思えないけど)。

 『骨』は……凄かった。これまたノンフィクションとフィクションの境目にいるような作品なんだけど、圧倒的に面白い。スリル満点で、終始ドキドキしながら観た。
 何よりも自信あり気なショットの数々が素晴らしい。そしてその素晴らしさが最初から最後まで片時も途切れない。サスペンスでもないのに、異様な緊張感がある。
 特に驚いたのは、ロクデナシの青年が、生まれたての赤ちゃんを黒いゴミ袋に入れて街へとズンズン歩く場面だ。その場面まで殆どのショットは動きがないのに、ロクデナシ青年に合わせて横移動する。しかも、長回し。開放感があると同時に、長回しなのもあり、ロクデナシ青年がどこへ向かっているのか、何の目的があって急いでいるのか、それが緊張感を持って描かれる。これは私の勝手な思い込みなんだけど、今、日本でこれをやろうと思って巧くできる可能性があるのは北野武監督かもしれない、なんて思いながら観ていた。が、どうも北野監督はあと一歩思い切りが足りないようで、いつも躊躇するんだよなぁ。
 見事なまでに色々と映さない。その代わり、音はガヤガヤと豊富だ。これだよこれこれ。予算が少なくても、ちゃんと工夫して面白く、スリル満点に演出できるんだよ。『SRサイタマノラッパー』シリーズなんかが失敗しているのは、ここなんだよ。

 今回の<ポルトガル映画祭2010>のメインは、オリヴェイラ監督作だ。百歳を越えて未だ現役のオリヴェイラ監督、「生きる映画史」と読んでも文句いわれないだろう。そんなオリヴェイラ監督作で観られたのが『神曲』だけなのは悲しい。『カニバイシュ』も『春の劇』も『過去と現在 昔の恋、今の恋』も『アニキ・ボボ』も観たかった……
 『神曲』しか観られなかったけど、この1本だけでもオリヴェイラ監督が意地悪でユーモアに溢れた作家であることがよーくわかった。下手すると「アート」という枠組みに入れられ、同時にそれは「難解」という枠組みに入るわけだけど、そんなことは全くなく、メチャクチャわかり易く、面白い作品だった。
 まず、物語が面白い(難解ではないけど、物語を面白いと思うための知識レベルは少し高いかもしれない)。ラスコリーニコフが後悔してて、カラマーゾフの兄が大審問官の物語を嬉々として語り、ニーチェは信仰を鼻で笑い、イエスはお告げを延べ、アダムとイヴは全裸を恥ずかしがって服を着る。歴史上の偉大な人々が己の思想を黙々と語り合う。ただし、その舞台は精神病院なのだ。
 物凄い意地悪な設定。登場人物たちの会話は哲学的で、少々難しい。だから観客は、その内容を理解しようと努め、「うーん、奥深いなぁ」なんて思うかもしれない。でもそのすぐ後に気付く。そういえば、こいつらみんな精神病患者なんだな、と。意地悪なユーモア。最後には病院長がクビを吊って自殺する。
 オリヴェイラが偉大な芸術家であることは間違いないけど、同時にとっても面白い作家でもある。他の作品は違うのかもしれないけど、『過去と現在 昔の恋、今の恋』のあらすじを読むだけで、やはり面白い作家であることは間違いない。嗚呼、観られなかったことが悔やまれる。
 画面は終始揺るぎない。意外とわかり易い長回しなんてせず、カットを積み重ねている。切り替えし、切り替えし。事実を描いているようで、嘘みたい。大きく動く画面は、イワン・カラマーゾフがバイクで病院に来る場面だけ。外から内へ。

 『骨』と『神曲』を観ていて、なぜか北野監督の『アウトレイジ』を想い出した。北野監督のアート指向と娯楽指向が全作品中で最も良いバランスで表現されていると思うんだけど、物語がヤクザで殺し合いという低級な感じなため、作品まで低級に見られている。たぶん北野監督はオリヴェイラ監督もコスタ監督も知らないと思うけど、もしかしたら……とポルトガル映画と全く関係ないところで大興奮してしまった。
 オリヴェイラ監督作とコスタ監督作のDVDをこの際だから買い漁ろうかと思ったら、当然のようにレア価格商品となっていた……再販してくれないかなぁ。仕事を休んででも全上映作を観るべきだった。

テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

2010-11-07

『私の優しくない先輩』は、山本監督に優しい映画

 『私の優しくない先輩』を観た。アニメ演出家である山本寛さんの初長編映画監督作かつ初実写映画監督作だ。
 山本監督は、『涼宮ハルヒの憂鬱』と『らき☆すた』で一躍有名になった演出家であることは知ってる。しかし、大ヒット作品を作ったとはいえ、初実写映画の監督作でいきなり全国公開される規模の長編作を任される程の実力があるとは思えない。だって『涼宮ハルヒの憂鬱』、そんなに面白くないんだもの。

 物語は単純。主人公:西表耶麻子は、想像力逞しく恋に恋する病弱な女子高校生。その先輩の不破風和は、耶麻子を好きだった。しかし耶麻子は不破先輩が大っ嫌いで、好きな男子は同級生の南愛治くんだった。不破先輩は、自分の恋心を隠し、耶麻子の恋の成就を叶えようと奮闘する……
 よくある物語だ。少女漫画の新人賞を獲ったような物語だ。目新しい点が全くなく、何でこの程度の物語が映画にまでなるのかさっぱりわからない。山本監督の手腕以前に面白い作品になろう筈がない。しかも、その上に。
 まず主人公の耶麻子が可愛くない。つーか、ただのメンヘル馬鹿だ。そもそも「妄想ばかりして、病弱で、恋に憧れる女子高生」という主人公設定は、ギャグにしか思えん。ギャグでないとしたら、どう考えても病的で魅力的ではない。
 次に、不破先輩がウザキモく見えん。台詞でウザいキモいと一生懸命説明しているけど、ちぃーっともそう見えない。不破先輩を演じる金田哲さんがウザくてキモく見えないのが致命的に駄目なんだけど、それは金田さんのせいでなく、金田さんを起用したのがそもそも失敗なんだろう。確かに金田さんは懸命にウザくてキモい存在感を出そうとしているけど、TVのバラエティー番組で見る金田さんでしかなく、つまり劇映画としての嘘っぽさが希薄なのだ。
 原作は読んだことないので映画版との差異はわからないけど、原作が映画版と何も変わらないのだとしたら、バズ・ラーマン監督作並みの大袈裟で絢爛豪華なアレンジを施さないと面白くない(たとえば『ムーラン・ルージュ』とか)。
 とにかく物語が面白くないのだから最初から大変だ。

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tag : 私の優しくない先輩

プロフィール

ばっどていすとさんどいっち

Author:ばっどていすとさんどいっち
テクノ好き。
アンダーワールドのRez大好き。
映画大好き。
ジャッキー・チェンが生涯の英雄。
生涯1位作品は『ミミズバーガー』。
2位が『溶解人間』。
泣き虫で、馬鹿。
itsuka-omoi-dasu-bts@hotmail.co.jp

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